プロ投資家の先の先を読む思考法
(画像=xy/stock.adobe.com)

(本記事は、藤野 英人氏の著書『プロ投資家の先の先を読む思考法』=クロスメディア・パブリッシング、2022年5月2日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

「短期」は読めないが、「中長期」は予測できる

プロの投資家の立場から、株価の「先読み」について言えば、短期的な株価の動きを正確に予測するのはとても難しいと言えます。

日々の株価は、政治家の発言や自然災害などの外部要因によって大きく動くもの。「明日の株価が上がるか、下がるか」はプロにもわからないのです。同様に、3カ月後、半年後の株価というのもほとんど予測がつきません。

しかし2年後、3年後の株価となると、話は変わってきます。ぼんやりとではありますが、長期であれば株価がどれくらいになるのか予測できるのです。

株式投資をしている方はご存じだと思いますが、株価は「株価=EPS(1株あたり利益)×PER(株価収益率)」という式で表すことができます。

プロ投資家の先の先を読む思考法
(画像=『プロ投資家の先の先を読む思考法』より)

PERは金利や為替、市況などの外部要因やその銘柄の人気によって大きく変わります。

一方、EPSは企業の情熱や工夫、頑張りによって決まるもの。そして、株価というのは短期的には外部要因や人気などに左右されるものの、中長期で見ればEPSにほとんど連動するのです(20ページ図1・図2)。

つまり、株価は半年くらいのスパンで見れば、「たまたま3割上がる」ことも「なぜか半値になる」こともありえますが、2、3年経てば、利益が2倍になった会社の株価はおおむね2倍になり、利益が3分の1になった会社の株価はおおむね3分の1になるわけです

これは、有名な会社であろうが、無名な会社であろうが関係ありません。都心の会社か地方の会社か、東大卒の社員がたくさんいるか高卒社員が多いか、イケメン揃いかブサメンが多いかといったこともまったく無関係です。株式市場というのは、冷徹なまでに企業業績にコミットしています。

このことを知っていると、株価の「先の先を読む」方法がじつは非常にシンプルであることがわかります。

企業の利益がどんどん増えるのはどのような場合かというと、多くの場合、お客さまの数が増えたり、値上げが成功したりしたケースです。

もちろん、コストを下げてできるだけ多く利益を残すという方法もありますが、昨年より今年、今年よりも来年、より多くの人がより多くのお金を払ってくれるようになれば、企業業績は右肩上がりに伸び、その結果として株価も右肩上がりになります。

「お客さまから評価を受けて利益を伸ばす会社は、短期的な株価については上がるか下がるかわからないけれど、中長期では利益に応じて株価が上がる」のです。

株式投資において「長期で投資することが大事」と言われるのは、このためです。

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藤野 英人
投資家・ひふみシリーズ最高投資責任者。レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役会長兼社長。1966年富山県生まれ。早稲田大学法学部卒業。国内・外資大手投資運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年レオス・キャピタルワークスを創業。東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、叡啓大学客員教授。一般社団法人投資信託協会理事。主な著書に『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)。

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