
法人にはさまざまな税金が課せられているが、その反面、税金が還付されるケースも多い。ここでは、税金の還付が発生するケースや還付の種類、還付が発生した場合の仕訳の方法について解説する。
目次

法人税の還付はどのようなときに起こる?
ここでは法人税についてみていこう。どのような場合に還付金が発生するか説明する。なお、中には厳密には還付金とされないものもあるが、慣例的に還付金と同樣なものとされるものもある。
中間納付よりも実際の納付額が少なかった場合
前年に納めた法人税が20万円を超えた場合、法人税の中間申告の義務が発生する。それにより、大半の場合では中間納付を行う。中間納付とは、いわば法人税の前払いのことである。
期初から6ヶ月までに発生した損益等を計算、申告したうえで納税するか、損益を計算しない場合は前年の法人税額の半額をそのまま納税するかのどちらかの対応を取る。このときに納めた税金よりも最終的に確定した税金が少ない場合はその差額が返金されることとなる。
ちなみに法人税の中間申告をする場合、地方税である法人住民税や事業税についても中間申告をすることとなる。法人税で還付が発生することになれば、法人住民税や事業税においても還付が発生する可能性があることを覚えておくとよい。
申告期限を延長した場合
通常、法人税の申告書の提出と納付は決算後2ヶ月以内に行うこととなっている。しかし、株主総会が上場企業などでは決算日から2ヶ月以上経過した後に行われることがある。法人税申告書の提出条件は、株主総会で決算書が確定していることとなっているため、決算日後2ヶ月以内に提出できない。
このとき、申告書の提出は税務署長の許可が得られれば3ヶ月以内まで延長することができる。株主総会の後に申告書を提出すればよいが、法人税の納付を延長することはできない。そのため、決算後2ヶ月以内に前もって法人税の納付を行うこととなる。その結果、あらかじめ納付した法人税よりも最終的に確定した法人税の金額が少なければ、納めすぎた分は還付される。
納付税額よりも預金利息などの源泉所得税が多い場合
会社が預金利息などの源泉所得税を支払った場合、それは支払うべき法人税と相殺されることになる。しかし、当期は赤字であったために相殺する法人税がない、または少ない場合には相殺しきれなかった部分が還付されることになる。
この場合、地方税である法人住民税や事業税は通常、源泉所得税とは相殺されることがないため、法人税のような還付はない。
欠損金の繰戻しが発生した場合
青色申告をする会社のうち、欠損金が発生した会社や災害による被害を受け欠損金が発生した会社等は繰り戻し還付を受けることができる。なお、この還付には限度額があり、還付の対象となる年度の税額までとなっている。
一方、法人住民税や事業税等の法人税においてはこのような制度はないためこのような還付は行われない。
災害の被害を受けた場合
法人が災害の被害を受けた場合、様々な救済措置が取られる。その中で還付が発生するものとして、災害損失欠損金の繰戻しがある。
これは法人の有する棚卸資産、固定資産等について災害により生じた損失に係る欠損金額(災害損失欠損金)が発生した場合に発生する。青色申告を適用している会社については災害損失欠損金の発生した事業期間の前2年間(白色申告の場合は前1年間)の災害損失欠損金に対応する法人税について還付を受けられるのである。
なお、この制度は中間申告をすることによっても受けることができる。
更正の請求
厳密には還付と言えないが、更正の請求を行った場合も税金の還付が行われる。
当初の申告に誤りがあったために、後日に更正の請求を行い、これが認められたため当初の申告との差額が返還されることがある。これも他の場合と同樣に扱われる。
詳しく説明すると、例えば、収益を二重に計上したり、収益の期間帰属を誤るなどしたりして収益が過大に計上されることがある。このまま申告した場合過大に納税したこととなる。この過大に納税した状態を解消するために行うのが更正の請求である。
誤納金
こちらも厳密には還付とは言えないが、それに近いものとして挙げられる例として税金を納めすぎて返金をお願いするケースがある。
まず例として、最初に申告して納付までおこなったものの、申告期限直前でさらなる税額が減る事項が見つかり、申告書の差替を行った場合がある。この場合、差額に相当する金額は自動的に返金されることとなっている。
また、うっかり二重に納付してしまったときも本来納める税額との差額が返金される。

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消費税等の還付はどのようなときに起こる?
法人の税金に関する還付は法人税や法人住民税のみならず、消費税等(消費税と地方消費税)でも起こる。それでは、それはどのようなときに起こるのであろうか。
中間納付よりも実際の納付額が少なかった場合
消費税等でも法人税同様の中間納付制度があり、前の会計期間の納付額に応じて中間納付の回数やそれぞれの支払額を決定する。中間納付で納めた金額と実際の納付額との間に差が生じた場合、法人税のときと同様、差額が還付される。
高額な備品を購入したために仮払消費税分が多くなった場合
多額の設備投資をしたり、不動産を購入したりする場合にも還付されることがある。お客様から預かった消費税等(仮受消費税)よりも支払った消費税(仮払消費税)の方が多くなれば、その差額に相当する部分は還付される。これは消費税ならではの還付である。
輸出が多いために仮払消費税分が多くなった場合
消費税ならではの還付として挙げられるもう一つのケースは、仮受消費税が発生しない輸出が多く発生する場合である。輸出取引に関して消費税は課税されない(輸出免税)ため、取引全体で見た場合、仮受消費税を仮払消費税が上回ることがある。仮受消費税と仮払消費税の差額に相当する金額が還付される。
法人税、消費税以外の税金の還付はどのようなときに起こる?
その他の税金について還付が行われる場合もある。代表的なケースを挙げる。
印紙税について過大納付をしていたために還付を受ける場合
書類に印紙を貼ったものの、間違っていたり使わなかったりしたために還付を請求する場合がある。例えば、以下のようなケースである。
- 契約書や領収書に貼った収入印紙が過大であった場合
- 本来、収入印紙を貼る必要のない委任契約書等について貼る必要があると勘違いしてしまい貼付をした場合
- 文書に収入印紙を貼付したもの、その文書を使わないことになったため、収入印紙が不要となった場合
これらについては、税務署に「印紙税過誤納確認申請書」を提出することによって過大となった収入印紙について返金される。
災害で酒類が被災したために還付を受ける場合
災害によって被害を受けたときに還付が発生するのは法人税だけではない。例えば酒税についても適用される。災害によって販売目的で持っている酒類が被災して損害が生じた場合、酒類の税金について還付が受けられる場合がある。ただし、これが適用されるのは、酒類卸売業者、酒類小売業者、料飲業者(居酒屋など)と限られている。
還付を受けるには、災害のやんだ日から1か月以内に「被災酒類の確認書交付申請書」を作成して、税務署長に提出することとなる。
税金が還付されるときの「還付加算金」とは?
税金が還付される場合についてくる「還付加算金」とはどのようなものか。その計算方法についても開設する。
還付加算金とは?
中間納付した税金が支払い過多となったために戻ってくる場合などに、中間納付してから期末までの期間に対し、支払い過多となった分(還付される金額)の利息に当たる金額が戻ってくることがある。これが還付加算金である。
還付加算金の計算方法
還付加算金の金額は以下のように計算される。
還付加算金の金額 = 還付すべき金額 × 利率 × 日数 ÷ 365
ここで、利率は、還付加算金特例基準割合(銀行の短期貸付金の金利の平均に0.5%足した率)と7.3%のうち低い方の率を用いる。なお、令和4年の還付加算金特例基準割合は0.9%であるため、令和4年においては0.9%となる。日数は、中間納付があった場合はその日の翌日から、還付の決定のあった翌日までの日数で計算する。
なお、還付すべき金額については1万円未満切り捨てて計算式に当てはめ、還付加算金の金額は100円未満が切り捨てられ、1,000円以下であった場合は全額が切り捨てられる。

税金の還付を受けるには
それでは具体的に税金の還付を受けるにはどうすればいいのか。
方法は大きく分けて2通りある。1つは確定申告時に行う方法で、これは中間納付が大きく、最終的に支払う税金がそれを下回った場合に行う。
この場合、方法の一つとして通常の申告において申告書で中間納付の金額(や仮払した税金などの額)と最終の税額を書いておき、結果として中間で納め過ぎ、還付を受ける旨を書く。この際、還付先となる銀行口座を記載することとなる。
次の方法としては、確定申告とは別に申告をする場合だ。例えば、印紙税の還付で特定の用紙に還付申請を行う理由や還付先の口座情報を書いた上で還付を受ける。
法人税の還付を受けた際の仕訳の切り方は?
では、ここからどのような仕訳を切ればいいのかについて具体例で説明する。まず、法人税等について説明する。
中間納付額よりも実際の納付額が少ない場合
まず、中間納付を納めたものの、実際の税額は中間納付した金額よりも少なかったために還付を受ける場合を考える。
例1:中間納付で15万円納めたものの、実際の納付額が10万円であった場合。
・中間納付時

これは通常の納付となる場合と同じである。なお、勘定名は会社や会計事務所によって変わることがある。
・決算時

仮払税金を消して、法人税等の金額を確定させて、差額分を未収金として計上する。
・還付時

還付金を受け取ったときに未収金を消す仕訳を切る。
中間納付額よりも実際の納付額が少ない場合(還付加算金がある場合)
中間納付金を納めたものの、実際の税額が少なかったため還付されるときに還付加算金が支払われることがある。この場合の仕訳を示す。
例2:例1の場合に加えて、還付加算金1,000円が支払われた場合。
- 中間納付時
- 決算時
これらのときの仕訳は前項の例1と同じであるので省略する。
・還付時

還付加算金を計上するとき通常使われる勘定科目は雑収入である。また、消費税の計算上、雑収入は不課税として分類する。
納付と還付の両方が発生した場合(その1)
決算時に納付と還付の両方が発生することもある。この場合、仕訳をどう切ればいいのかについて説明する。
例3:中間納付はなく、最終的に法人税については期中に源泉所得税として源泉徴収された全部である1,000円の還付、地方税で7万円の納付となった場合。
国税が還付、地方税が納付となった場合、お互いを相殺することはできず、別々に計上して、納付と還付を行う。
・決算時
通常、還付が発生するのは決算時点であるため、その時点で仕訳を切る。

まず、1行目で法人税の還付分に関する仕訳を切る。源泉所得税の形で仮払していた税金が全額戻ることになるので未収金として計上される。2行目では、地方税について発生している処理を行う。決算書上では、未収金と未払法人税等の両方が登場することとなり、それらは支払先が異なるため相殺されることはない。
・納付時

納付の処理は通常の納付時と同様に行う。
・還付時

還付分も通常の未収分と同様の処理を行う。
納付と還付の両方が発生した場合(その2)
地方税について、法人税割が還付、均等割が納税となる場合もある。
例4-1:中間納付で法人税割分2万円、均等割分3万5,000円を支払ったが、最終的には法人割分はすべて還付、均等割の残り3万5,000円を支払うこととなった。今回の対応は、法人税割分は返金してもらい、均等割分は納付することとした。
・中間納付時

・確定時
法人税割分

均等割分

いずれも通常の納税と還付との仕訳を切る。この場合、貸借対照表の上では還付と納付についてそれぞれは相殺することはなく、両方とも表示されることとなる。
・納付時

納付の処理は通常の納付時と同様に行う。
・還付時

還付分も通常の未収分と同様の処理を行う。
例4-2:例4-1のときとは異なり、法人税割分と均等割分で直接相殺することになった。
・中間納付時
例4-1のときと同様
・決算時

・納付時

この例では支払いとなるので決算時には未払法人税勘定のみが発生し、それに見合う金額を支払うことになった。この場合、決算書上では未払法人税等のみが表示され、未収金は表示されないこととなる。
一方、還付金の方が多くなった場合は、未収金勘定が発生し、それに見合う金額(場合によっては還付加算金が追加されて)振り込まれる。この場合、決算書上では未収金のみが表示され、未払法人税等は表示されないこととなる。
実務上、地方税のうち均等割は納付、その他は還付となることが多いが、ほとんどの地方自治体は相殺せず、納付と還付を別々に行うこととなる。実際どうするかは都道府県税事務所や市町村の担当者等にお問い合わせいただきたい。
欠損金の発生により繰戻しを行う場合
欠損金が発生したために税金を繰り戻すこととなった場合は、以下の仕訳を切る。
例5:今期赤字であったため、欠損金の繰戻しによる還付を受けることになった。計算した結果、還付金は3万5,000円となることがわかった。なお、当期は中間納付として、10万円納付していた。
・決算時
還付されることが明らかなため、還付のための仕訳を決算時に切る。

また、中間納付の分は、当然その分について還付が受けられることになるため、

という仕訳を切ることとなる。
・還付時

通常の還付金と同様の仕訳を切ることとなる。
また、中間納付分も還付があるので、

未収金を消す仕訳を切ることになる。
誤納金をした場合
例えば、当初、申告を行った上で納付をしたものの、申告期限までに申告をやり直したため納めすぎとなった場合の仕訳は以下の通りである。
例6:当初50,100円で申告・納付したものの、誤りが見つかり、後に50,000円で申告した場合。なお、仕訳の修正が間に合ったものとする。
・2度目の申告時
本来あるべき金額で仕訳を切り直す。

・納付時
50,100円を支払ったので、100円は仮払金とする。

・還付時
仮払金を取り消す仕訳を切る。

例6-1:例6と同じであるが、会計上の仕訳の修正が間に合わなかった場合について述べる。
・2度目の申告時
仕訳は切れないので何も行わない。
・納付時
50,100円を支払ったので、100円は仮払金とする。

・還付時
ここでは雑収入勘定を使うが、法人税等の勘定を使うことも考えられる。なお、いずれの場合であっても別表4での調整は必要だ。

消費税等の還付を受けた際の訳の切り方は?
消費税等の還付申告の場合、仕訳の切り方は税込経理の場合と税抜経理の場合で異なる。ここではまず、税込経理の場合について説明する。
中間納付よりも実際の納付額が少なかった場合
例7:中間納付で20万円納付したが、実際の納付額が15万円であった場合
・中間納付時

・決算時

・還付時

法人税の還付とほぼ同じ仕訳となる。
仮払消費税が多くなった場合
例8:中間納付はなかったが、消費税の集計をしたところ、3万円の還付となった。
・決算時

この際、雑収入の消費税区分は不課税となる。
・還付時

ここでの仕訳(還付時)は法人税のときと同じになる。
仕訳の切り方(消費税等。税抜経理の場合)
消費税等の還付があり、税抜経理で処理を行う場合、仮払消費税、仮受消費税の勘定が出てくるため、税込経理の場合とは異なる仕訳の切り方を行う。税込経理の場合と同じケースを使って説明する。
中間納付よりも実際の納付額が少なかった場合
例9: 中間納付で20万円納付したが、実際の発生額は15万円であった場合(例6と同じケース)
・中間納付時

税込経理と同じである。
・決算時

税込経理のときに出てきた租税公課勘定が出てこず、代わりに仮受消費税と仮払消費税勘定を取り消す仕訳を切る。ここで通常の納付時と同じく仮払消費税、仮受消費税勘定は消えて、通常登場する未払消費税の代わりに還付分となる未収金勘定が登場することとなる。
・還付時

税込経理の場合と同じである。
仮払消費税が多くなった場合
例10:中間納付はなかったが、消費税の集計をしたところ、3万円の還付となった(例7と同じケース)。
・決算時

税込経理のときに出てきた雑収入勘定は出てこず、代わりに仮受消費税と仮払消費税勘定が出てくる。ここで通常の納付時と同じく仮払消費税、仮受消費税勘定は消えて、通常登場する未払消費税の代わりに還付分となる未収金勘定が登場することとなる。
・還付時

税込経理の場合と同じである。

種類やケースに応じて法人税の還付を適切に処理
法人が納付する税金は、法人税をはじめさまざまな種類がある。中間納付額が多すぎた場合や、会社の経営状況により赤字や欠損金が出た場合には、税金が還付される。ケースにより処理が異なるため、制度と処理方法を理解し、上手く利用してほしい。
法人税還付に関するQ&A
Q1.法人税の還付金はどんなときに発生するのか?
A.一度納めた法人税が還付されることもあるが、限定的な状況となる。主だったものとしては以下の状況が挙げられる。
・中間納付金の方が最終的な税額より多かった場合
・源泉徴収された金額が最終的な税額より多かった場合
・繰り戻しが発生した場合
・被災したとき
Q2.事業税の還付はいつ頃行われるのか?
A.通常事業税の還付は、申告後都道府県内で一定の手続きを行われたのちに行われる。地方自治体や時期により差はあるが通常1~2ヶ月程度かかる。
Q3.法人税の還付はいつ行われる?
A.法人税の還付は通常、申告後税務署で一定の手続きが行われた後に行われる。税務署や時期により差はあるが通常1~2ヶ月程度かかる。
Q4.法人税以外で還付される税金って何?
A.ほとんどすべての税金において還付やそれに類似した制度がある。大抵は前もって納付した税金の返還が行われる。
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文・中川崇(税理士)