事業承継補助金,中小企業,補助金
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中村 太郎
中村 太郎(なかむら・たろう)
中村太郎税理士事務所所長・税理士。1974年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。税理士、行政書士、経営支援アドバイザー、経営革新等支援機関。税理士として300社を超える企業の経営支援に携わった経験を持つ。税務のみならず、節税コンサルティングや融資・補助金などの資金調達も得意としている。中小企業の独立・起業相談や、税務・財務・経理・融資・補助金等についての堅実・迅速なサポートに定評がある。

中小企業経営者の高齢化が進んでおり、数年後には後継者不足による休業・廃業・解散が増えることが予想されている。事業承継を円滑に進めるための支援として、経営者交代や事業再編、M&Aなどを機に行われる新しいチャレンジに対する事業承継補助金がある。

今回は、事業承継補助金の内容や要件、補助金の額や交付までの流れなどを、平成30年度補正予算による事業承継補助金の公募要領に沿って解説する。

目次

  1. 「事業承継補助金」とは?
    1. 補助金の対象は“新しいチャレンジ”
  2. 事業承継補助金の2つのタイプ
    1. I型:後継者承継支援型
    2. Ⅱ型:事業再編・事業統合支援型
  3. 事業承継補助金の詳細について解説!
    1. 事業承継の要件 補助対象となる事業者は?
    2. 対象となる経費
    3. 補助金上限額
  4. 事業承継補助金の申請から交付までの流れ
  5. 事業承継補助金が交付されたら報告を

「事業承継補助金」とは?

中小企業の多くは、経営者の高齢化に伴って深刻な後継者問題を抱えている。平成31年2月5日に中小企業庁が発表した資料によると、今後10年で70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人になり、約半数の127万人(日本企業全体の3分の1)は後継者が決まっていないという。

このままでは多くの中小企業が休業や廃業に追い込まれ、10年間で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があるとしている。

参照:中小企業庁HP 基本問題小委員会配布資料「事業承継・創業政策について」

「事業承継補助金」は、中小企業の事業承継を円滑にするための「事業承継・世代交代集中事業」の取り組みの1つだ。後継者不在によって事業継続が困難になることが見込まれる中小企業や個人事業を経営者交代やM&Aなどによって承継し、それを機に新しいチャレンジを行う際の経費を補助するものである。

令和2年度の「事業承継・世代交代集中事業」の概算要求額は50億円で、前回(平成30年度補正予算)と同額だ。実際の公募内容は発表されるまでわからないが、今年度も事業承継補助金が公募される可能性は高い。

参照:経済産業省HP令和2年度経済産業政策の重点、概算要求・税制改正要望について

補助金の対象は“新しいチャレンジ”

補助金の対象は、事業承継後の新しいチャレンジに伴って支払われる経費と、古い事業の廃業にかかる経費の一部だ。新たなチャレンジを支援する制度なので、以下の内容を伴う経費である必要がある。
・新商品の開発または生産
・新役務の開発または提供
・商品の新たな生産または販売の方式の導入
・役務の新たな提供の方式の導入
・上記によらず、その他の新たな事業活動による販路拡大や新市場開拓、生産性向上など、事業の活性化につながる取組、事業転換による新分野への進出など

事業承継補助金の2つのタイプ

事業承継補助金には、後継者承継支援型(Ⅰ型)と事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型)がある。事業承継の形態によって、Ⅰ型でしか申請できないケース、Ⅱ型でしか申請できないケース、Ⅰ型またはⅡ型で申請できるケースがある。

I型:後継者承継支援型

Ⅰ型は「経営者の交代」が前提として、新しい承継者(新しい経営者)が事業承継を機に新しいチャレンジを始めるための補助金である。

たとえば個人事業主A(先代)から事業を引き継いだ個人事業主B(後継者)が、市場開拓のために、新商品開発に必要な設備を購入するようなケースが考えられる。

そのほか、Ⅰ型の申請対象となる事業承継の形態には、以下のようなものがある。

Ⅰ型の対象となる事業承継の形態・個人から個人への事業譲渡
・法人から個人への事業譲渡(※)
・同一法人内での代表者交代
など

(※)Ⅱ型で申請するケースもある

個人が法人の経営者となる「法人成り」は原則的に補助金の対象にならないが、法人成りをする個人事業主が、一定期間内に別の個人事業主から事業を承継している場合などは、Ⅰ型の申請対象になることがある。

・承継者に一定の経歴が求められる
Ⅰ型を申請する場合、承継者には「3年以上の経営経験」「同業種での6年以上の実務経験」「創業・承継にかかる一定の研修等の受講歴」のいずれかが求められる。

Ⅱ型:事業再編・事業統合支援型

Ⅱ型は経営者交代のない、M&Aなどによる事業承継が対象だ。後継者不在によって事業再編・事業統合などを行わなければ事業継続が困難になることが見込まれる場合に限られる。法人が行っている事業を承継するケースが多いが、個人から承継するケースもある。

Ⅱ型の対象となる事業承継の形態・法人同士の吸収合併、吸収分割、事業譲渡、株式交換、株式譲渡、株式移転、新設合併
・法人から個人への事業譲渡または株式譲渡のうち一定のもの
・個人から法人への事業譲渡のうち一定のもの

なお、事業承継が申請時点で完了していない場合は、I型と同様に承継者に一定の経歴が求められる。

・共同申請が必要になることも
原則的に承継者が補助金を申請することとなるが、事業再編・事業統合を伴う事業承継において、その事業承継が交付申請以降に行われる場合、承継者は承継される側やその関係者と共同で申請しなければならないことがある。

事業承継補助金の詳細について解説!

それでは、事業承継補助金を受けるための要件、対象となる経費、補助金上限額、申請から交付までの流れを確認していこう。

事業承継の要件 補助対象となる事業者は?

補助金の対象となるのは、以下に該当する中小企業、個人事業主、特定非営利活動法人だ。

業種資本金の額等
補助対象となる中小企業等の規模製造業等資本金の額又は出資の総額が3億円以下又は常時使用する従業員の数が300人以下の中小企業等
卸売業資本金の額又は出資の総額が1億円以下又は常時使用する従業員の数が100人以下の中小企業等
小売業資本金の額又は出資の総額が5,000万円以下又は常時使用する従業員の数が50人以下の中小企業等
サービス業資本金の額又は出資の総額が5,000万円以下の会社
又は常時使用する従業員の数が100人以下の中小企業等

また、以下の要件も満たす必要がある。

補助対象になる事業者の主な要件・日本国内に拠点もしくは居住地を置き、日本国内で事業を営む者であること(個人事業主は、青色申告者である等の要件もあり)
・地域の雇用の維持、創出や地域の強みである技術、特産品で地域を支えるなど、地域経済に貢献している企業であること
・法令順守上の問題を抱えていないこと
・経済産業省から補助金指定停止措置または指名停止措置が講じられていないこと
・補助対象事業に関する情報について、統計上公表される場合があることについて同意すること
・事務局からの調査やアンケート等に協力できること

対象となる経費

補助金の対象となる経費には、新しいチャレンジのための「事業費」と、それまでの事業を転換するための「廃業費」があるが、以下の要件を満たし、かつ事務局が必要かつ適切と認めたものに限られる。
・使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
・事業を承継する者が交付決定日以降、補助事業期間内に契約・発注を行い支払った経費(原則として、被承継者が取り扱った経費は対象外)
・補助事業期間完了後の実績報告で提出する証拠書類等によって金額、支払等が確認できる経費

具体的には、以下の費目が対象となる。

事業費の費目人件費、店舗等の借入費、設備費、原材料費、知的財産権等関連経費、謝金、旅費、マーケティング調査費、会場借料費、外注費、委託費
廃業費の費目廃業登記費、在庫処分費、解体・処分費、原状回復費、移転・移設費用(※)

(※)移転・移設費用はⅡ型の場合のみ計上できる。

補助金の対象となるのは、原則として補助事業期間中に契約・発注から支払いまでが行われた経費だ。補助事業期間とは、補助金の交付決定から事業完了日までの期間のことだ。

ただし、交付決定前の発注に係る経費や、補助事業期間後に支払われる経費でも、それが補助事業期間内の経費と認められれば、補助金の対象となることがある。なお、「廃業費」は単独で申請することはできず、「事業費の上乗せ」として扱われる。

補助金上限額

補助金の上限額は、申請内容によって対象となる経費の3分の2以内、または2分の1以内になる。
Ⅰ型、Ⅱ型それぞれに上限額が設定されており、「廃業費」の交付申請があれば補助金額が上乗せされる仕組みだ。

・Ⅰ型の最高額は500万円
Ⅰ型では、「小規模事業者」からの交付申請のほうが補助率、上乗せ額ともに高い。

申請内容補助率補助金額の範囲上乗せ額
・小規模事業者
・従業員数が小規模事業者と同じ規模の個人事業主
2/3以内100万円以上~ 200万円以内300万円以内(補助上限額の合計は500万円)
小規模事業者以外 1/2以内100万円以上~150万円以内225万円以内(補助上限額の合計は375万円)

「小規模事業者」とは、以下の要件にあてはまる中小企業や個人事業主をいう。

製造業その他従業員20人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業従業員20人以下
商業・サービス業従業員5人以下

・Ⅱ型の最高額は1,200万円
補助金の上限額は、Ⅱ型のほうが高い。ただし審査結果によっては補助率が下がるため、加点要素が多くなるように申請することがポイントになる。

申請内容補助率補助金額の範囲上乗せ額
審査結果上位2/3以内100万円以上~600万円以内600万円以内(補助上限額の合計は1,200円)
審査結果上位以外1/2以内100万円以上~450万円以内450万円以内(補助上限額の合計は900万円)

事業承継補助金の申請から交付までの流れ

補助金の申請から交付までの流れは、以下のとおりだ。

・新しいチャレンジについて検討する

・認定経営革新等支援機関に相談する

・認定経営革新等支援機関から「確認書」を取得する

・必要書類を準備し、公募期間内に交付申請を行う

・交付決定通知を受ける

・補助金の対象事業を実施する

・補助事業の完了報告を行う

・金額の確定通知を受ける

・補助金を請求する

・補助金の交付を受ける

事業承継補助金が交付されたら報告を

事業承継補助金について、I型・Ⅱ型の違いや、補助金を受けるための要件、申請から交付までの流れなどを解説した。要件や申請には難解な部分もあるが、認定経営革新等支援機関から継続的なサポートを受けられるため、積極的に申請を検討していただきたい。

なお、補助金が交付された後は、補助事業の収益を示す資料を5年間作成し、一定以上の収益があった場合はそれを事務局に報告しなければならない。その際、補助事業の収益と補助対象経費の差額の一部を納付しなければならない場合があることを覚えておこう。

文・中村太郎(税理士)

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