プロ投資家の先の先を読む思考法
(画像=Andrii/stock.adobe.com)

(本記事は、藤野 英人氏の著書『プロ投資家の先の先を読む思考法』=クロスメディア・パブリッシング、2022年5月2日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

積み重ねる一方で、「アンラーニング」を行う

何事も体験することは素晴らしいのですが、一方で積み重ねてきた体験がネガティブに働くときもあります。

人間は過去の自分の経験を積み上げ、その経験の上に立って未来を見るため、例えば経験による強固な思い込みを持ってしまった場合などは、未来を見る目が歪められてしまう可能性もあるのです。

そこで重要なのが「アンラーニング」です。

ただ新しい知識を重ねていくだけでなく、ときには一度学んだことを捨て去ったうえで学び直さなければなりません。

一度学んで記憶したものをただ捨てるのは難しいので、アンラーニングは「忘れる」ことと「新しいものを取り入れる」ことがセットである必要があります。新しい視点や考え方を取り入れ、古い視点や考え方を洗い流していくようなイメージです。

アンラーニングのために重視したいことが二つあります。

一つは、読書です。新たな研究結果や最新の知見を書物から学ぶことは、古びた知識や常識を入れ替えるために重要です。

もう一つ、本書で何度も述べている「若い人と会う」こともアンラーニングを促してくれます。

例えば先日、20代の人たちと会って食事をしていたときのことです。

若い人は美味しいことを「やばい!」と言うのだと思っていたのですが、その場にいた人たちは「飛ぶ!」と言っていたのです。

「やばい!」というのは、どうもちょっと古くなっているようです。

一説によれば「飛ぶ!」というのは、元プロレスラーの長州力さんが使っていた表現とのことで、古いのか新しいのかわからないところがまた面白いのですが、私も最近は美味しいものを食べたら「飛ぶ!」と言うようにしています。

つまらないことのように感じるかもしれませんが、アンラーニングする、アップデートするというのはそういうことだと思うのです。

「飛ぶ!」という言葉に眉をひそめる人もいるでしょう。私自身、昔は若い人の言葉の使い方に違和感を持ったこともありました。

今でも覚えているのは、「よろしかったですか?」という言い方を初めて聞いたときのことです。

今でこそどこでも耳にするフレーズですが、使われ始めた頃は「日本語の表現としておかしい」と指摘されていました。

私もあるホテルでこの言葉を聞いてびっくりし、そのホテルに「従業員があのような言葉を使うのはおかしいのでは」と苦情を言ったのです。

ところが数年後、素晴らしい接客で知られる大阪のザ・リッツ・カールトンホテルで、「よろしかったでしょうか?」が使われるのを耳にしたのです。私はそのとき、自分が折れることを決めました。

文化や習慣といったものは、時間の経過と共に若い人が変えていくものであり、その意味で必ず「若い人が勝つ」のです。

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藤野 英人
投資家・ひふみシリーズ最高投資責任者。レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役会長兼社長。1966年富山県生まれ。早稲田大学法学部卒業。国内・外資大手投資運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年レオス・キャピタルワークスを創業。東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、叡啓大学客員教授。一般社団法人投資信託協会理事。主な著書に『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)。

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