
特に中小企業の場合、会社の業績が社長の資質に大きく左右されることは、経営者なら誰もが実感しているだろう。社長が優秀なら業績は伸びるが、社長がダメだと業績は低迷する。ところで「ダメな社長」とは、具体的にどのような社長だろうか?この記事では、ダメな社長の特徴を詳しく解説する。自分が当てはまっていないかどうか、確認してもらいたい。
人間性の特徴4つ
最初に、ダメな社長にありがちな人間性の特徴を4つ紹介しよう。
特徴1. 感情・気分の起伏が激しい
すぐに怒鳴るなど感情の起伏が激しく、その日の気分によって極端に行動が変わることは、典型的なダメな社長の人間性だ。会社の社長は、社員や取引先などとコミュニケーションを取り、円滑な関係を構築していかなければならない。感情・気分の起伏が激しすぎる人間には、それが難しい。
特徴2. 思いつきで行動する
思いつきで行動するのも、ダメな社長の典型パターンだ。流行にすぐに飛びついてみたり、熟考せずに経営方針を決めたりすれば、たまたま当たることがあるかもしれないが、最終的にうまくいくわけがない。本人は「それがスピード経営」と思っているかもしれないが、それは大きな勘違いだ。
特徴3. 優柔不断で決断が遅い
逆に優柔不断で決断が遅いのも、社長として致命的だ。社員は、社長が決断しなければ動けない。社長の仕事は「決断すること」と言っても過言ではない。もちろん熟考が必要なこともあるが、単に優柔不断で決断が遅い場合は、せっかくのチャンスを逃すことになりかねない。
特徴4. 勉強が嫌い
勉強が嫌いな人は、社長には向いていない。社長は会社のすべてに責任を持ち、問題が発生すれば解決しなければならない。その際、社内のすべてについての知識を勉強せずにあらかじめ備えた者はいないだろう。市場環境は、時代とともに変化し続けている。その変化に対応するためには、勉強して新たな知識を吸収しなければならない。
経営者としての特徴ワースト13
続いて、ダメな経営者の特徴を13個挙げよう。
ワースト1. 公私混同をする
公私混同は、ダメな経営者の典型的な特徴だ。事業に無関係な旅行や飲み会に会社の経費を使うことはもちろん、お気に入りの社員を贔屓したり、社員のプライベートに介入したりすることも公私混同の一種だ。経営者の立場をわきまえない公私混同は、さまざまな問題の原因になるだけでなく、組織を腐敗させかねない悪しき習慣だ。
ワースト2. ビジョンやミッションを語れない
会社のビジョンやミッションは、社員を同じ方向に向かせ、取引先や顧客の共感・支持を得るための原動力となる。ビジョンやミッションを語れないのも、ダメな経営者の特徴だ。ビジョン・ミッションがないために、思い込んだことを力ずくでやろうとする。そんなことでは社員は付いてこないし、会社はイザというときに進むべき方向を見誤ってしまうだろう。
ワースト3. 会社の数字を把握していない
会社の数字を把握していない経営者は、それだけで「ダメな経営者」と断言できる。売上や利益はどれだけあるか、手元のキャッシュはどれだけあるかを知らなければ、経営はできない。数字を把握していない経営者は、「直感」や「情熱」を強調する傾向がある。しかし、それでは会社が奈落の底に落ちるのは時間の問題だろう。
ワースト4. 具体的な指示ができない
指示を具体的にできないのも、ダメな経営者の特徴だ。具体的な指示ができない理由は、具体的に考えていないからである。「徹底的にやれ」「とにかく成果を出せ」と丸投げしても、社員には何も伝わらないし、徹底的にやったとしても成果は出ない。頭で考えたことがそのとおりに実現するのは、おとぎ話やSFの中だけだ。
ワースト5. 成功を自分の手柄にする
成功を自分の手柄にするのも、ダメな経営者にありがちだ。仕事が上手くいくのは、取締役や社員のおかげである。仕事が上手くいったとき、一人ひとりを褒めて喜びを分かち合えば、取締役や社員は経営者に対して感謝の気持ちを抱くのに、それができない。そのため社員のモチベーションは下がり、それに伴って会社の業績も悪化していくだろう。
ワースト6. 失敗を社員や環境のせいにする
失敗を社員や環境のせいにするのは、会社の事業を自分ごととして捉えていないからだ。経営者は社内のすべての情報を取得でき、また社員をいかようにも動かせる。それで失敗したのなら、それは経営者の責任であり、経営者は自分の至らない点を反省すべきだ。社員や環境などのせいにすることは、ダメな経営者であることを証明する行為である。
ワースト7. 過去の成功体験にとらわれる
過去の成功体験にとらわれるのは、時代が変化していくことを認識していないからだ。過去の手法が通用しなくなったら、新しいやり方を試せばいい。それができずにそのまま止まってしまうのは、ダメな経営者だ。会社は遅かれ早かれ時代に取り残され、淘汰されることになるだろう。
ワースト8. 周りをYESマンで固める
自分の周りをYESマンだけで固めるのは、厳しい意見を耳にしたくないからだ。会社成長させる際には、客観的にみて正しいこと、間違ったことが存在する。しかし、ダメな経営者は自分が聞きたい意見だけを聞き、したいことだけをしたいのだ。そのような経営者は遠からず裸の王様になり、見放されていくだろう。
ワースト9. 社員に権限を委譲しない
社員に権限を移譲しないのは、ダメな経営者が他人を認められないからだ。自分と違う考え方を持つ取締役や社員が、彼らのやり方で物事を進めるのが許せない。そのような経営者でも、会社の規模が小さいうちは何とかなるだろう。しかし従業員が数十人規模になると、社員に権限を委譲しなければ、会社の成長は見込めない。
ワースト10. 無意味なこだわりがある
ダメな経営者は、無意味なことにこだわる傾向がある。事業経営は論理的に考えるべきものだが、そこに無意味なこだわりを持ち込むことで、すべてを壊してしまう。取締役や社員が説得しても、聞く耳を持たない。なぜならば、そのダメ経営者にとっては自分のこだわりこそが常に正しいからだ。
ワースト11. ルールを作っても自分は守らない
ルールを作っても、自分はそれを守らないのはダメな経営者だ。ダメな経営者にとってルールとは、社員を縛るためだけのものであり、自分は守る必要がないと考えている。せっかく決めたルールが、知らない間になかったことになるのも、ダメな経営者の会社ではよくあることだ。振り回される社員は、迷惑千万だろう。
ワースト12. トップダウンで物事を進められない
平時は、社長はほとんど何もしなくても、事業は回っていくだろう。しかし、イザというときには経営者がリーダーシップを発揮し、トップダウンで意思決定をしなくてはならない。それができないのはダメな経営者だ。自分で決める勇気もなければ、能力もないのである。
ワースト13. 状況を楽観視する
過去に経験したことのない事態に直面したとき、状況を楽観視するのはダメな社長だ。楽観視するのは、不安を打ち消し、安心したいからである。もちろん、過度に悲観的になる必要はない。しかし、発生しうるリスクにきちんと備えているからこそ、正しい判断ができる。「何とかなるだろう」と思っているだけでは、状況は悪化する一方だ。
労働環境についての特徴ワースト5
会社経営において、労働問題は重要だ。労働環境についてのダメな社長の特徴を5つ紹介しよう。
ワースト1. 残業代を支払わない
残業代を支払おうとしないのは、言うまでもなくダメな社長だ。残業代の未払いは違法であり、悪徳会社である。ダメな社長は「勤務時間内に仕事を終えられない社員が悪い」と思っている。しかし、そのような考え方が通用するわけがなく、いずれ社員は会社を去り、会社は立ち行かなくなるだろう。
ワースト2. 長時間労働をさせる
長時間労働をさせるのは、社長自身が長時間労働をしてきたからだ。寸暇を惜しんで働くからこそ成功すると思っている。社長は、それでいい。しかし、社員にそれを押し付けてはならない。仕事だけでなく、プライベートも充実させたい人もいる。そのような人と共存することが会社全体の成長につながることに、ダメな社長は気付かないのだ。
ワースト3. 有給休暇にいい顔をしない
有給休暇を社員に取得させることは、会社の義務である。有給休暇の取得にいい顔をしない社長は、自分の目の届かないところで社員が楽しむことが許せないのだ。「社員は支配するもの」と考えているところがダメである。そのような会社に、優秀な社員が集まるわけがない。
ワースト4. パワハラ・セクハラを許容する
自身がパワハラ・セクハラをする、あるいは他人のそれを許容するのは本当にダメな社長だ。パワハラやセクハラは、昭和の時代はある程度許容されていたところがある。しかし、時代の変化とともにそれらが認められなくなっているのは明らかだ。パワハラ・セクハラを認める社長は、まだ昭和の時代を生きているのだ。そのような社長がいる会社に、明るい未来があるはずがない。
ワースト5. すぐに「家族的」を持ち出す
「家族的な会社」は、一見良さそうに見える。しかし、何かと「家族的」を持ち出すのはダメな社長だ。ダメな社長が言う「家族」は、「あうんの呼吸で互いがわかり合う」ことを意味していることが多い。しかし実際は、社員は会社と雇用契約で結ばれ、また会社はさまざまな法律で規制されている。それを理解していない社長の会社が生き残るのは、難しいだろう。
ダメな社長にならないよう気を付けよう
ダメな社長には、さまざまな特徴がある。特徴の中には、互いに相反するものもある。ダメな社長のタイプは、必ずしも1つだけではないからだ。
しかし、すべてのダメな社長に共通する特徴がある。それは、「現実から学ぶことができない」ことだ。経営者は、従業員や取引先、顧客、市場環境などの現実から学び続けることによってのみ、経営者として存在することができる。社長は学ぶことを忘れずに、会社を成長させていこう。
文・高野俊一(ダリコーポレーション ライター)