会社員として働く傍ら有名アーティストの歌詞を手掛ける作詞家としても活躍している昆真由美(こんまゆみ)さん。2015年にチャン・グンソクの楽曲で作詞家としてメジャーデビューし、これまでに100曲以上の作詞を手がけています。作詞の講師や本の執筆など活躍の場を広げている昆さんに、作詞家を志すようになったきっかけや、今後にチャレンジしたいことなどを伺いました。 |
作詞家としてメジャーデビューを果たす
現在、私は会社員として仕事をする傍ら、作詞家としても活動しています。バンド活動や音楽活動をしていて作詞家や作曲家になる方が多いと思いますが、私の場合、「ものを書きたい」が先にありました。
短めのコラムやエッセイを書くのが好きで、就職後も執筆活動への夢を持ち続けていました。小説のような長い文章は苦手でしたが、短い文章を書くことが好きだったので、仕事に慣れてきたタイミングで作詞に挑戦することにしました。音楽が好きだったこともあり、「あの曲に携わっている」と言えたらカッコいいじゃないですか(笑)
4年間の作詞スクールを卒業し、事務所に所属して本格的に作詞家としての活動がスタート。1年目は、事務所に来た作詞の仕事のコンペにエントリーしたり、インターネットで作曲家を探して一緒に曲を制作して芸能事務所に売り込みに行ったり、とにかく必死に活動しました。そして2年目には、韓国のチャン・グンソクさんの『淡い雪のように』という曲でメジャーデビューを果たしました。
作詞をするうえでこだわっていること
実は作詞家としてデビューする前に、作詞の講師として活動を始めました。作詞オタクとして、世の中にある曲の詞を分析してブログにアップするということを続けたことが、講師の仕事につながったのです。この経験と独自の作詞理論を基に、自著を出版することができました。今でも詞の研究は継続しています。
流行っている曲はなるべく聴くようにしているのですが、時代によって流行りがあって、その変化を観察していくのが面白いです。自分が曲を聴いたときに良いなと思ったら、その理由を深掘りしていきます。「珍しい言葉が使われている」「リズムに乗っていて頭に残る」といった要素を考察します。
歌詞は単に音に言葉を乗せるだけではありません。歌は気持ちを表現するもので、伝えたいことが歌になるのです。たとえば「湘南の海」という曲があったとして、湘南の海そのものではなく、その海を見て感じた気持ちを書くのが作詞です。
作詞においては、聴く人の気持ちを想像しながら詞を考えます。聴いてくれる人が「自分のための歌だ」と感じてくれるような詞が理想です。「このシーンではこの歌が聴きたい」というリストに、私の作詞した曲が入っていることが作詞家としての喜びです。
2024年3月に発売されたNiziUの最新曲『SWEET NONFICTION』の作詞を担当しました。この曲は、私にとってこれまでの集大成と言える作品です。
作詞の魅力を世の中に発信していきたい
私が作詞の世界に足を踏み入れて約10年が経ちました。この仕事を続けていて特に良かったと感じるのは、自分の作品が世に出て、それを聴いてくれる方々の反応を直に感じられることです。作詞には正解がなく、資格や昇進といったものも存在しません。流行の移り変わりに合わせて、常に何が正しいのか悩みながら作り続けています。
10年間も作詞の仕事を続けてこられたのは、何よりもこの仕事が好きだからです。普段の会社員としての仕事は生活のために必要なものですが、作詞は好きでやっている仕事なので、バランスを取りながら続けることができています。もし作詞を本業にしてしまったら、嫌いになってしまうかもしれません。現在の副業スタイルが、自分にとって最も適した働き方だと感じています。
現在は作詞家としての仕事の他に、講師や書籍の執筆も行っています。これからは、作詞の楽しさをもっと多くの人に伝えていきたいと考えています。聴くのも書くのも面白いという魅力を、さまざまな形で発信していきたいです。
◼︎昆真由美(こん・まゆみ)さん
作詞家/作詞講師。立教大学社会学部社会学科卒業後、会社員として働きつつビクター音楽カレッジを修了。
『作詞入門 実例で学ぶポイントとコツ』『ヒット曲に学ぶ作詞の絶妙表現50《平成編》~歌詞のタイプで磨く作詞技法』の著者。
歌詞コンペに参加しながら作詞講師のキャリアを積む。現在も会社勤めの傍ら、作詞家、作詞講師として活動中。
作詞したNiziU『SWEET NONFICTION』は映画『恋わずらいのエリー』主題歌に起用され話題に。また、ShutaSueyoshi氏と共作詞した『HACK』はショート動画でのバズをきっかけにヒット。2023年11月、TikTok20億Views、ストリーミング5000万回再生を突破した。
歌詞好きが集まる部屋『LYRICSROOM』(メディア)も展開中。