
税金の「国民負担率」は、国民と税を考える上で非常に重要な指標だ。この国民負担率、2019年度は44.4%だったが、この数字は諸外国と比べて、高いのか、低いのか。この記事では国民負担率についての基礎知識を説明した上で、国民負担率の国際比較を試みる。
そもそも国民負担率とは?国民負担率の推移は?
そもそも国民負担率とは、租税負担率と社会保障負担率を合計したもののことを指す。ここでいう「租税負担」とは国税と地方税のこと、「社会保障負担」とは医療保険や年金などのことだ。
財務省の2021年3月の発表によれば、2021年度の国民負担率は44.3%となる見通しで、2020年度は46.1%(実績見込み)、2019年度は44.4%(実績)とされている。ちなみに国民負担率は年々上がっており、例えば今から約50年前の1970年は24.3%だった。

この表を見るとお分かりいただけるかと思うが、租税負担率の上昇よりも社会保障負担率の上昇が顕著だ。1970年と2020年の社会保障負担率を比べると、約3.7倍にもなっている。社会の高齢化に伴い、介護などの社会保障関係費が膨らんだことが理由とされている。
国民負担率の国際ランキング
このように日本の国民負担率は年々上がっているが、先進諸国と比べて高いのだろうか、低いのだろうか。2018年度(一部の国は2017年度もしくは2015年度)の数字を使い、経済協力開発機構(OECD)加盟35ヵ国を対象に以下の通りランキング化してみた。

結果として、日本の国民負担率はOECD35ヵ国中26位で、全体的にみれば日本の国民負担率は低く、アメリカよりは高い水準ではあるが、ヨーロッパ諸国と比べると低い。ヨーロッパ諸国では高い税金を支払うかわりに、医療や教育が無償化されている国が少なくない。
日本は重税国家ではないものの…
このように見ると、日本は決して税金の負担が大きい国というわけではない。消費税も先進諸国と比べると低い。では今後についてはどうだろうか。
残念ながら、あまり良い見通しは立っていない。少子高齢化がさらに加速することによって社会保障負担率はもっと上がっていき、それに比例して国民負担率も高まっていく。コロナ禍の影響もあり、雇用保険料が2022年度に倍増する可能性も指摘されている。
一方、「潜在的国民負担率」という概念でも考えてみよう。潜在的国民負担率とは、国民負担率に将来世代の税負担になる財政赤字の比率を加えた比率を加えたものだ。
財務省によると、2020年度の潜在的国民負担率は実績見込みで66.5%、2021年度は56.5%となる見通しだという。日本は先進諸国に比べて国民負担率と潜在的国民負担率の差が大きく、財政赤字が将来世代への大きなツケとなっている状況である。
税金の高い低いだけではなく、「使われ方」も重要な視点
この記事では国民負担率の高さについて論じてきたが、税金が高い低いかだけではなく、税金が国民のために効率的に使われているかどうか、という視点も重要だ。では日本の場合、国民負担率は低めだが、税金は国民のために効率的に使われているのだろうか。あなたはどう思うだろうか。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)