売上を減らそう
中村 朱美(なかむら・あけみ)
1984年生まれ、京都府出身。専門学校の職員として勤務後、2012年に「1日100食限定」をコンセプトに「国産牛ステーキ丼専門店 佰食屋」を開業。その後、「すき焼き」と「肉寿司」の専門店をオープン。連日行列のできる超・人気店となったにもかかわらず「残業ゼロ」を実現した飲食店として注目を集める。また、シングルマザーや高齢者をはじめ多様な人材の雇用を促進する取り組みが評価され、2017年に「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選出。2019年には日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」大賞(最優秀賞)を受賞。

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創業から3年、ついに夜の営業を完全に廃止

2店舗体制になり、長女の子育てと経営を両立しながらやっていくなかで、二人目の子どもを授かりました。わたしは考えざるをえませんでした。

もしこの子が生まれたら、きっとまたお店に立つ時間は減るだろう。

今度は長女の保育園の送り迎えもはじまる。

そう考えると、ランチだけで100食完売しなかったときでも、とても店を夜まで開けておくことはできない。

じゃあ、それを従業員たちに任せる? 
いや、わたしができないことを従業員にお願いするのは、申し訳ない。
それなら思い切って、夜営業はやめてしまおう。

決意して、佰食屋は17時半からの夜営業をついにやめました。

こうして佰食屋は、平日も土日も14時半までしか営業しない、ランチだけのお店になったのです。オープンから約3年が経った頃でした。

ランチしか営業しない、と決めたことで、残念がるお客様もいらっしゃいました。ご家族そろって晩ごはんに来られる人もいましたし、心苦しい決断であったのはたしかです。

けれども、夜営業をやめたことで、思わぬ波及効果がありました。

反対に「ランチを目がけて来られるお客様」が増えたのです。

それまでは、ランチタイムに80食売れても、夜営業に20食売れるかどうか、ギリギリなときもありました。お客様が「夜はもう品切れしているに違いない」と先入観を持って、来店機会を逃してしまっていることもあったのでしょう。

なにかを捨てることで、得られるものがあります。

思い切ってランチ営業のみにしたことで、昼食を考える際、ランチでしか食べられないなら真っ先に「佰食屋に行ってみよう」と、頭に思い浮かべてもらえるようになったのです。

結果として、平日も土日も毎日ランチタイムだけでほぼ100食を売り切ることができるようになりました。