ここ数年のシニア向けの取り組み・サービスは優勝劣敗な状況に
~介護に左右されない軽度者向けは堅調~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のシニア関連65市場を調査し、2018年のシニア関連マーケットの動向を幅広くまとめた。
1.調査結果概要
少子高齢化が進み、従来の若者向けやファミリー向けの消費が縮小する中で、消費購買層としてのシニア層に注目度が高まっている。使えるお金や時間に余裕があるとされているシニア層の消費をどのように取り込むかが、今後のマーケティング活動のポイントの一つになるからだ。
本調査では、シニア世代を主力ターゲットとするマーケット、もしくはシニア世代の需要を積極的に取り込もうとしている企業などに焦点をあて、その市場動向を分析し、参入の取り組み等を広く調査した。特に、介護・リハビリや老人ホームなどといった、従来からの高齢者向けマーケットだけでなく、レジャー、スポーツ、趣味、習い事といった新しいカテゴリーや流通事業者の動向も捉えている。
ここ数年で、様々な市場や企業でシニア向けの取り組みが行われたが、優勝劣敗な状況になりつつあり、シニアに支持されて拡大するものがある一方で、既に撤退した業態やサービスも出ている。介護・リハビリ市場では、介護報酬改定の影響が大きく、訪問介護、通所介護が前年割れしているが、訪問看護、訪問リハビリステーションは伸びている。歩行器・シルバーカーや杖、高齢者食などは、介護に左右されない軽度者向け製品が市場拡大を牽引しており、大人用紙おむつ、補聴器などは、高齢者人口の増加に需要が比例して市場が堅調に拡大している。一方、ゴルフ場やダンス教室、日本文化教室、アート教室など、従来から高齢者向けイメージが強い市場は前年割れしており、フィットネスや登山・キャンプなど、若者からも魅力的に見えるアクティブなスポーツ市場が増加している。また、クルーズやバスツアーは、引き続きシニアのニーズが堅調で市場規模は拡大傾向にある。
なお、本調査では2018年のシニア関連65市場の動向を対象としているため、2020年以降の日本国内での新型コロナウイルスの感染拡大の影響には言及していない。
2.注目トピック
ノウハウ生かし相乗効果狙うシニア向けスポーツ関連ビジネス
スポーツ系のレジャーは、シニア層の参加に支えられている市場が少なくない。ゴルフ場でも、メンバーの大半が60代から70代というコースも少なくない。また、スキーやボウリング、卓球などでは、かつては愛好者であったが一度はリタイアした中高年層が、定年後や子育て終了後に時間ができたり、健康づくりのためなどで戻ってきている。
多くのスポーツ施設が少子高齢化や若者のスポーツ離れなどにより集客に苦戦しているなかで、フィットネスクラブは早い段階からシニア向けの取り組みに注力している。会員の主力は60歳以上で、50歳以上を含めると約半数の水準となっている。そのなかでも、シニア層は健康意識が高く、時間的にも余裕があるため、平日昼間などの稼働率を高めたいフィットネスクラブ側の狙いともニーズが一致する。クラブ内で会員同士のコミュニケーションが取れることも、シニア層にとっては魅力の一つとなっているようだ。また、個別指導のパーソナルトレーニングなどは月会費とは別に1回数千円かかるが、お金に余裕のあるシニア層は主要顧客になっており、クラブ側ではメディカル機能や介護サービスを付帯させるなど、シニア向けの事業領域を拡大している。
近年、シニア層の取り込みに成功した例として、「カーブス」があげられる。「カーブス」はサーキットトレーニングを前面に打ち出した女性限定の小型ジムで、利用者の大半が女性のシニア層だ。2020年3月、株式会社カーブスホールディングスは、株式会社コシダカホールディングスからスピンオフして新規上場を果たし、注目を集めた。同社は、これまでトライアルで運営していた「メンズ・カーブス」を2021年8月期以降に30店舗程度まで拡大する方針を示すなど、これまでの女性だけでなく、男性シニア層の獲得に向けた取り組みを進めており、予防や健康寿命の延伸などへの意識の高まりを踏まえると、「withコロナ」への対策が必要にはなるが、今後も需要の拡大が期待できるだろう。
調査要綱
1.調査期間: 2019年11月~2020年3月 2.調査対象: シニア世代を主力ターゲットとするマーケット、もしくはシニア世代の需要を積極的に取り込もうとしている企業など 3.調査方法: 当社専門研究員による文献調査、ならびに直接面談調査併用 |
本調査では、以下のシニア関連65市場を対象とし、マーケットの動向を調査した。
介護・リハビリ市場(訪問サービス、通所サービス、短期入所サービス、施設サービス、介護福祉用品、介護ロボット)、住宅市場(有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、シニア向け分譲マンション)、宅配市場(在宅配食サービス・宅配弁当、生協個配、ネットスーパー宅配、外食チェーン宅配)、各種支援サービス市場(見守りサービス、家事代行サービス、シニア人材派遣・シニア向け起業支援、婚活支援・マッチングサービス、終活支援サービス、金融サービス)、旅行市場(ツアー、介護旅行・バリアフリー旅行、クルーズツアー、鉄道旅行、バスツアー)、スポーツ市場(フィットネスクラブ、ゴルフ、登山・アウトドア、ボウリング、卓球、ダンス)、娯楽市場(音楽、映画、カラオケ、ゲームセンター、テーマパーク・遊園地、温浴施設)、趣味・習い事市場(カルチャーセンター、大学公開講座、日本文化教室、アート教室、資格取得教室、パソコンスクール、音楽教室)、食品・外食市場(食品、健康食品・サプリメント、介護食・高齢者食、総菜・弁当、飲食店、コーヒー・カフェ)、衣料品・日用品市場(アパレル、化粧品、大人用紙おむつ、毛髪業(かつら・増毛)、杖、眼鏡・コンタクトレンズ、補聴器)、家電・情報機器市場(生活家電、音響機器、シニア向け携帯電話・スマートフォン)、流通(スーパー、コンビニエンスストア、百貨店、ドラッグストア・薬局、通信販売) |
<市場に含まれる商品・サービス> 同上 |
出典資料について
資料名 | 2020年版 シニア関連市場マーケティング年鑑 |
発刊日 | 2020年03月26日 |
体裁 | A4 610ページ |
定価 | 120,000円(税別) |
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