支払調書
(画像=PIXTA)

弁護士に対する報酬や原稿の作成料などを支払った場合は、基本的に「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を税務署に提出する必要がある。支払調書は、従業員を1人でも雇っている法人または個人に提出の義務があり、提出範囲・金額が詳しく定められている。

この記事では、支払調書の提出範囲や提出義務がある法人・個人、作成・提出の方法、その他の法定調書の提出範囲などを詳しく紹介する。

支払調書とは?

支払調書とは、60種類以上ある法定調書の1つで、税務署への提出が義務付けられているものだ。

・報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
・不動産の使用料等の支払調書
・不動産の譲り受けの対価の支払調書
・不動産等の売買または貸付けのあっせん手数料の支払調書

の4種類があるが、一般的に「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」が「支払調書」と呼ばれることが多い。以下では、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を「支払調書」として解説していく。

支払調書は、フリーランスなどの個人に対して特定の業務を依頼し報酬を支払った場合、その支払金額と源泉徴収税額を税務署に報告するために作成する。源泉徴収税は「社員の給与から差し引くもの」と思っている人が多いだろう。しかし、フリーランスに対して支払う報酬についても源泉徴収税は発生し、業務を依頼した側に納税義務がある。支払調書は、フリーランスにとっての源泉徴収票のようなものなのだ。

支払調書の提出が義務となる範囲と金額

支払調書の提出が義務となる範囲と金額は、以下のとおりだ。

  1. 外交員、集金人、電力量計の検診人およびプロボクサーなどの報酬・料金、バー、キャバレー等のホステスなどの報酬・料金、広告宣伝のための賞金については、その年の支払い金額が50万円を超えるもの

  2. 馬主に支払う競馬の賞金については、1回の賞金額が75万円を超える支払いを受けた者について、その年のすべての支払い金額

  3. プロ野球選手などに支払う報酬・契約金については、その年の支払い合計金額が5万円を超えるもの

  4. 弁護士や税理士などに対する報酬、作家や画家に対する原稿料や画料、講演料などについては、その年の支払い合計金額が5万円を超えるもの

  5. 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬については、その年の支払い合計金額が50万円を超えるもの

※ 金額については消費税および地方消費税の額を含めて判断するが、消費税・地方消費税が明確に区分されている場合には、その額を含めないで判断してもかまわない

※ 源泉徴収は原則として「個人」が対象となる。したがって、上記に該当しても、依頼先が法人である場合は源泉徴収は行わない。ただし法人の場合でも、提出範囲に該当する場合には支払調書を提出する必要がある。

※ 提出範囲には該当するものの、支払いの限度額以下であったため源泉徴収を行わなかった場合も、支払調書自体は提出する必要がある。

出典:国税庁『No.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等』

支払調書の提出義務者となる個人や法人は?

支払調書の提出義務があるのは、「源泉徴収義務者」である。源泉徴収義務者とは、

「人を雇って給与を支払う会社や個人、学校や官公庁、人格のない社団・財団など」

のことだ。個人事業主は、「源泉徴収は支払先が行うもの」と思っている人も多いだろう。しかし個人事業主であっても、人を雇って給与を支払っている場合は源泉徴収義務者となり、支払調書の提出義務がある。

デザイナーなどに業務を外注していても、人を雇っていなければ源泉徴収義務者とはならないため支払調書の提出義務はない。また人を雇っている場合でも、常時2人以下のお手伝いさんなどの家事使用人を雇っている場合は、源泉徴収義務者とならない。

支払調書の提出期限や提出方法

支払調書は、翌年の1月31日までに税務署へ提出する。

提出方法は、書面による提出が原則だ。ただし一定の要件を満たす場合は、

・e-Tax
・データを記録した光ディスクや磁気ディスク

による提出も認められる。

支払調書を本人に発行する義務はあるのか?

支払調書を、報酬・料金を支払った本人に対して交付する義務はない。しかしフリーランスなどは、支払調書をもとにして確定申告書を作成するケースも多い。そのため、慣行として支払った本人に対しても支払調書を交付するのが一般的だ。

ただし、支払調書を支払った本人に対して交付する際は、マイナンバーを記載してはいけないことになっている。番号法による特定個人情報の提供制限を受けるためだ。

支払調書の作成方法

支払調書の作成方法を見ていこう。

THE OWNER編集部

・支払いを受ける者
報酬を支払った相手の住所(居所)または所在地、氏名または名称、マイナンバーを記載する。かならず契約書を確認のうえ、漏れなく記載しよう。

・区分
報酬などの内容を記載する欄だ。たとえば、原稿料、印税、挿し絵料、翻訳料、通訳料、脚本料、作曲料、講演料、教授料、放送者金、映画・演劇の出演料、弁護士報酬、税理士報酬、広告宣伝のための賞金、教授・指導料などを記載する。

・細目
区分より詳しく内容を説明する必要がある場合に記載する。詳しく内容を説明する必要があるのは、以下のような場合だ。

・印税 …書籍名
・原稿料、挿し絵料 …支払回数
・放送謝金、映画・演劇の俳優などの出演料 …出演した映画、演劇の題名など
・弁護士等の報酬、料金 …関与した事件名など
・広告宣伝のための賞金 …賞金の名称など
・教授・指導料 …講義名など

・支払い金額
1年間に支払った金額を記載する。源泉徴収されなかった支払いについても記載が必要。支払調書の作成をする時点で未払いのものがある場合は、未払い額を内書きする。

・源泉徴収税額
1年間で源泉徴収した税額を記載する。作成日時点で未徴収のものがある場合は、未徴収額を内書きする。

・適用
記載すべき内容がある場合に記載する。

・支払者
支払者の住所(居所)または所在地、氏名または名称、電話番号、マイナンバーまたは法人番号を記載する。

支払調書を提出しないとどうなる?

支払調書を提出しなかった場合、あるいは偽りの記載をした場合は、所得税法第242条の5により「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」というペナルティーが科せられる。ただし、提出期限に間に合わなかったとしても、追徴課税などは行われない。

その他の法定調書について

ここまで、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出義務や提出方法などについて見てきた。支払調書は数多くある「法定調書」の1つだが、ここからはその他の法定調書のうち特によく使われるものについて、提出義務や提出範囲、注意事項などを見ていこう。

なお法定調書の提出期限は、すべて翌年の1月31日である。

給与所得の源泉徴収票(給与支払報告書)

「給与所得の源泉徴収票」は、俸給や給料、賃金、歳費、賞与などの「給与等」を支払った法人または個人が提出義務を負う。一度でも給与を受け取ったことがある人なら、見たことがあるだろう。給与等を支払ったすべての人に対して作成・交付することが必要とされているが、税務署に提出する必要があるものは、以下のとおりだ。

ただし、市区町村に対して提出する「給与支払報告書」は「給与所得の源泉徴収票」とは異なり、提出範囲に関わらず支払ったすべての人について提出しなければならない。(ただし、退職した人で支払い金額が30万円以下の場合は、提出を省略することができる)。

・給与所得の源泉徴収票の提出範囲

  1. 年末調整をしたもの
    (1)法人の役員で、1年間の給与等の支払額が150万円を超えるもの。「役員」とは、取締役や執行役、会計参与、監査役、理事、清算人、相談役、顧問などのことである。

(2)弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、弁理士、海事代理士、建築士で、1年間の給与等が250万円を超えるもの。ただし、これは給与等として支払っている場合であり、報酬として支払う場合は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を提出する必要がある。

(3)上の(1)と(2)以外の場合は、1年間の給与等の支払い金額が500万円を超えるもの。

  1. 年末調整をしなかったもの
    (1)「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した人で、その年に退職した人、または災害により被災を受けたため給与所得に対する源泉所得税および復興特別所得税の徴収猶予・還付を受けた人は、1年間の給与等の支払い金額が250万円を超えるもの。ただし法人の役員の場合は、50万円を超えるもの。

(2)「給与所得者の扶養控除申告書」を提出した人で、主たる給与等の金額が2,000万円を超えるために年末調整をしなかった人。

(3)「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなかった人で、月額表または日額表の乙欄もしくは丙欄適用者は、1年間の給与等の支払い金額が50万円を超えるもの。

退職所得の源泉徴収票・特別徴収票

「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」は、退職手当などを支払ったすべての人に対して作成・交付する必要がある。ただし税務署に提出する必要があるのは、支払先が法人の役員である場合のみだ。その際、「退職所得の源泉徴収票」は税務署に、「特別徴収票」は市区町村に提出する。

不動産の使用料等の支払調書

「不動産の使用料等の支払調書」は、不動産業者である個人に対して、年間15万円を超える不動産の使用料等を支払った場合に提出する。ただし支払う先の不動産業者が法人である場合には、権利金、更新料などについてのみ提出する。家賃や賃借料のみを支払っている場合は、支払調書の提出は必要ない。

「不動産の使用料等」には、土地や建物の賃借料だけでなく、以下のようなものも含まれる。

(1)地上権、地役権の設定あるいは不動産の賃借にともなって支払われる権利金や礼金など
(2)契約期間の満了にともない、または借地の上にある建物の増改築にともなって支払われる更新料や承諾料など
(3)借地権や借家権を譲り受けた場合に地主や家主に支払われる名義書換料など
(4)催し物の会場を賃借する場合のような一時的な賃借料、陳列ケースの賃借料、広告などのための塀や壁面などのように土地や建物の一部を使用する場合の賃借料

不動産等の譲受けの対価の支払調書

「不動産等の譲受けの対価の支払調書」は、同一の不動産業者である個人に対して100万円を超える不動産等の譲受けの対価を支払った場合に提出する。この「譲受け」には、売買のほかに交換、競売、公売、収用、現物出資などによる取得も含まれる。

不動産等の譲受けの対価のほかに補償金が支払われるものについては、支払調書の摘要欄に補償金の種類と金額を記載する。

不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」は、同一の不動産業者である個人に対し、15万円を超える不動産等の売買または貸付けのあっせん手数料を支払った場合に提出する。

出典:国税庁『給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引』

パソコンによる法定調書の作成・提出方法

支払調書をはじめとする法定調書の作成および提出は、パソコンで行うこともできる。その方法を見てみよう。

eLTAXによる提出

eLTAXとは、「地方税ポータルシステム」のことである。給与の支払いをする法人または個人は、「給与所得の源泉徴収票」を税務署に、「給与支払報告書」を市区町村に提出する必要がある。

eLTAXを利用すれば、「給与所得の源泉徴収票」と「給与支払報告書」を一括で作成し、送信することができる。送信すると、「給与所得の源泉徴収票」は税務署に、「給与支払報告書」は市区町村に、それぞれ自動的に提出される。

e-TAXによる提出

e-TAXとは、「国税電子申告システム・納税システム」のこと。e-TAXを利用することで、法定調書を提出することもできる。支払調書や給与所得の源泉徴収票をはじめとする法定調書を作成する際は、「e-TAXソフト(WEB版)」を使用して、WEB上で入力することで帳票を作成できる。

ただし、給与等を支払った従業員から請求があった場合は、源泉徴収票を書面にて交付しなければならない。また、給与所得や退職所得がある人が確定申告をする際は、電磁的な方法により提供を受けた源泉徴収票のデータをプリントアウトしたものではなく、書面により交付を受けたものを申告書に添付しなければならない。

光ディスクなどによる提出

法定調書は、CDやDVDなどの光ディスクで提出することもできる。前々年に提出すべきであった法定調書の提出枚数が1,000枚以上の場合は、e-TAXまたは光ディスクなどによる提出が義務付けられている。なお、2022年からは100枚以上の場合に義務化されることになっている。

ただし、e-TAXまたは光ディスクによる提出が義務付けられていない法人・個人が光ディスクなどによって法定調書を提出する場合は、税務署へ事前に申請し、承認を受ける必要がある。

法定調書の作成・提出の際のマイナンバーによる本人確認方法

「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」および「給与所得の源泉徴収票」の作成にあたっては、報酬や給与の支払先のマイナンバーを記載することとなっている。マイナンバーの提供を事業者が受ける場合は、あわせて本人確認が必要になる。

本人確認は、「番号確認」と「身元確認」との両者について、以下に例示する書類を用いて行う必要がある。

例1 マイナンバーカード(番号と身元の両方を確認できる)
例2 通知カード(番号確認)+運転免許証や健康保険証など(身元確認)

ただし、写真のない健康保険証などの身分証明証で身元確認を行う際は、2種類以上の身分証明証が必要になる。

支払調書は期限内に提出しよう

弁護士やライターなどへ報酬を支払った場合に、提出の義務を負う支払調書。従業員を1人でも雇っている「源泉徴収義務者」には提出義務があり、提出の条件や金額は詳しく定められている。

支払調書を提出しないと懲役または罰金を科されることもあるので、1月31日の期限までに必ず提出しよう。多くのフリーランサーは確定申告に際し、源泉徴収税額を確認するため支払調書を利用する。支払った本人に対しても、できるだけ早く支払調書を交付するようにしたい。

文・THE OWNER編集部