(本記事は、横山光昭氏の著書『ゼロからわかる!フリーランス、自営業のためのお金の超基本』=アスコム、2020年4月18日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
青色申告で最大で65万円の青色申告特別控除が受けられる条件
- 青色申告をe-Taxで行うと、65万円の青色申告特別控除が受けられます。ただしそのためには、マイナンバーカードが必要。できるだけ早く準備をして、完璧な節税を目指しましょう。面倒な帳簿作りは、税理士さんに任せてもOK。
確定申告の書類をe - Taxで提出すると…
所得から65万円控除される。
確定申告の書類を税務署の窓口に提出すると…
所得から55万円だけ控除される。
これまで、「青色申告をすると、最大で65万円の青色申告特別控除が受けられる」とお伝えしてきましたが、65万円の控除を受けるには、いくつかの条件をクリアする必要があります。
その条件をごく簡単にまとめると、以下の2つとなります。
①複式簿記で帳簿を作る
②e‒Taxによって確定申告を行っている
まず①ですが、帳簿には、誰にでも簡単に作ることのできる「簡易簿記」によるものと、少し複雑な「複式簿記」によるものの2種類があります。
そして、簡易簿記であれば10万円の、複式簿記であれば55万円または65万円の青色申告特別控除が受けられます。
簡易簿記で作る帳簿は、基本的には収支のみを記録する非常にシンプルなものであり、白色申告で作らなければならない帳簿とほぼ同じレベルです。
同じような作業をしても、白色なら控除額は0円、青色なら10万円ですから、「自分は簡易簿記でいいや」という人でも、青色申告にしておくべきです。
一方、複式簿記は少し複雑で、各取引の内容や事業の財務状態が詳しくわかるのですが、「仕分帳」「総勘定元帳」「現金出納帳」「売掛帳」「買掛帳」「経費帳」「固定資産台帳」の8つの帳簿を作成する必要があり、手間と時間がかかります。
みなさんの中には、「帳簿をつけたことがないし、こんな作業は無理だ」と思っている人もいるかもしれませんが、今は、最初にさまざまな設定をし、日々の取引を入力するだけで、自動的に帳簿を作ってくれるパソコンソフトもあります。
パソコンが使えて、時間やエネルギーのある人は、帳簿作成に関する本や、パソコンソフトに添付されているガイドブックなどを参考に、ご自身で帳簿や確定申告の書類を作ってみてもいいかもしれません。
もしそれも難しいということであれば、レシートや領収書、取引先から届く支払調書、各種控除証明書などをそろえて、税理士に相談しましょう。
費用は税理士によって異なりますが、経費の仕訳から帳簿作成、確定申告の書類作成までお願いした場合、相場としては、売上が500万円未満であれば10万円程度、500万円以上1000万円未満であれば15万円程度、1000万円以上だと20万円程度ということが多いようです。
それでも、節税額を考えれば、十分に元は取れます。
慣れない帳簿作成に時間と労力を費やすことを考えたら、税理士に委託してしまった方が、トータルではおトクだといえるかもしれません。
さて、青色で確定申告をする際には、帳簿や資料に基づいて作成した「確定申告書B」「青色申告決算書」の2種類の書類を期間中(原則として、例年2月16日~3月15日)に提出します。
いずれも、国税庁のホームページや税務署の窓口で入手することができます。
それらの書類および添付資料を窓口へ持参するか、郵送またはオンライン(e‒Tax)で管轄(かんかつ)の税務署に提出し、受理されれば、確定申告は終了ですが、ここで、170ページでお伝えした条件②がからんできます。
確定申告書類はオンライン(e Tax) で提出しよう!
65万円の青色申告特別控除を全額受けるためには、
確定申告書類は、e‒Taxで提出するようにしてください。
e‒Taxとは、オンライン(インターネット)で税金関係の申請・届出などが行える国税庁のシステムです。
e‒Taxを利用すれば、「個人事業の開業・廃業等届出書」「所得税の青色申告承認申請書」や確定申告に必要な書類を、自宅から提出することができます。
これまでは簡易簿記で10万円、複式簿記で青色申告をすれば、65万円の青色申告特別控除が受けられました。
ところが平成30年度の税制改革により、2020年分以降の所得税(および2021年度分以降の個人住民税)については、青色申告特別控除の控除額が3段階に分かれることとなり、複式簿記で青色申告をしただけだと控除額は55万円、書類をe‒Taxで提出して、初めて65万円の控除が受けられることになりました(「仕訳帳および総勘定元帳について、電磁的記録の備付けおよび保存を行っている」場合も65万円の控除が受けられますが、少し難しいので割愛します)。
e‒Taxを利用するには、
- 市区町村の窓口でマイナンバーカードを取得する
- パソコンに、マイナンバーカードの電子証明書を使うための「利用者クライアントソフト(JPKI利用者ソフト。公的個人認証サービスのサイトからダウンロードできる)」をインストールする
といった準備が必要です。
なお、これまではマイナンバーカード内の電子証明書を読み取るための「ICカードリーダー/ライター」が必要でしたが、2020年1月からは、スマートフォンでマイナンバーカードを読み取って利用することも可能になり、より簡単に確定申告などができるようになりました。
マイナンバーカードの取得には時間がかかりますから、確定申告の期日間際にあわてなくて済むよう、早めに手続きをしておきましょう。
e‒Taxのやり方についてわからない点がある場合は、国税庁やe‒Taxのホームページをチェックするか、税務署の窓口で相談しましょう。
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