(本記事は、アイヴァン・マイズナー、マイク・マセドニオ、大野真徳(著者)の『リファーラルマーケティング』=アチーブメント出版、2015年6月30日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
強力な人脈を構築するうえでの3つの段階
リファーラルマーケティングにおいてカギとなるコンセプトは「人間関係」です。他の個人や事業者との人間関係は、情報や支援、リファーラルを獲得するシステムを構築する上で、その土台となります。リファーラルマーケティングが機能するのは、これらの人間関係が双方向型、つまり、両者に恩恵をもたらすものだからです。
リファーラルマーケティングには多種多様な人間関係が関わってきます。中でも重要なのは、リファーラル提供者との関係、彼らが連れてくる見込み客との関係、そして、そうした見込み客の中から顧客になってくれた人たちとの関係です。これらの人間関係というのは、どこからか降って湧くようなものではなく、自分で育て上げる必要があります。人間関係は、相互的な信頼と恩恵とを糧に発展していきます。人間関係が成熟していく過程には、認知(Visibility)の段階、信頼(Credibility)の段階、利益(Profitability)の3つの段階があります。これをVCPプロセスと呼んでいます。
私生活においても、ビジネスにおいても、人間関係というのは、それを構成する個人間における固有の関係であり、時間をかけて進化を遂げるものです。はじめは暫定的でもろく、まだ見ぬ可能性と期待とが詰まった状態にあります。そこから、具体的な体験と親交を通じて、より強力になっていきます。そして、信頼とコミットメントへと成熟していきます。VCP過程は、ビジネスと私生活の両方における、人間関係の誕生、成熟、強化のプロセスを記述したものです。これは、人間関係の状態を評価し、それがリファーラルをもらえるようになるまでのプロセスにおいて、どの段階にあるのかを知るのに役立ちます。また、VCPプロセスは、将来的に友人、クライアント、同僚、仕入先、仕事仲間、あるいは家族となる人たちと、効果的かつ恩恵のある人間関係を育むために活用することもできます。これを成し遂げることができれば、人間関係はお互いにとって恩恵のあるものになり、それゆえに長く続くものとなっていくのです。
認知の段階(Visibility)
人間関係における最初の段階は認知(V)の段階です。これは、あなたと相手が知り合いになる段階です。ビジネスにおいては、リファーラル提供者の候補となる人や見込み客が、あなたのビジネスについて知った段階を指します。きっかけとしては、あなたが行ったPR活動や、宣伝活動、あるいは共通の知り合いかもしれません。次に、相手はあなたが実際に仕事をしている姿や、人とやり取りをしているところを目にするかもしれません。そして、コミュニケーションが始まり、つながりをもつようになります。たとえば、電話で商品に関する問い合わせを1、2回やり取りするかもしれません。さらに、個人的にも親しくなり、気の置けない関係になるかもしれません。とはいえ、まだお互いについてはあまり知らない段階です。このような人間関係が集まって、カジュアルな人脈を構成している訳です。これは、ある種の事実上のつながりであり、1つあるいは複数の関心を共有することに基づいています。
認知(V)の段階は重要です。なぜなら、認知と認識とを生み出す段階だからです。認知度が上がり、より広く知れわたるようになれば、ほかの人に関する情報がより多く入ってくるようになります。そして、より多くの機会を得ることにつながり、ほかの人やグループからリファーラルを提供する相手として認められるチャンスも増えます。認知度というのは、積極的に維持向上させていかなければいけません。それなしには、次の段階には進むことはできません。
認知が向上すると......
- より広く知れわたるようになる
- ほかの人に関する情報がより多く入ってくるようになる
- より多くの機会を得ることにつがる
- ほかの人やグループからリファーラルを提供する相手として認められるチャンスも大きくなる
リファーラル提供者との人間関係が認知(V)の段階にあるかどうかを知るには、次の点が試金石になります。それは、お互いに名前と職業を認識しているかどうかです。
※自分の連絡先をひととおり調べてみると、この条件に一致しない人が出てくると思います。これらの人たちとの関係を認知以前(Pre-Visibility)の段階と呼ぶことができます。
信頼の段階(Credibility)
信頼とは、頼りになる、または、信用に足るという段階を表す言葉です。あなたと相手が、お互いに対する期待感をもつようになり、そして、その期待が満たされることによって、両者の人間関係は信頼(C)の段階へと移ります。人間関係が満足なものであるという確信をそれぞれがもてるようになれば、人間関係はさらに強化されていきます。
アポイントが守られ、約束が果たされる。事実が裏付けられ、実際にサービスが提供される。そのとき信頼はより大きくなります。昔から、「結果は言葉以上にものを言う」と言いますが、それはほんとうです。これは非常に重要です。相手の期待に応えられなかった(暗黙のものを含め、相手との約束を守ることができなかった)場合、人間関係の芽が地表に顔を出す前に、それを摘んでしまうことになります。それだけでなく、あなたが望まないような「認知」を生み出してしまう可能性すらあります。
自分がどれくらい信頼されているかを知るには、第三者に尋ねてみるのも1つの方法です。長く付き合っている知り合いや、過去に仕事をしたことがある人に聞いてみます。その人は、あなたの信頼性をほかの人に保証してくれるでしょうか? あなたのことを誠実な人物だと言ってくれるでしょうか? あなたの商品やサービスが効果的だと感じているでしょうか? あなたのことを、いざというときに頼りになる存在として捉えてくれているでしょうか?
VCPプロセスを基準に人間関係の評価を行う際は、人間関係というのは双方向型のものだということを念頭に置く必要があります。したがって、人間関係の評価は、あなた自身の認識と相手の認識との最小共通項になります。たとえば、あなたが信頼(C)の段階にあると思っていても、相手がまだ認知(V)の段階だと感じているうちは、その人間関係は認知(V)の段階だと判断する必要があります。
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