勘定科目
(画像=birdland/stock.adobe.com)

返金とは、販売した商品や提供した役務の対価として支払ったものを、売り主から買い主へ返すものである。返金が発生すれば仕訳が必要となるが、勘定科目に悩むこともあるだろう。ここでは、返金が発生した場合にどのような費用処理をすべきか、返金する側と返金される側に分けて説明する。

返金が発生する状況とは?

返金は大きく分ければ、以下の二つの事態が生じた場合に実施される。

返金の二つのパターン

(1)取引において、支払うべき金額よりも支払った金額が多いもの

取引で支払うべき金額は、事前に見積書や発注書などで定めていることが一般的であり、誤ってその金額を超えた支払いがあった場合は、返金が発生する。また、納品や支払いがあった後に金額の変更があった場合も、支払った金額が支払うべき金額より多くなれば、返金が必要となる。

(2)取引自体がなくなった場合や、もともと取引がない場合に支払ったもの

取引自体がなくなれば、金銭のやりとりも当然不要である。取引において前払いが必要な場合などで、支払いの後に取引自体がなくなった場合には、返金されるのが一般的である。

また、もともと取引がなかったにも関わらず誤って支払いがあった場合も、返金が発生するであろう。

返金や返品にあたっての前提条件を確認する

取引を行うときには、納品物や取引金額をはじめ、事後的な金額変更の有無やその条件、納品物の合否基準、支払い時期、返金の有無やその条件などは、予め買い主と売り主が合意しておくべきものである。

取引契約内容の確認と合意が不十分であれば、想定していた返金がされなかったり、納品物に食い違いがあった場合でも返品ができなかったり、望まない結果を招きかねない。

「固定負債」と「流動負債」の違いとは?各負債の勘定科目と押さえておきたい3つの指標
【こちらの記事もおすすめ】

「固定負債」と「流動負債」の違いとは?各負債の勘定科目と押さえておきたい3つの指標
貸借対照表に記載する「固定負債」と「流動負債」。この2つの負債は財務状況に関わってくる重要な項目なので、経営者は基礎知識をしっかりと身につけておくことが重要だ。各負債の概要や勘定科目をはじめ…続きを読む

返金が発生した場合の仕訳

返金する場合は、自社が金銭を受け取る側、つまり売り主の場合である。取引において支払うべき金額よりも支払った金額が多い場合については、二つのケースの仕訳が考えられる。

入金された金額が多かったり間違って入金された場合の仕訳

まずは、誤って入金があった場合の仕訳の進め方である。以下に具体例を示す。

(1)売上時の仕訳

商品Aを800円で売り、代金は1ヵ月後に振込で入金される取引を行った。

借方貸方
売掛金:800円
売上高:800円

(2)入金時の仕訳

売上から1ヵ月後、取引先から880円の入金があったが、80円多く入金された。

借方貸方
現金預金:880円売掛金:800円
XXX:80円

このXXXにどの勘定科目を入力するかが問題である。前提として、勘定科目の選択はある程度自由なので、必ず使用しなければならない勘定科目はない。企業の状況に応じて、以下の三つのケースのような仕訳入力があるだろう。

1 当該取引先への売掛金が複数存在する場合で、他の売掛金に充当する場合

借方貸方
現金預金:880円売掛金:800円
売掛金:80円

売掛金の一部、または全部の入金として扱う。

2 当該取引先への売掛金は存在しないが、直近予定している取引に充当する場合

借方貸方
現金預金:880円売掛金:800円
前受金:80円

「前受金」として処理しておき、将来の売上高計上のときに消し込む。

3 過入金分を返金する場合

借方貸方
現金預金:880円売掛金:800円
預り金:80円

返金するまでは「預り金」としておく。「仮受金」でもよいが、仮払金や仮受金が決算書に記載されていると、使徒について問い合わせを受ける可能性もある。確実に費用処理ができる目処がないならば、使用しない方が無難である。

そして、返金を行ったときに以下の仕訳を切る。

借方貸方
預り金:880円現金預金:80円

例えば、返金の際に振込手数料が5円かかる場合も同様に仕訳をする。

借方貸方
預り金:5円現金預金:5円
預り金:75円現金預金:75円

一行目の仕訳が銀行への手数料支払いとなり、二行目の仕訳が取引先への送金である。取引先から誤って入金された際に、返金にかかる手数料を負担することがないように注意したい。

取引金額が変更になって返金する場合の仕訳

取引後に金額が変更になったことにより、当初予定していたよりも多くの金額を受け取っている場合は返金が必要である。

また、納品して対価を受領した後に納品物に問題が発生した場合、問題のない納品物を納め直す代わりに、対価の一部を値引きとして返金することがあり得る。なお、問題が生じたことによる損害賠償は返金には該当しないので、ここでは対象としない。

納品物に問題が発覚し、80円を返金する場合の仕訳は以下である。

借方貸方
売上値引:80円現金預金:80円

「売上値引」は売上高の控除項目なので、借方を売上高としても差し支えない。また、この返金の対象となる売上が、当期か前期以前かによる差異はない。

売上高を計上した当初での誤りであれば論点があるが、売上時点では判明していなかった場合は、その値引きの原因となる事象が発生した時点が返金取引の発生時点と考えて会計処理をする。税務申告においても、発生した事業年度の申告書に含めることになる。

取引がなくなって返金する場合の仕訳

取引自体がなくなった場合は、以下のような仕訳となる。

(1)入金時の仕訳

取引条件として前払を求めている企業が、取引を見越して700円を受領した場合は、取引を見越しているため、「前受金」としておく。

借方貸方
現金預金:700円前受金:700円

(2)返金時の仕訳

諸事情により取引がキャンセルされて700円を返金した場合は、(1)で計上した「前受金
」を消し込む。

借方貸方
前受金:700円現金預金:700円

(3)入金時の仕訳

以前取引があった企業から突然700円が誤入金された場合は、特定の取引に関する入金ではないため「預り金」としておく。

借方貸方
現金預金:700円預り金:700円

(4)返金時の仕訳

誤入金であることが判明して700円を返金した場合は、(3)で計上した「預り金」を消し込む。

借方貸方
預り金:700円現金預金:700円

販売した品物が返品された場合の仕訳

取引が変更またはキャンセルされて納品物が返品された場合は、どのような仕訳になるのだろうか。これは商品と売上原価を、どのタイミングで会計処理しているかによって異なる。

まず、代金受領前に売上高500円分の納品物が返品された場合は、以下のように発生時の反対の仕訳を行えばよい。

借方貸方
売上高:500円売掛金:500円

次に、代金を受領した後に物品が返ってきたときの仕訳処理として、以下の二つのパターンを説明する。

(1)販売した300円の商品を売上原価に販売の都度振り替えている場合

借方貸方
商品:300円売上原価:300円

販売物の原価を個別に把握し、販売の都度に売上原価に振り替えているのであれば、返品と同時に、振り替えた処理を修正する必要がある。

(2)月末などに一括して売上原価に振り替えている場合

仕訳なし

この方式の場合、商品や売上原価はその都度把握する必要はない。まず、一括して売上原価に振り替える際には、次のような計算式を用いることなる。

期首商品残高+当期仕入-期末商品残高=売上原価

返品されたものに対しては、期末商品残高を増やして計算することによって売上原価を減少させ、(1)の仕訳と同じ効果を持たせることになる。