資金調達力の強化書
(画像=ELUTAS/stock.adobe.com)

(本記事は、赤岩 茂氏(著、編集)、鈴木信二氏(著、編集)、倉澤芳弥氏(著)、小山淳一氏(著)、茂田雄介氏(著)の著書『資金調達力の強化書』=あさ出版、2022年5月16日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

借入金の知識不足で資金難に陥った社長

サービス業の二代目のC社長は、「資金が苦しいので、決算書を見て判断してほしい」という相談に訪れました。社長は志も高く、資金面の苦労を乗り越えることができれば、さらなる成長が期待できそうです。

しかし、決算書は最悪でした。利益もキャッシュ・フローも出ているのに、借入金がすべて長期のものであり、その返済がキャッシュ・フローを上回っていたからです。

正常な運転資金は5,000万円程度あるものの、その見合いの短期借入金は0でした。現在の金融実務では、正常な運転資金は期日になれば一括返済し、その額を借り換えることができます。

つまり、本来は利息だけを支払えばよかったのに、返済しなくてもよい元金部分まで返済していたのですから、資金が苦しくなるはずです。

「今まで、誰からも借換えを提案されませんでしたか?」

と質問したところ、

「前社長時代に、短期借入金の貸し渋りに合い、それ以来、短期借入金は(恐ろしくって)使っていない。初めて聞いた」

とのことでした。確かに二十数年前の金融危機の時にはこのようなこともありました。本来は時代とともに借入金に関する知識もアップデートすべきなのに、それができていなかったのです。

C社長はすぐに銀行と交渉し、長期借入金の一部を短期借入金にしました。その分、毎月の返済額が減額され、キャッシュ・フローの範囲内に収まったため、資金面の課題が解決し、今まで以上に社業にまい進できるようになりました。

▶︎過去の失敗・成功体験から“正しく”学ぶ

賢者は「歴史」に学ぶべきですし、本質を探究すべきです。本質とは「物事の本来の姿」をいいます。

人間の命はたかだか数十年ですし、その間会社で活躍する時代は半分程度でしょう。その短い期間の中で経験することはそう多いものではありません。

しかし、多くは、自分の経験のみをもとに判断しようとします。そのうえ、自分の経験からすら学ぼうとしない人はさらに多いのですから、うまくいくはずがありません。やはり、過去の様々な経験から学び、人間の営みである歴史観を探究すべきなのです。

資金調達力の強化書
赤岩 茂(あかいわ・しげる)
税理士法人報徳事務所 代表社員・理事長、公認会計士・税理士・情報処理システム監査技術者
法政大学経営学部卒業。在学中に公認会計士第二次試験合格。
卒業後監査法人などの勤務を経て平成元年に独立。
平成14 年、税理士法人報徳事務所を設立。代表社員・理事長に就任。
茨城大学大学院人文社会科学研究科非常勤講師、結城信用金庫員外監事、古河市代表監査委員、人を大切にする経営学会副会長などを務める。
法政大学大学院政策創造研究科客員教授、千葉商科大学大学院商学研究科特命教授、松下政経塾実践経営学講座主任講師、TKC 全国会創業・経営革新支援委員会委員長等を歴任。
著書に『財務経営力の強化書』(あさ出版・共著)、『後継者の仕事』(PHP 研究所・編著)、『「活力ある企業」の条件』(TKC 出版)、『進化の時代を乗り切るための人生と経営の道標』(ラグーナ出版)等多数。
鈴木信二(すずき・しんじ)
税理士法人報徳事務所 代表社員・東京本部長 税理士
横浜国立大学経営学部卒業。埼玉銀行(現りそな銀行)、会計事務所などの勤務を経て、平成6 年独立、平成18 年税理士法人アンビシャス設立、平成28 年税理士法人報徳事務所と合併、現在、同事務所代表社員・東京本部長。
経済産業省ローカルベンチマーク活用戦略会議委員、明治大学専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科兼任講師、TKC全国会中小企業支援委員会副委員長、独立行政法人中小企業基盤整備機構中小企業アドバイザー。
著書に『財務経営力の強化書』(あさ出版・共著)、『後継者の仕事』(PHP 研究所・共著)、『Q&A 金融機関への正しい業績の伝え方のルール』(TKC 出版・共著)など多数。
倉澤芳弥(くらさわ・よしや)
税理士法人報徳事務所 黒字化支援部部長 税理士
埼玉大学経済学部卒業後、旅行会社を経て、税理士法人報徳事務所に入所現在に至る。
小山淳一(こやま・じゅんいち)
税理士法人報徳事務所 お客様支援部第二課長
行政書士・巡回監査士・法学修士・商学修士
青山学院大学経営学部卒業後、出版社、大学院を経て、税理士法人報徳事務所に入所。現在に至る。
茂田雄介(しげた・ゆうすけ)
税理士法人報徳事務所 お客様支援部 研修担当課長
巡回監査士
慶應義塾大学法学部卒業後、外資系損害保険会社を経て、税理士法人報徳事務所に入所、現在に至る。

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