非上場企業の決算内容が知りたい! どうやって調べればいい?
(画像=Rummy&Rummy/stock.adobe.com)

上場企業であれば四半期ごとに「四半期決算短信」と「四半期報告書」が開示されるため、その内容を読めば経営状況の概要を知ることができる。一方、証券取引所に上場していない非上場企業の場合に、決算に関する内容を知る手段はあるのか。

上場企業の場合の決算に関するルール

上場企業に対する四半期決算短信の開示は「証券取引所規則」、四半期報告書の開示は「金融商品取引法」でそれぞれ求められている。決算短信は速報という位置付けで、四半期報告書よりは掲載されている内容は少ない。

ちなみに、岸田文雄首相の意向もあり、この2つの開示書類は将来的に決算短信に一本化される見込みだ。

しかし、これらは全て「上場企業」に関するルールやトピックスである。では、非上場企業は決算を開示する義務はあるのだろうか。開示されているとすれば、どうやってその情報を調べればいいのだろうか。

非上場企業に決算を開示する義務はある?

結論から書くと、非上場企業であっても「決算公告」により決算を開示する義務がある。会社法第440条第1項で、以下のように規定されている。

「株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない」

決算公告を行わない場合には罰則も設けられている。第976条第2号において、公告や通知を怠ったときに過料に処すと定められており、過料の程度としては「百万円以下」だ。

では実際に、非上場企業は決算公告を行っているのか。答えは「否」だ。決算公告で貸借対照表などを公開していない会社がほとんどである。しかし、決算公告を出していないからといって、罰則を受けたという例は聞かない。

実態上、非上場企業が決算公告を出さなくてもお咎めなしになっている。

決算公告を出す方法は?

決算公告を出さなくても実態上はお咎めなしとなっていても、きちんと決算公告を出している非上場企業もある。決算公告を出す方法としては、以下などが挙げられる。

・官報
・日刊紙
・インターネット(自社サイトなど)

「官報」は国が発行している機関誌で、決算公告を出している企業の多くが、掲載先に官報を選んでいる。なお、官報に掲載するには費用がかかる。

官報よりも掲載費用が高めの媒体としては「日刊紙」が挙げられる。日刊紙によっては官報よりも講読者数が多いことから、自社の決算の内容を多くの人に通知できるというメリットがある。

インターネットを利用する方法もある。自社の公式サイトに必要な情報を掲載すれば、決算公告の義務を果たしたことになる。この方法が最も簡単だと言えるが、その場合は過去5年分の決算内容を掲載する必要があるなど、一定の制約もある。

官報から決算公告を探す方法は?

非上場企業によって決算公告を出しているケースと出していないケースがあり、出しているケースの場合は「官報」や「日刊紙」、「インターネット」が利用されていることが分かった。

このうち、官報に掲載される決算公告は、発行される官報に毎回目を通す、インターネット版官報で無料公開されている直近30日分の官報を閲覧する、有料の「官報情報検索サービス」を利用する、のいずれかの方法で閲覧することができる。

付け加えると、有料の官報情報検索サービスは、1947年5月3日の「日本国憲法」施行日以降の官報に掲載されている内容から検索できる。料金は、紙の官報を定期購読している人としていない人で異なる。具体的には以下の通りだ。(料金は月額・税込)

非上場企業の決算内容が知りたい! どうやって調べればいい?

記事検索機能を利用する場合、検索期間を長めに設定して企業名で検索すると、その企業が官報に決算公告を載せていた場合は、直近の決算公告やそれ以前の決算公告がずらりと並ぶことになる。

決算公告で掲載されている内容は?

官報に決算広告を載せている企業の場合、「賃借対照表」のみ、または「賃借対照表」と「損益計算書」の両方が掲載されている。このように2パターンが存在するのは、会社の規模が小さい場合と大きい場合で、載せるべき内容が異なるからだ。

具体的には、「資本金5億円以上」といった要件を満たした企業は大企業に分類され、賃借対照表と損益計算書の両方を掲載する必要が出てくる。

賃借対照表には資産や負債、当期純損益の情報が掲載されており、損益計算書には売上高や販売管理費(販売費及び一般管理費)などが掲載されている。

就職先・転職先の情報を調べる際にも使える

多くの人は官報を読んだことがないと思うが、非上場企業の決算情報を調べる際などに利用価値が出てくる。就職先・転職先が非上場企業で決算情報を容易に調べられない場合も、官報の検索サービスを利用すると情報を見つけられることがある。

日々発行される官報の紙面自体は、インターネットで30日間まで無料公開されているため、イメージをつかむためにも一度、官報のサイトにアクセスしてみてはいかがだろうか。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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