資金調達力の強化書
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(本記事は、赤岩 茂氏(著、編集)、鈴木信二氏(著、編集)、倉澤芳弥氏(著)、小山淳一氏(著)、茂田雄介氏(著)の著書『資金調達力の強化書』=あさ出版、2022年5月16日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

社長の志が、会社の未来を創る

会社の方向性を示し、未来へ向けた革新を行おう

▶︎素早く、自らを変える

非常時に突入した時に、いち早く脱出する会社にはひとつの特徴があります。

それは、「素早く、自らを変える」ということです。

環境を変えようと思ってもそれは無理な注文です。変化に適合するよう、自社を変えていくしかありません。企業経営が「環境適応業」といわれているゆえんでもあります。

コロナ禍に、吉野家がいち早く最少人数で回すことのできるテイクアウト専門店を開店しましたが、このような新店を出すにも一定の資金が必要です。

機動的な資金調達を行えなければ、「素早く、自らを変える」ことはできにくくなります。

このような資金は、次のいずれかの方法で、調達することになります。

機動的な資金調達のためには
●平時にため込んでいた資金を使用する
●新規の借入れや増資、補助金などによって資金調達を行う

▶︎経営革新で“種火”を大きな火へ

「老舗は不断の革新から生まれる」といわれるように、永年続く企業は、戦争や自然災害、疫病などのあまたの困難を乗り越えて今があります。その時々の経営者が様々な困難に対峙しながら、商品を変え、サービスを変え、組織を変え、マーケットを変えて今があるのです。

むしろ、変化こそが常態であり、微細な変化を繰り返しながら大きな革新を実現しているといえます。

経営革新(イノベーション)は、経営者にとっても社員にとっても心理的な負担が大きいものです。しかし、今までずっと商ってきた商材が売れなくなった時に、嘆きあきらめるのか、新たに何かに挑戦するのかで、その企業の生命は変わっていきます。

経営革新を決断できるのは経営者だけですので、経営革新の本質は、経営者の心の革新といえます。経営者の心の眼に映る「現象」をどう読み解き、いかに「本質」を探究していくのか。経営革新の肝はここにかかっています。時代がいかに変わろうと、経営者が企業を変えていくという強い意思をもっていれば、企業は甦っていきます。たとえはよくないかもしれませんが、これは、燃えかすのように見える中にも、しっかりと種火が残っている状態なのです。

▶︎6年で松山藩が200万両返済できたワケ

財政改革者で有名なのは上杉鷹山ですが、幕末の備中松山藩の家老として財政再建を担った山田方谷(ほうこく)は、たった6年間で200万両の借債を返済し、同額の資金をためたといわれています。鷹山の改革には50数年かかっていることから、最大の財政改革者はこの方谷だといっても過言ではないでしょう。

方谷は『理財論』の中で、今までの財政改革者が失敗したのは、財の内に屈したからだと述べています。これは、会社経営でいえば、会計や財務の理屈だけで改革しようとしたということです。

会計・財務はあくまで結果でしかありません。原因そのものを変えていかなければ、改革はおぼつかないのです。方谷の成功の鍵は、「領民の幸福」という大義名分を掲げ、人の考え方・行動を変えていったところにあります。

つまり、経営者が自社のあるべき姿・社会とのかかわり、とくに社会に有用な価値をいかに提供するのかという、自社の存在意義という大義名分を掲げ、それに向かって、経営者の会社に対する「考え方」や企業経営の「あり方」を変え、それによって企業経営の「やり方」を変えていったということなのです。

▶非常時に方向性を示すのが“社長の仕事”

経営者には経営者の資質と力量が必要なのですが、残念ながらそれを教えてくれるところは、そうありません。平時から赤字にせず、非常時にも生き残るには何が必要なのか。

それは、次のことでしょう。

非常時に生き残るには
●ブレない判断基準をもつこと
●歴史観をもとに先を読むこと
●何が何でも関係者を護るという覚悟をもつこと

とくに現在のような大変動期において、一番大切な経営者の仕事とは、自社が向かう方向性を示すことです。

資金調達力の強化書
赤岩 茂(あかいわ・しげる)
税理士法人報徳事務所 代表社員・理事長、公認会計士・税理士・情報処理システム監査技術者
法政大学経営学部卒業。在学中に公認会計士第二次試験合格。
卒業後監査法人などの勤務を経て平成元年に独立。
平成14 年、税理士法人報徳事務所を設立。代表社員・理事長に就任。
茨城大学大学院人文社会科学研究科非常勤講師、結城信用金庫員外監事、古河市代表監査委員、人を大切にする経営学会副会長などを務める。
法政大学大学院政策創造研究科客員教授、千葉商科大学大学院商学研究科特命教授、松下政経塾実践経営学講座主任講師、TKC 全国会創業・経営革新支援委員会委員長等を歴任。
著書に『財務経営力の強化書』(あさ出版・共著)、『後継者の仕事』(PHP 研究所・編著)、『「活力ある企業」の条件』(TKC 出版)、『進化の時代を乗り切るための人生と経営の道標』(ラグーナ出版)等多数。
鈴木信二(すずき・しんじ)
税理士法人報徳事務所 代表社員・東京本部長 税理士
横浜国立大学経営学部卒業。埼玉銀行(現りそな銀行)、会計事務所などの勤務を経て、平成6 年独立、平成18 年税理士法人アンビシャス設立、平成28 年税理士法人報徳事務所と合併、現在、同事務所代表社員・東京本部長。
経済産業省ローカルベンチマーク活用戦略会議委員、明治大学専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科兼任講師、TKC全国会中小企業支援委員会副委員長、独立行政法人中小企業基盤整備機構中小企業アドバイザー。
著書に『財務経営力の強化書』(あさ出版・共著)、『後継者の仕事』(PHP 研究所・共著)、『Q&A 金融機関への正しい業績の伝え方のルール』(TKC 出版・共著)など多数。
倉澤芳弥(くらさわ・よしや)
税理士法人報徳事務所 黒字化支援部部長 税理士
埼玉大学経済学部卒業後、旅行会社を経て、税理士法人報徳事務所に入所現在に至る。
小山淳一(こやま・じゅんいち)
税理士法人報徳事務所 お客様支援部第二課長
行政書士・巡回監査士・法学修士・商学修士
青山学院大学経営学部卒業後、出版社、大学院を経て、税理士法人報徳事務所に入所。現在に至る。
茂田雄介(しげた・ゆうすけ)
税理士法人報徳事務所 お客様支援部 研修担当課長
巡回監査士
慶應義塾大学法学部卒業後、外資系損害保険会社を経て、税理士法人報徳事務所に入所、現在に至る。

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