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目次

  1. デザイン事務所勤務から独立し、30年 商業施設士として多岐にわたる業務を手掛ける また賃貸経営を親の代から継続
  2. 設計・施工は受注型の一点物のオーダーメイド 事業の屋台骨を支える専門家のネットワークと協働 大手の下請けに頼らず、元請けの仕事に徹する
  3. 設計業務はタイムパフォーマンスを重視、3D-CAD導入を見据えて高性能パソコンに更新
  4. 設計初期段階の効率化、スピード化にこだわり、自動設計で効率最優先を実践
  5. 信条は稲盛和夫氏の「六つの精進」
中小企業応援サイト 編集部
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バウ・スペースは群馬県前橋市で商業施設などの設計・施工に加え、不動産賃貸事業を個人事業として営んでいる。事業主体としてきた商業施設などの設計・施工は「トータルデザインプロデュース」を標榜(ひょうぼう)し、発注元のクライアントはもちろん、店舗の利用者、使用者それぞれの立場に寄り添った商空間づくりに徹してきた。個々の案件の求めに応じる受注型の仕事柄、プレゼンテーションなど本契約に至るまでの設計初期段階での作業効率化を最重視する。3D-CADをベースに3Dモデリングと3Dスキャン自動設計を活用して、新たなビジネスモデルの確立を検討している。(TOP写真:高性能ノートパソコンで作業に当たるバウ・スペースの立石憲一代表)

デザイン事務所勤務から独立し、30年 商業施設士として多岐にわたる業務を手掛ける また賃貸経営を親の代から継続

バウ・スペースの立石憲一代表は大学の建築デザイン科を卒業後、前橋市にある建築デザイン事務所に入社し、約12年間勤務した。その後、1995年に独立し、バウ・スペースを立ち上げた。デザイン事務所時代は商業施設の設計を専門に担当し、独立後も商業施設を中心に事業を拡大。2025年に独立してちょうど30年を迎えた。

立石代表は公益社団法人商業施設技術団体連合会が認定する「商業施設士」の資格を持つ。商業施設士は商業施設の企画や設計、運営などを担う専門家で、商業施設の建築計画や設計に加え、工事中の施工管理、建設後の運用、施設内の装飾デザイン、ディスプレイの設計・工事監理など多岐にわたる。

独立後は設計・施工事業は商空間に加えてマンションやアパートを含む住空間の設計・施工のほか、リフォーム、リノベーションにも手を広げ、群馬県全域に加え、埼玉、栃木、長野など隣県での実績も持つ。また、化粧品メーカーの物販店、路面店、ショッピングモール内のテナント店の設計・施工を継続的に担っている。

一方、バウ・スペースにとってもう一つの事業の柱である不動産賃貸事業については、いわば「立石家」の家業として親から引き継ぎ、立石代表が独立してバウ・スペースを立ち上げた理由の一つにもなっている。親の代から数えて通算50年を超える事業であり、前橋市を中心に貸事務所やマンション、アパートを運営している。

現在は立石代表が自ら物件を広げてきたこともあって、主体としてきた設計・施工事業の規模を上回っており、事業の効率化を図るため、物件のスクラップ・アンド・ビルドを進めている。さらに、立石代表は「設計・施工との二足のわらじを履いていては目が行き届かないところもある」として、2024年後半から自社管理を仲介業者による委託管理に徐々に移行している。

設計・施工は受注型の一点物のオーダーメイド 事業の屋台骨を支える専門家のネットワークと協働 大手の下請けに頼らず、元請けの仕事に徹する

左側の1階にバウ・スペースの事務所があるマンション(群馬県前橋市)
左側の1階にバウ・スペースの事務所があるマンション(群馬県前橋市)

専門としてきた商業施設の設計・施工でバウ・スペースの扱う領域は、全国規模でチェーン展開するコンビニエンスストアのように店舗設計の基本モデルがあって、その規格に沿ってそれぞれの立地条件に応じて設計・施工するスタイルとは正反対だ。

立石代表いわく「我々が扱う商売はイレギュラーなケースが多く、極端に言えば日本で唯一といった案件が多い」。いわば受注型の一点物のオーダーメイドであり、その分、「商売には長けているものの、店舗にどういった設備、装置を付けたら良いか、内装はどうするか、さらに看板一つまでも悩む発注元の相談を受ける。それに適切な提案をしてきた結果、顧客がついてきている」と語る。

従業員も特に雇わず立石代表たった一人の個人事業でありながら、30年にわたり設計・施工事業の屋台骨を支えてきた存在は、立石代表が独自に構築してきた人的なネットワークにある。大工や電気工事、塗装の技能士、更に内装のクロス、看板の職人ら商空間・住空間作りに欠かせない、いわば専門家集団によるネットワークを駆使して発注元の要望に応えてきた。

さらに、バウ・スペースのこだわりは大手の下請けに甘んじないで、元請けの仕事に徹してきたことにある。立石代表はこの点を「元請けの責任者としてこの人材ネットワークと協働し、総合的にプロデュースするのが私の役割」と語り、バウ・スペースが掲げる「トータルデザインプロデュース」を文字通り実践してきた。

設計業務はタイムパフォーマンスを重視、3D-CAD導入を見据えて高性能パソコンに更新

バウ・スペースの今後の事業展開について、立石代表は「今まで通り、設計・施工、不動産賃貸の二本柱をより充実した内容にしていく」と語る。その考えを反映するように、2024年12月に国内生産の高性能ノートパソコンに更新した。設計・施工事業についてはこの先、3D-CADの導入を見据えており、設計図など高い処理能力が求められる設計業務においては従来のパソコンより容量をはじめ高いスペックが必要と判断した。

これにより設計・施工案件数の増加につなげるほか、リフォーム、リノベーションについても設計初期段階での作業の効率化を進めたい考えだ。立石代表が導入を検討しているCADソフトでとりわけ注目しているのがiPad、iPhone で3Dスキャンすると3Dモデルが出来るソフト。リフォームやリノベーションする既存物件を撮影したデータを入力すれば、現況図や3Dモデルを自動作成できる点だ。3D-CADとのデータ相互連携により、リフォーム、リノベーションの設計の効率化を加速度的に実現できる。

立石代表は「例えば、2DKや3DKの間取りを1DKにリノベーションする場合、iPadで撮影して自動設計3D-CADに落とし込めば、プレゼンのスタート時に使用する室内概略寸法(W×D×H)を取り込んだ平面図、展開図、内観パースがわずかな時間で起こせてしまう。スピード感が全く違う」とその利用価値の高さを指摘する。立石代表は「このところの建築資材の高騰により新築物件の坪単価も急激に上昇しており、築40~50年の住宅のリフォーム、リノベーションや古民家の再生といった需要は今後増加すると見込まれることから、こうしたツールが有効に活用できる」と見る。

設計初期段階の効率化、スピード化にこだわり、自動設計で効率最優先を実践

「設計の初期段階での作業は効率化、スピード化を最優先に考えている」と強調する立石憲一代表
「設計の初期段階での作業は効率化、スピード化を最優先に考えている」と強調する立石憲一代表

プレゼンテーションを含め設計初期段階の効率化、スピード化に立石代表がこだわるのは、競合とのコンペティションで落選するリスクを考えた場合、長い時間を費やすよりはなるべく短い時間で提案を仕上げた方がリスクは軽減できるとの考えだ。立石代表は「初期段階の作業をスピーディーに進めていれば、仮にコンペに落ちても、即座に思考回路を『次の案件に取り組める』と割り切って切り替えられるからだ」と語る。

この点について立石代表は「我々の商売は受注型の仕事であり、一つひとつ図面を書いて積算し、積み上げた案を『どうですか』と発注元に提示するわけで、その時間はなるべく短い方が良い。仮に1年かかる作業を1ヶ月で仕上げた方が良いわけで、その意味では競合他社が数多い中で勝ち残って無駄なく作業を遂行していくには、やはり設計初期段階はスピーディーで効率最優先の取り組みが不可欠だ。本契約に持ち込めれば収益は確実に見込めるので、なおさら初期段階の効率化が求められる」と強調する。

こうした持論を実践するために活用してきたのが建築設計CADだった。実際、バウ・スペースが建築設計CADソフトを導入したのは独立して5年後の2000年頃で、早い時期から活用している。間取りなどの建築物の基本データから瞬く間に3Dモデルを作成し、各種図面や書類、建築パースなどをワンストップサービスでこなせる。設計初期段階の効率最優先を掲げるバウ・スペースの取り組みにも合致する。さらに、立石代表の持論にも相通じる利用価値の高いツールにも映ってくる。

信条は稲盛和夫氏の「六つの精進」

立石代表は尊敬する京セラ創業者の稲盛和夫氏による「六つの精進」を信条とし、事業運営に対してもその精神を重視し、取り入れているという。①誰にも負けない努力をする②謙虚にして驕(おご)らず③反省のある毎日を送る④生きていることに感謝する⑤善行、利他行を積む⑥感性的な悩みをしない―の6項目で、そのうち特に②、④、⑤に重きを置き、日ごろから徹底して実践している。

その営みは下請けに甘んじることなく元請けの案件にこだわり、協働する専門家集団を束ねるトータルデザインプロデューサーとして、30年間という長きにわたって顧客からの信頼を得て、事業を継続してきた姿に表れているようだ。

企業概要

会社名バウ・スペース
住所群馬県前橋市荒牧町1-30-1
電話027-233-3302
創業1995年
事業内容  「商空間」「住空間」の設計・施工の総合プロデュース、リフォーム、リノベーション、不動産賃貸事業