資金調達力の強化書
(画像=thodonal/stock.adobe.com)

(本記事は、赤岩 茂氏(著、編集)、鈴木信二氏(著、編集)、倉澤芳弥氏(著)、小山淳一氏(著)、茂田雄介氏(著)の著書『資金調達力の強化書』=あさ出版、2022年5月16日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

借入金・増資など、資金調達方法と特徴を知ろう

自社に合った資金調達方法を選択する

▶︎資金調達先によって分類してみると?

資金調達方法には様々なものがあります。

代表的なものとして、金融機関から調達を行う「借入金」や株主から調達を行う「増資」があります。

そのほかにもプロの投資家から調達を行う「投資育成会社」や「ファンド」、最近では、一般の投資家などから調達を行う「クラウドファンディング」の方法も注目を集めています。

新型コロナウイルス感染症の影響で多くの事業者が活用したような国・地方公共団体などから調達を行う「補助金」や「助成金」といった方法もあります。

資金調達は、誰から集めたかによって次のように分類できます。

資金調達先による分類
●金融機関から        → 借入金
●株主から          → 増資
●プロの投資家から      → 投資育成会社・ファンド
●一般の投資家などから    → クラウドファンディング
●国・地方公共団体などから  → 補助金・助成金

▶︎自社のライフステージに合った資金調達を考える

資金調達方法も会社のライフステージ(創業期・成長期・経営改善期)によって以下のように変わってきます。

①創業期に合う方法
民間の金融機関は、創業間もない実績のない会社に対しては返済が不確実と考え、融資には非常に消極的です。そのため創業期の会社では、政府系金融機関からの創業融資や創業補助金、クラウドファンディングなどによる資金調達が適しています。
 例 創業融資、創業補助金、クラウドファンディング

②成長期に合う方法
創業以降、毎期コツコツと黒字を積み重ねていくと、財務基盤も固まり、会社経営が安定してきます。そうした成長過程にある会社に対しては、金融機関も積極的に融資を行います。さらなる成長を目指す会社は、IPO(株式を証券取引所に上場)による資金調達を考えるのもよいかもしれません。
 例 金融機関借入金、IPO、クラウドファンディング

③経営改善期に合う方法
事業が順調にいかず、赤字が続くと財務基盤が脆弱化し、資金繰りも苦しくなり、借入金の返済が滞るおそれが出てきます。

そうした場合には、返済が滞る前に金融機関に相談し、現状の借入金の返済金額や返済期間の見直し(リスケジューリング)を行い、悪化している資金繰りの改善に努めましょう。

また、一時的に債務超過に陥っているが、将来性があり、経営改善の見通しがある場合には、後述する資本性借入金による資金調達も検討すべきでしょう。
例)借入金のリスケジューリング 、資本性借入金

▶債務超過であっても融資可能な借入金も!

債務超過に陥っている会社は、財務内容に問題があると判断されるため、融資が受けにくくなります。債務超過解消のためには、利益を継続して上げ続けるか、増資をして解消するしかありませんが、いずれも中小企業にとっては難しいところがあります。

しかし、一時的に資本不足に直面しているが、将来性があり、経営改善の見通しがある企業にまで、画一的に融資をしないという判断をしてよいものではないはずです。

そこで、こうした債務超過に陥ってしまった会社に対して、借入金でありながら資本とみなす「資本性借入金」というものがあり、金融庁でも、積極的な活用を推進しています。

資本性借入金のメリットは、2つあります。

1つ目は、金融機関が会社の財務状況などを判断する際に、負債ではなく資本とみなすことができる点です。資本性借入金の額は、実質債務超過額の範囲で行われますので、債務超過の解消をはかれ、金融機関からの融資を受けられるようになることが期待されます。

2つ目は、資本性借入金は、原則として期限一括償還であり、月々の支払いは利息のみとなるため、借入金の返済というキャッシュ・アウトが猶予され、その分資金繰り改善に効果がある点です。

資本性借入金の代表的なものとして、日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特例制度があります。詳細は日本政策金融公庫のホームページを参照ください。

資金調達力の強化書
赤岩 茂(あかいわ・しげる)
税理士法人報徳事務所 代表社員・理事長、公認会計士・税理士・情報処理システム監査技術者
法政大学経営学部卒業。在学中に公認会計士第二次試験合格。
卒業後監査法人などの勤務を経て平成元年に独立。
平成14 年、税理士法人報徳事務所を設立。代表社員・理事長に就任。
茨城大学大学院人文社会科学研究科非常勤講師、結城信用金庫員外監事、古河市代表監査委員、人を大切にする経営学会副会長などを務める。
法政大学大学院政策創造研究科客員教授、千葉商科大学大学院商学研究科特命教授、松下政経塾実践経営学講座主任講師、TKC 全国会創業・経営革新支援委員会委員長等を歴任。
著書に『財務経営力の強化書』(あさ出版・共著)、『後継者の仕事』(PHP 研究所・編著)、『「活力ある企業」の条件』(TKC 出版)、『進化の時代を乗り切るための人生と経営の道標』(ラグーナ出版)等多数。
鈴木信二(すずき・しんじ)
税理士法人報徳事務所 代表社員・東京本部長 税理士
横浜国立大学経営学部卒業。埼玉銀行(現りそな銀行)、会計事務所などの勤務を経て、平成6 年独立、平成18 年税理士法人アンビシャス設立、平成28 年税理士法人報徳事務所と合併、現在、同事務所代表社員・東京本部長。
経済産業省ローカルベンチマーク活用戦略会議委員、明治大学専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科兼任講師、TKC全国会中小企業支援委員会副委員長、独立行政法人中小企業基盤整備機構中小企業アドバイザー。
著書に『財務経営力の強化書』(あさ出版・共著)、『後継者の仕事』(PHP 研究所・共著)、『Q&A 金融機関への正しい業績の伝え方のルール』(TKC 出版・共著)など多数。
倉澤芳弥(くらさわ・よしや)
税理士法人報徳事務所 黒字化支援部部長 税理士
埼玉大学経済学部卒業後、旅行会社を経て、税理士法人報徳事務所に入所現在に至る。
小山淳一(こやま・じゅんいち)
税理士法人報徳事務所 お客様支援部第二課長
行政書士・巡回監査士・法学修士・商学修士
青山学院大学経営学部卒業後、出版社、大学院を経て、税理士法人報徳事務所に入所。現在に至る。
茂田雄介(しげた・ゆうすけ)
税理士法人報徳事務所 お客様支援部 研修担当課長
巡回監査士
慶應義塾大学法学部卒業後、外資系損害保険会社を経て、税理士法人報徳事務所に入所、現在に至る。

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