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「なりたい自分」を言語化して、自分のブランドイメージをつくる
フロイトの精神分析で有名なエピソードがあります。
ある女性は、20歳を過ぎても、水をコップから飲めない症状を抱えていました。それは、「幼少の頃に、嫌いな家庭教師が犬にコップの水を与えているのを見た」という記憶が原因になっていたからだそうです。
人は無意識のうちに、何かしらの情報をのせて物事を捉えていて、それは行動に影響を及ぼすほどのパワーを持っています。
このことは、服も同じです。
たとえば、「学校の先生が着ていそうなベスト」と聞いて、多くの人が似たようなベストを思い浮かべるのではないでしょうか。すると、そんなベストを見たとき、「なんか学校の先生が着ていそう」と思うはずです。
この作用を自分に応用すると、服選びがすごく楽に、かつ的確になります。
「自分は○○な人間だ」
「○○な服は今の自分らしい」
このように「なりたい自分」のイメージを言葉にすれば、そのイメージに合わせて服を選べばいいので、服選びの基準が明確になります。
さらに、服選びの基準だけではなく、毎日の行動にも変化が起こります。
たとえば、仕事で「君なら成功するから任せるよ」と言われるのと、「絶対にミスをしないように」と言われるのとでは、どちらが気持ちよく仕事に取り組めるでしょうか。応援されながら仕事をしたら追い風が吹いているような勢いが生まれ、警告されながら仕事をしたら追い詰められるような切迫感を感じるはずです。
このように、言葉の力は思った以上に影響を及ぼすので、「なりたい自分」のイメージを言語化すると、毎日の行動まで変わってくるのです。
私のクライアントで、2代目経営者の男性(40代)がいます。30代の頃は同業他社でサラリーマンとして経験を積み、40代になって晴れて後継者として事業継承したそうです。
しかしこの彼には、ある悩みがありました。
それは、年上の部下と商談を行うと、部下だと思われてしまうことです。また、経営者仲間の間では、「まだサラリーマンみたい」と冗談半分にイジられるそうです。
そこで、「経営者らしく見られたい!」という依頼を受け、買い物に同行しました。
買い物には、普段のスーツ姿で来ていただきました。たしかに一般的なビジネススーツと代わり映えせず、経営者らしさはありません。
そのお客様は「なりたい自分」のイメージがはっきりしていたので、そのイメージ通りのコーデを一緒に探しました。
そのとき、私は彼に「試着している服が、他人にどういう印象を与えるか」をリアルに伝え、経営者らしさをイメージしてもらいました。
たとえば、グレー地にブルーのチェック柄のジャケット、そのチェック柄と同色のスラックス。「こんなジャケットとパンツを着ていたら、サラリーマンではなさそうですよね?」と伝え、イメージを持ってもらいながら服を選んでいきました。
後日、そうして選んだジャケパンで仕事をするようにしたら、部下に間違われることはなくなり、自信もみなぎって、「サラリーマンみたい」と経営者仲間からイジられることもなくなったそうです。
「形から入る」と言うと、メッキだと思う人もいるかもしれません。
しかし、見た目を変えてまわりのリアクションが大きく変われば、自信も芽生えて、そのメッキが本物の金になる可能性が十分にあります。
外見は、いちばん外側にある内面です。見た目を変えるということは、自分の心を整える作業そのものだと私は考えています。
また、「なりたい自分を言語化する」ということは、自分の印象にハッシュタグを付けるようなものです。SNSで頻出する「♯(ハッシュタグ)」とは、投稿の内容を端的に表したもの。これと同じように、自分がなりたいイメージを具体的なキーワードで表現できれば、それをもとに服も簡単に選ぶことができます。
たとえば、定番の紺ジャケットにグレースラックスを選ぶときに、「♯丸の内で働く外資系ビジネスマン風」というテーマを決めて選ぶ場合と、何もテーマを持たずに感覚で選ぶ場合とではその仕上がりがまったく異なります。
「♯丸の内で働く外資系ビジネスマン風」とイメージを持つだけで、ジャケットの紺の青みや、グレースラックスの色味などにもこだわりを持って選ぶことができます。そうして細部まで丁寧に選ぶようにすると、定番のオフィスカジュアルがテーマのある印象に仕上がり、まわりには「いつも雰囲気がある人」という印象を与えることができます。
そんな反応が自信につながって、仕事の追い風になれば、一石二鳥です。