38歳からのビジネスコーデ図鑑
森井 良行
1979年 千葉県出身。日本大学卒業後、一般企業を経て、「ビジネスマンの買い物に同行するスタイリスト」に転身する。これまでのべ4,500人を超えるビジネスマンの買い物に同行し、その実績から東洋経済オンライン・夕刊フジ・日刊SPA!など連載をもつ。現在では、自身が毎週リサーチしている掘り出しアイテムを週アイテム配信する「エレカジ大学」を主催。著作に「38歳からのビジネスコーデ図鑑 真似するだけで印象が劇的によくなる(日本実業出版社)」など計5冊ある。

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好印象は「清潔感」+「存在感」でつくられる

私は、小学生の頃、スクールカーストの下位で地味な毎日を送っていたこともあって、人一倍「よく見られたい」「どうしたら瞬時に人から受け入れられるものか」という悩みと向き合い、その方法を30年以上も考えてきました。

その結果、好印象は「清潔感」と「存在感」でつくられることを発見!

これは、第一印象で「この人いいな」「また会いたいな」と思った人の共通点を探ってたどり着いた結論です。

そして、自分に取り入れるため、最初に取り組んだことは、「清潔感」と「存在感」の言語化でした。それらが好印象の共通点だとわかっても、その正体は曖昧で、目指すべき具体的なゴールがわからなかったからです。

そこで私は、次のように言葉で定義づけをしました。

・清潔感=マイナス要素ゼロ
・存在感=人の記憶に残る

「マイナス要素ゼロ」+「記憶に残る」で80点以上の見た目がつくれます。

このことについて、もう少し詳しく説明していきます。「清潔感があるな?」と感じる人を注意深く(こっそりと)観察していると、ある共通点がありました。それは、「NG要素がない」ということです。

たとえば、シャツの襟えりや袖そでの先にぴしっとアイロンがかかっていたり、靴がピカピカに磨かれていたりするなど、全身の至るところに身だしなみを整えた痕こん跡せきがありました。

そして、逆を考えてみてハッとする気づきがあったのです。

「見た目のマイナス要素は目立つけど、プラス要素は目立たない」ということ。たとえば、黒いジャケットの肩にフケがついていたら、たとえそれが2〜3粒でも、不潔な印象を受けるのではないでしょうか。また、シャツの襟にアイロンがちゃんとかかっていなかったり、袖口がほつれていたりするだけで、くたびれた印象を受けることでしょう。

このように、清潔感とは細部に宿るもの。

その努力に気づいてもらえなくても、「マイナス要素ゼロ」にする必要があり、これが清潔感のスタート地点です。「隠れた努力だからこそ、清潔さが空気感として伝わる」と私は考えています。

清潔感は対人関係において不可欠な前提条件ですが、それだけではマイナスがゼロになっただけです。ゼロをイチ以上にしてはじめて、相手に認知され、好印象につながります。

そこで必要なのが、人の記憶に残る存在感です。

難しく感じるかもしれませんが、存在感は、服やファッションアイテムで簡単に取り入れられます。

全身のコーデに差し色で鮮やかな色のインナーをプラスしたり、さりげない柄の入ったジャケットを羽織るなど、詳しくは後述しますが、方法は無限にあります。

ちなみに、マイナス要素であるフケや袖、襟の汚れは「記憶に残る」という点では作用しますが、好印象につながるとは考えにくいでしょう。

その意味からも、印象をよくするには「マイナス要素ゼロ」+「記憶に残る」が大切です。

好印象を持ったときの反応は「たしかに◯◯っぽいですね」か、「え、◯◯に見えないですね」の2択

記憶に残る存在感を出すために覚えてほしい簡単なコツがあります。

それは、見た目で「マッチング」か「ギャップ」をつくることです。

具体的には、「お仕事はやっぱり○○ですか」というように自分の職業と印象をマッチングさせるか、あるいは「えっ、○○に見えないですね」というようにギャップをつくることを意識します。

あなたの仕事が一般的に華やかなイメージ(Webデザインなど)なら「マッチング」を、堅実なイメージ(公務員など)なら「ギャップ」を印象づけることで相手に覚えてもらいやすくなります。

以前、「マッチング」の印象を提案したときのことです。

Web制作のお仕事をされている男性(40代)は会員制のビジネス交流会で人脈を広げようと考えていました。ところが、名刺交換をしてもその場で終わることが多かったそうです。そこで、「交流会に着ていく服を見直したい」というご依頼を受けました。

初めてお会いしたとき、正直、クリエイティブなイメージが強いWeb系のお仕事をされているとは思いませんでした。なぜなら、「普通のスーツ」を着ていたからです。

華やかなイメージの職業の場合、地味な服では、お仕事の専門性が印象とマッチングしません。そこで、これまでの装いを見直してもらいました。

一般的に、「Web制作=クリエイティブ」と想像する人が多いので、クリエイティブな印象を与える華やかなコーデを提案したのです。

スーツパンツをジャケパン仕様(テーラードジャケット+パンツ)に変え、シャツとジャケットの間に真っ赤なニットセーターを挟みました。あえて派手なニットを取り入れることで、「Web制作」という仕事のイメージを際立たせました。

後日、そのコーデでビジネス交流会に行ったところ、「Web制作のお仕事だからオシャレなんですね」と言われることが増え、そこから仕事がもらえることが増えたそうです。

一方、「ギャップ」を提案したときは次のようなシチュエーションでした。

そのお客様は、電気工事の技術者(30代)として働かれています。

ある日、彼が婚活パーティーに参加したところ、会話のチャンスはあれど、女性からの反応は薄く、体感としては「反応ゼロ」だったそうです。それにともない、ご縁もゼロで落ち込まれていました。

その婚活パーティーでの服装を伺うと、真面目で職人気質な技術者らしいブルーシャツに太めのチノパンを合わせた堅実な印象の服だったのです。

そこで、仕事と印象の間に「ギャップ」をつくるため、白いパンツに紺のジャケット、レモン色のTシャツを合わせたコーデを提案しました。

後日、そのコーデで婚活パーティーに参加。いつも通り「技術系の仕事をしています」と自己紹介したところ、「えっ、そう見えないですね!」という反応を女性からもらい、「カップル成立」にまで至ったということでした。

自己紹介の内容も本人のパーソナリティーも変わっていません。

変わったのは服だけです。

つまり、印象次第で人間関係のスタート地点が大きく変わります。

私は印象のアドバンテージは、トーナメント戦のようなものだと考えています。

第一印象で好印象を持たれたらシード権を得て「決勝トーナメントからのスタート」、第一印象で好印象を持たれなかったら「予選トーナメントからのスタート」です。

どっちが得かは、明らかですよね……!