日清食品 安藤社長
(画像=日清食品 安藤社長)

日清食品(安藤徳隆社長)は1月13日、都内で2022年度基本方針説明会を開催した。

「日清食品が目指す“二刀流経営”とは」と題し、社内スローガンの「100年ブランドカンパニーへの挑戦」(既存事業の深化)、「Beyond Instant Foods」(新規事業の創造)に基づいて、安藤社長が2021年度の振り返り、2022年度の方針、完全栄養食への挑戦――などについて語った。今回は社内スローガン〈1〉「100年ブランドカンパニーへの挑戦」に関連する既存事業について。

〈2021年度振り返り〉
2021年度は基本方針として「『カップめん』復権」を掲げた。コロナ禍の影響が大きかった2020年は内食需要が非常に高まり、即席麺の総需要は59.8億食と過去最高を記録した。その中でも特徴的だったのが、価値が見直された袋麺の伸長だ。一方、カップ麺は前年割れとなった。しかし、日本の即席麺市場ではカップ麺が7割を占めており、カップ麺の伸長こそマーケット全体が活気につながる、と日清食品は考える。強みであるカップ麺の主要ブランド「カップヌードル」が発売50周年、「日清のどん兵衛」と「日清焼そばU.F.O.」が45周年という節目の年でもあった。

2021年度の結果は、「カップめんの復権」を成しえたとのこと。「カップヌードル」は5期連続で過去最高売上を更新できる見込みで、「日清のどん兵衛」も7期連続で過去最高売上を更新できる見込みだ。「日清焼そばU.F.O.」は、「全国シェアNo.1」だったものを、「圧倒的No.1ブランド」へ成長しているほど好調だ。

〈カップヌードル50周年企画〉
日清食品は特にここ3年、定番商品の強化を図ってきた。「レギュラー」「シーフード」「カレー」「チリトマト」までが「四天王」と呼ばれていたが、それに加え、「ネクストスタンダード」として「欧風チーズカレー」「しお」「味噌」「旨辛豚骨」までの「八福神」を「カップヌードルの定番」として盛り上げてきた。その結果、定番商品の売上は前期比110%となった。

50周年を盛り上げる前段階として、2年ほど前からSM(スーパーマーケット)などでの「棚一本カップヌードル化」プロジェクトを進めてきた。当初は無謀な計画と思われたが、2021年下期は全国4,000店舗以上(前期比67%増)で展開するなどSMから評価を得た。このプロジェクトによって、「カップヌードル」に限らず即席麺売場全体の顧客滞在時間が増え、カップ麺全体の売上が上がったというデータもある。こうしたデータを提示することで、今後もSMとのWin-Winの関係を作ることができると考えている。

さらに昨年8月には、「9番目の新定番」である「カップヌードル辛麺」を投入した。近年トレンドの激辛ブームに注目して、カップヌードルブランドから「旨辛の新定番」として発売したものだ。プロモーションにおいても、若年層ユーザーを取り込むべく、テレビCMではTikTokで話題になっていたアニメーションダンスを取り入れ、テレビCM好感度ランキング1位を獲得した。そうした宣伝効果が奏功し、2021年度の計画比50%増の勢いで売れ続けている。

日清食品「カップヌードル辛麺」
(画像=日清食品「カップヌードル辛麺」)

50周年を代表する商品として話題になったのが、8つの定番フレーバーから2つを組み合わせた「カップヌードル スーパー合体」シリーズだ。全28通りもある組み合わせの中から、選び抜かれた4つを厳選し、これまでありそうでなかった「合体」フレーバーを発売した。毎年、カップヌードルバースデーの時期にはバースデーパッケージを発売しているが、今回は異なる商品施策とウェブCMが若年層を中心に話題となり、従来の企画商品に比べ20%増と大好評だった。

日清食品「カップヌードル スーパー合体」シリーズ
(画像=日清食品「カップヌードル スーパー合体」シリーズ)

「カップヌードル」50周年にあたり、様々な切り口からブランドの露出を増やす取り組みを行った。まずは若者。特に若い女性と「カップヌードル」との距離を縮めるため、ファッションブランドとのコラボ企画を実施した。ラフォーレ原宿・渋谷パルコのさまざまなブランドとコラボレーションし、「カップヌードル」のモチーフをあしらったアパレルやアクセサリーを販売した。例えば、フリーズドライのエビが背中に大きくプリントされたスウェットや、カップヌードルロゴ入りジャージが即完売した。「カップヌードル」を少しでも身近に感じてもらいたいとの考えだ。

また、「カップヌードル」のポーチが付いたブランドムック本が宝島社から発売され、即完売・重版が決定した。宝島社の食品系ブランドコラボの中で過去最高の売上を記録したとのことで、現在もレギュラーとシーフードデザインの加湿器付きムック本が発売されている。

さらに身近なものとして、「うまい棒」とコラボを実施した。「カップヌードル」の定番8品の味を全て再現し、ノベルティとしてプレゼントする企画をECサイトで行ったところ、対象商品の売上が77%増まで伸びた。

「うまい棒」とコラボを実施、「カップヌードル」定番8品の味を再現
(画像=「うまい棒」とコラボを実施、「カップヌードル」定番8品の味を再現)

さらに奇抜なコラボとして想像の斜め上を行く仕上がりになったのが「カップヌードルソーダ」だ。「カップヌードル」の味わいを忠実に再現した上で甘いソーダに仕上げた。発表後すぐ、テレビ番組やYouTube、SNSなどで紹介されるなど注目され、Amazonでは販売当日に完売するほどだった。

日清食品「カップヌードルソーダ」シリーズ
(画像=日清食品「カップヌードルソーダ」シリーズ)

2021年6月からは「カップヌードル」の蓋止めシールを廃止し、蓋の形状をWタブに変更した。これによって年間33tのプラスチック削減に繋がったが、環境問題も日清食品はエンタメ化して話題を図った。Wタブを猫耳に見立て、蓋の裏に猫の顔をあしらったデザインが人気となり、SNS中心に拡散され、売上も好調に推移したという。

テレビCMも好調で、直近12か月だけでも好感度ランキング1位を11回獲得した。「当社のユニークなCMに対してお客さまからの期待値も上がっている。こうしたCM効果は商品の売上増だけではなく、日清食品グループ全体のブランドイメージ向上にも繋がってきている。今後も日清食品らしいユニークな取り組みを追求していきたい」。

〈2022年度方針と3月新商品〉
【カップヌードルPRO】
コロナ禍による内食需要増の中で、“プチ贅沢志向”が加速している。日清食品ではそのニーズに応えるべく、2022年度にかけてインスタントラーメンも「少し高いけど、ちょっといい」という付加価値型商品を充実させていく方針だ。2021年4月に発売した「カップヌードルPRO 高たんぱく&低糖質」は、通常の「カップヌードル」と全く遜色ない美味しさのまま、“高たんぱく”で“低糖質”という点が健康意識の高い消費者を中心に評価された。1食当たりたんぱく質15gかつ糖質50%オフという国内初のたんぱく質強化カップ麺で、通常の商品より割高にも関わらず、好調な販売実績となっている。テレビCMについても、YouTubeで若者の間で人気のアニメーションを採用し露出を図った。

「カップヌードルPRO 高たんぱく&低糖質」の大きな特徴が高い新規ユーザー率で、既存商品との棲み分けができている。糖質を抑えるために「カップヌードル」から距離を置いていた層が、「糖質50%オフなら」と再購買するきっかけとなった。そのため、リピート率も「カレー」に匹敵するほど高く、売上(2021年出荷見込み)は当初計画比で200%となる見込みだ。

そして、3月21日には「レギュラー」「シーフード」に続く第3のフレーバー「チリトマトヌードル」を発売する。「カップヌードルPRO 高たんぱく&低糖質」の多くのユーザーから、新フレーバーの要望が多く寄せられた中でも、女性人気の高い「チリトマト」を第3弾に選んだ。

【日清の最強どん兵衛】
3月28日には「日清のどん兵衛」からも高付加価値型商品「日清の最強どん兵衛 きつねうどん」「日清の最強どん兵衛 かき揚げそば」を発売する。

「日清の最強どん兵衛 きつねうどん」「日清の最強どん兵衛 かき揚げそば」
(画像=「日清の最強どん兵衛 きつねうどん」「日清の最強どん兵衛 かき揚げそば」)

「きつねうどん」は高い評価を得ているお揚げをジューシーにして、厚さは従来の130%。麺は日清食品の独自技術によって、「もっちもちで美味しい極太麺」にした。つゆはリッチに6種類の合わせだしを初めて採用し、昆布の後引く旨みが特徴だ。七味も長野県の老舗「八幡屋礒五郎」の「特製ゆず七味唐辛子」を搭載し、ゆずの上質な香りが特徴。

「かき揚げそば」は、通常の天ぷらではなく、「超ぶ厚い“鬼かき揚げ”」を使用し、厚さは従来の150%。「食べ応えだけではなく、玉ねぎの甘みによって噛めば噛むほど美味しい仕上がり」となった。麺も独自技術を使って太くて美味しい新太そばを開発した。つゆは「きつねうどん」とは異なる6種類の合わせだしを採用し、鰹節としょうゆの華やぐ香りが特徴だ。七味は浅草の老舗「やげん堀」の「特製七味唐辛子」を採用。

麺、具材、だし、七味の“すべてが主役”のこだわり抜いた商品と自信を覗かせる。パッケージも単に「最強」とするのではなく、若年層がよく使用する「最&強」にした。通常、和風めんは年末にかけて大きな山場となるが、3月にこの商品を発売することで春先にかけて「もう一山」の実績を作り、スタートダッシュをかけたい考えだ。

【袋麺と爆裂シリーズ新商品】
袋麺でも付加価値型のラインナップを強化していく。「お椀で食べる」シリーズはシニアユーザーのニーズを取り込み順調に売上が伸びている。2022年度も引き続き強化していく考えだ。

3食パック袋麺「日清これ絶対うまいやつ!」は若い世帯をターゲットに、“濃くてうまい”味わいの袋麺をコンセプトにしたところ、2020年のヒット商品になった。2021年9月に「塩」フレーバーを発売し、今後も注力していくという。

3食パックの「チキンラーメン キャベサラダ」は、「チキンラーメン」を砕いてサラダと一緒に食べる商品だが、コロナ禍で内食需要が増えるなか、「野菜嫌いの子どもたちにもっとモリモリ野菜を食べてもらいたい」という主婦のニーズに応え、生鮮売場でのクロスMD(マーチャンダイジング、関連する異なるカテゴリーの商材を一カ所の売り場に集めて販売する手法)が非常に好調だ。こちらも2022年度はさらに伸ばしていきたい考えだ。

2021年に発売した1食入り袋麺「日清爆裂辛麺」は、1食あたり150円と割高ではあるが、「カップヌードル 辛麺」と同様に、激辛ブーム+アレンジの利く袋麺ということで多くの反響を呼んだ。現在は「日清爆裂辛麺 極太激辛ラーメン」「日清爆裂豚道強ニンニク醤油ラーメン」「日清爆裂辛麺 韓国風 極太大盛激辛焼そば」の3種類を投入しており、売上(2021年度出荷見込み)は計画比で20%増と好調に推移している。

「日清爆裂まぜ麺 極太濃厚台湾まぜそば」
(画像=「日清爆裂まぜ麺 極太濃厚台湾まぜそば」)

3月7日には第4のフレーバーとして「日清爆裂まぜ麺 極太濃厚台湾まぜそば」を発売する。日清食品史上最も太く、もっちりとした食べ応えがある麺を使用。ガッツリとしたニンニクと魚粉の旨みをきかせた台湾まぜそばの液体スープが付いており、食べ応え抜群の商品だ。

【2022年度方針総括】
スタンダードラインの「カップヌードル」「日清のどん兵衛」「日清焼そばU.F.O.」「チキンラーメン」という収益ブランドを盛り上げていくために、付加価値型製品と価格コンシャス製品をうまく使っていかなくてはならないと安藤社長は語る。

2022年度の付加価値型製品では「カップヌードルPRO高たんぱく&低糖質」や「日清の最強どん兵衛」など、「プチ贅沢」なラインナップをカテゴリとしてしっかり伸ばすと同時に、価格コンシャス製品については、お手頃価格の「あっさりおいしいカップヌードル」や「日清のあっさりおだしがおいしいどん兵衛」、女性向けの「日清焼そばU.F.O.ペロリ」「日清のラーメン屋さん」などの商品群を効果的に使っていくとしている。

〈米麦日報2022年1月21日付〉