(本記事は、田村 隆明氏の著書『お酒を120%楽しむ!』=東京化学同人、2020年4月6日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
健康面の利点がこんなにも。すごいぞ,本格焼酎!
科学的証拠に基づいて判断するならば,健康にとって最も良いお酒は本格焼酎です。有効成分は不明ですが,最近,本格焼酎や泡盛に血液をサラサラにするといわれるt-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)を活性化する働きのあることが明らかにされました。加えて本格焼酎にはt-PA の血中濃度を高めたり,血液凝固反応のきっかけとなる血小板の血管内凝集という現象を抑える効果もあります。t-PA は血中のプラスミノーゲンをプラスミンにし,プラスミンは固まった血液,つまり血栓を溶かすことにより,血栓症,心筋梗塞,脳梗塞といった虚血性疾患の防止に働きます。
他のお酒にも虚血性疾患を防ぐ一般的な効果がありますが,なかでも特に効果が大きいのが本格焼酎で,Jカーブ効果でもその効果が明確に見てとれます。しかもこれらの効果,芋焼酎と泡盛でその効果が大きいといわれています。飲んで効果があるのはもちろんのこと,香りを嗅ぐだけでも血液サラサラ効果があるそうで,有効成分は揮発性物質なのでしょうか?
本格焼酎には善玉コレステロールを上げて悪玉コレステロールを下げる効果があり,動脈硬化,高脂血症に対する予防効果が期待されているほか,芋焼酎の香り成分になっている揮発性成分のリナロールにはリラックス効果があるといわれています。飲んでも香りを嗅ぐだけでも良いということですね。
本格焼酎は糖質を含まないので糖尿病にとって良いのではないかと以前から期待されていましたが,最近これを支持する研究結果が発表されました。焼酎が他のお酒と何が違うかといえば醸造にクエン酸を多くつくる黒麹や白麹を使うことですが,これが何か体に良い成分を醸(かも)し出しているのかもしれません。いずれにせよ,本格焼酎は香りの良さに加え,カロリーが少なめでプリン体もなく,悪酔いや二日酔いになりにくいといわれて人気がありますが,健康にも良いとなれば今後さらに人気が出そうです。