お酒を120%楽しむ!
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(本記事は、田村 隆明氏の著書『お酒を120%楽しむ!』=東京化学同人、2020年4月6日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

世界の五大ウイスキー

ウイスキーの主要生産国とそのタイプは,スコットランドの「スコッチウイスキー」,アイルランドの「アイリッシュウイスキー」,アメリカの「アメリカンウイスキー」,カナダの「カナディアンウイスキー」,そして日本の「ジャパニーズウイスキー」で,これを世界の五大ウイスキーといいます(表12)。

『お酒を120%楽しむ!』より
(画像=『お酒を120%楽しむ!』より)

スコッチウイスキー

蒸留所はイギリスに100箇所以上ありますが,その多くはスコットランド北部のハイランド,スコットランド南部のローランド,キンタイアー半島のキャンベルタウン,そしてアイラ島の4箇所に集中しています。スコッチウイスキーは伝統的に麦芽の乾燥にピート(泥炭)が使われ,アイラ島のモルトウイスキーのようにピート香が明確なものが多いですが,最近はピート香を抑えたものも増えています。重厚な味に仕上がる2回蒸留が中心ですが,なかには軽快な味にするため,蒸留を3回以上行っているところもあります。ピート香はフェノールという揮発性物質に由来しますが,この物質の量によりライトピート,ミディアムピート,ヘビーピートに分類されます。

アイリッシュウイスキー

アイリッシュウイスキーはモルト原酒にグレーンウイスキーをブレンドするという方法で造られ,木製容器で3年以上貯蔵されます。モルトウイスキー製造に未発芽の大麦とライ麦,そしてピート処理を行わない麦芽を使って蒸留を3回行うため,麦が香る軽くまろやかな風味になります。

アメリカンウイスキー

アメリカンウイスキーの中で最もよく知られているのはバーボンウイスキーです。原料の51~80%程度がトウモロコシで,連続式蒸留でアルコール80%以下の蒸留液を集め,それを内部を強く焼いたアメリカンホワイトオークの新樽で2年以上熟成することが決められており,他のウイスキーとは明確に異なる香味をもちます。トウモロコシ(またはライ麦)の比率が高いと柔らかい(または油を感じる)酒質になります。トウモロコシが80%を超えるものをコーンウイスキーといいます。仕込み時に蒸留かすの上澄みを少し加えるサワーマッシュというバーボン特有の工程がありますが,この工程によって麦芽による糖化が良くなり,酵母の栄養にもなるので,できる原酒の香味が良くなります。ちなみにバーボンの名はケンタッキー州の郡の一つ“バーボン(Bourbon)”に由来しますが,この土地の名は,アメリカ独立戦争でアメリカに味方したフランスのブルボン(Bourbon)王朝に敬意を表してつけられました。

『お酒を120%楽しむ!』より
筆者愛飲のバーボン日本未発売? (画像=『お酒を120%楽しむ!』より)

高温で貯蔵するために色が濃く,甘く香ばしい樽香があります。日本に入ってきているバーボンウイスキーの大部分は,樽詰め時のアルコール濃度が62.5% 以下で2年以上貯蔵された“ストレートバーボン”です。テネシー州で造られるバーボンスタイルのウイスキーはテネシーウイスキーといい,原酒を楓(かえで)の炭でろ過するのでソフトな香味になります。

カナディアンウイスキー

連続式蒸留によって造られる二つのタイプの原酒,すなわちトウモロコシが原料で軽快な香味の原酒“ベースウイスキー”と,麦が原料で複雑な香味のきいた原酒“フレーバリングウイスキー”をブレンドして造られます。クセのないクリーンなベースウイスキーの比率が高く,使用済みの樽で熟成させるため,軽快で穏やかな味わいになります。
ジャパニーズウイスキーについての詳細は、本の中で説明があります。

お酒を120%楽しむ!
田村 隆明
1952年秋田県生まれ。1974年北里大学衛生学部卒。1976年香川大学大学院農学研究科修了(農学修士)。医学博士(慶應義塾大学)。慶應大学医学部助手、フランスストラスブール第一大学博士研究員、基礎生物学研究所助手、埼玉医科大学助教授などを経て、1993年から2017年まで千葉大学理学部教授。専門は分子生物学、遺伝子科学、遺伝子工学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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