お酒を120%楽しむ!
(画像=Naturalboxphoto/stock.adobe.com)

(本記事は、田村 隆明氏の著書『お酒を120%楽しむ!』=東京化学同人、2020年4月6日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

ビールをおいしく飲むには?

1 .ビールを爽快に飲もう

エールやラガーなどのスタイルにかかわらず,温暖多湿の日本で主流になっているビールは爽快感が最大の売りになっています。これらのビールは劣化しやすいので,できたてを味わうのが一番です。ビール工場で飲むビールがおいしい訳はここにあります。

『お酒を120%楽しむ!』より
チェコの『ブドヴァイゼル・ブドヴァル』の工場見学の後で試飲。今もアメリカの『バドワイザー』と商標を争っているらしい (画像=『お酒を120%楽しむ!』より)

爽快感を味わうために当然冷やしますが,冷やしすぎはビールの味がわかりにくくなり,泡もできにくくなります。おいしく飲むには泡を上手に利用することが重要です。ビールの泡はタンパク質と苦味成分のイソフムロンがつながった物質が炭酸ガスの気泡の周りについたものです。泡には,ビールが空気に触れて味が落ちたりビールから炭酸ガスが逃げるのを防ぐ効果,そして苦味成分を吸着して味をマイルドにする効果があります。キメ細かく厚みがある泡が良いとされ,泡がうまくできたビールが「あれッ? 苦くない!」と感じられるのはこのためです。泡もビールの一部ということですね。泡ができないように斜めにしたグラスに最初から最後までソ~ッと注ぐ人がいますが,これはダメです! 最初は勢いよく注いでグラスの高さの3割ほどの泡の層をしっかりつくり,その後グラスを斜めにしてゆっくり注ぎましょう。グラスが汚れていると泡が消えやすいのでグラスはきれいにしておく必要がありますが,意外にも,洗って水切りしたばかりの水がついたグラスのほうがうまく泡ができるそうです。きれいなグラスであれば泡が触れたグラス内部に“泡のリング”が残るはずです。観察してみてください。なお,苦味が持ち味のIPAなどでは苦味を十分感じられるよう,逆に泡ができないように注ぐほうが良いそうです。

2 .ビールグラスを選ぶ

ビールグラス(ビアグラス)を飲みやすさ,香りの感じやすさ,泡のできやすさなどを考えて使うと,ビールがもっとおいしく味わえます。爽快さを求めるのであれば,のどにビールが流れ込みやすい背の高いグラスが良いでしょう。ビールを勢いよく注げるので,きれいな泡がたっぷりでき,泡の効果で香りを閉じ込めることもできます。さらに口がすぼんでいると泡が圧迫されるので消えにくくなり,香りがいっそう持続するようになります。上部が膨らんでいるグラスにも香りを蓄える効果があります。華やかな香りを顔全体で感じたい場合には,お椀の形をした聖杯形という口の広いグラスが適しています。他方,デリケートな香りを感じとるには,香りをグラスに閉じ込めるとともに,飲むときに鼻で香りを直接感じられるようなチューリップ形が適しています。口がすぼまっているので泡もしっかり残り,香りを閉じ込めることができます。IPA専用グラスは底にくぼみがあって飲むたびに泡を復活させるので,最後まで香りを楽しめます。ビールバーのなかには個々のビールのスタイルに合わせてグラスを変えているところもあります。図に代表的なビールグラスをあげました。

『お酒を120%楽しむ!』より
(画像=『お酒を120%楽しむ!』より)

おいしくなったノンアルコールビール

アルコール分が0~1%未満までのビール風味の清涼飲料はビールテイスト飲料などとよばれますが,定まったよび方はなく,一般には,いまだに“ノンアルコールビール”とよばれていますね。

アルコール分が0.4%でも四捨五入されて0%と表示され,完全にゼロである保証がないため,以前はノンアルコールと表示してあっても厳しい目で見られていました。しかし最近は0.00%などと完全ゼロを強調した商品が市民権を得て,ドライブインにも置かれるようになっています。

ノンアルコールビールの製造法には,
① 膜を通して小さな物質を除く透析の原理でビールからアルコールを除くか,あるいはそのまま希釈する
② ビール醸造をアルコール1%未満で止める
③ 単なる清涼飲料水に味付けする
④ 麦汁や麦芽エキスにいろいろな成分を加える

などの方法があります。最初の方法が一番味は良いのですが,日本ではいったんアルコールができてしまうとその後除いても“酒”扱いになってしまって「法的に問題あり」となるため,おもに最後の方法でつくられています。一昔前のノンアルコールビールはまずく,とてもビールといえる代物(しろもの)ではありませんでしたが,最近はかなりおいしくなってきましたね。

お酒を120%楽しむ!
田村 隆明
1952年秋田県生まれ。1974年北里大学衛生学部卒。1976年香川大学大学院農学研究科修了(農学修士)。医学博士(慶應義塾大学)。慶應大学医学部助手、フランスストラスブール第一大学博士研究員、基礎生物学研究所助手、埼玉医科大学助教授などを経て、1993年から2017年まで千葉大学理学部教授。専門は分子生物学、遺伝子科学、遺伝子工学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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