お酒を120%楽しむ!
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(本記事は、田村 隆明氏の著書『お酒を120%楽しむ!』=東京化学同人、2020年4月6日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

ワインの味の評価と表現

1.味の評価基準と表現法

“同じものは二つとない”といわるほど個性的なワインですが,基本的な味の評価は,赤ワインであれば重い,つまりタンニンが多くアルコール感とコクが濃いか,軽い,つまりタンニンが弱く軽快かにより,重いほうから順にフルボディ,ミディアムボディ,ライトボディに分けられます。他方,白ワインは,甘口,辛口と甘さで判断されます。甘さの感じ方はおもに糖度で左右されますが,酸味も関係します。ワインの味は甘み,酸味,渋み,アルコール度のバランスで決まり,バランスが良いとまろやかでおいしく感じられます。味の判断基準にはこのほか,きめ,キレ,のどごしがあります。味の全体的印象を表す言葉には「エレガント」,「力強い」,「香ばしい」,「フルーティ」などがあり,より具体的には「ナッツのような」,「ミネラル感のある(白)」,「肉のような(赤)」,「スパイスのきいた」,「石灰のきいた(白)」や「レースのような」,「きめ細かい」などということもあります。熟成が進んでいないワインは「若い」,「青い」,「生の」などと表します。

2.香りの表現法

ワインを特徴づけるのは味だけではなく,香りもあります。香りにはワインそのものに鼻を近づけたときに感じる香りアロマと,ワインを空気に触れさせた時に感じる香りブーケがあります。アロマはワイン本来の果実香や発酵で生まれる香りで,ブーケは空気との相互作用で生じるいわゆる“開いた”香りです。香りの表現として,アロマは赤ワインでは果物(木イチゴ,カシスなど),花(スミレなど),スパイス,野菜などにたとえられ,白ワインでは果物(ライム,青リンゴなど),ハーブ(ミント,バジルなど),花(リラ,バラなど)などにたとえられます。ブーケの表現として,赤ワインでは枯葉,紅茶,腐葉土などが,白ワインでは白カビ,トリュフなどのキノコ,アーモンドなどがあります。ワインの香りと味はきわめて多様で複雑なため,それを的確に伝えるためには敏感な舌と鼻に加えて上のようないくつかの語彙(ごい)が必要です。上手に使いこなしてワイン通といわれるようになりましょう!

3 .ワインの味わいや品質は何で決まるの?

ワインの品質を決める要因は四つです。一つ目はブドウです。清酒と比べるとよくわかりますが,ワイン醸造はプロセスが比較的単純でブドウが唯一の原料なため,お酒の品質は必然的にブドウ自身,つまりブドウの品種と出来に依存することになります。良いブドウは良いワインの大前提であり,劣悪なブドウからはどんな名人でも良いワインは造れません。いいかえれば,ワイン造り名人はブドウづくりの名人でもあるのです。二つ目ですが,同じ品種のブドウでも栽培地区(テロワール)や畑(ミクロクリマ)が違えばブドウの出来も変わります。三つ目は気候です。上記二つがいくら良くとも,気候が悪ければ良いブドウはできません。ワインも最後はお天気頼みということですね。ブドウが育った年をビンテージといいますが,ワインでビンテージが注目されるのはこのためです。近年では,温暖化の影響でブドウ栽培に適した地域が北に移っているそうです。四つ目の要因は造り手で,ワインの品質はブドウ栽培や畑の管理,醸造の手順やノウハウ,そして醸造家の努力といった人的な要因で左右されます。現在は醸造過程の機械化や自動化が進み,人的要因の重要度は低くなっているそうですが,それでもやはり最後の決め手は人間なんですね。

お酒を120%楽しむ!
田村 隆明
1952年秋田県生まれ。1974年北里大学衛生学部卒。1976年香川大学大学院農学研究科修了(農学修士)。医学博士(慶應義塾大学)。慶應大学医学部助手、フランスストラスブール第一大学博士研究員、基礎生物学研究所助手、埼玉医科大学助教授などを経て、1993年から2017年まで千葉大学理学部教授。専門は分子生物学、遺伝子科学、遺伝子工学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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