(本記事は、加瀬 英明氏の著書『日本と台湾 なぜ、両国は運命共同体なのか』=祥伝社、2022年11月11日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
台湾人が一番尊敬する国とは
台湾で、20歳以上の1000人を対象にして行なったアンケート調査によれば、「尊敬する国」という質問に対して、1位が日本、2位がアメリカ、「旅行したい国」「移住したい国」という質問に対しても、それぞれ日本が1位、2位がアメリカだった。「留学したい国」は、アメリカが1位で、日本が2位だった(台湾『遠見(ユエンチエン)』誌2006年7月号による。『遠見』は台湾の古い月刊の政治雑誌)。
2012年に、台湾の「金車教育基金」が「学生の国際観」について、1425人の高校生と大学生を対象として、調査を行なっている。
台湾にとって「もっとも友好的な国家」は、56.1%が日本と回答して、やはり一位に挙げられ、アメリカが2位で続き、「もっとも非友好的な国」は、87.9%が中国で1位、2位が韓国で47.4%だった。
台湾人のなかには、子供のころに父母や、祖父母から「日本は素晴らしい国だ」「日本人を見習うべきだ」と聞かされて、育ったという者が多い。
台湾で「日本式(イルベンス)」といえば、人が「律気である」「約束を守る」「騙(だ)まさない」「信用できる」「マナーが正しい」という意味で使われているが、「中国式(チユングオス)」といえば、その正反対となる。この二つの言葉は、台湾の人々の日常会話のなかで、よく用いられている。
今年(2013年)、台北を訪れて、台湾の親しい友人たちと、屈託(くったく)のない時間を過ごすことができた。
宴席で隣りに座った、台湾の著名な経済人の夫人で戦後生まれの女性が、日本語はたどたどしいものの、「素晴らしい、嬉しい、美しい」という両親から覚えた日本語を唱えてみせてから、童謡の「夕焼け小焼で、日(ひ)が暮れて…」「モモタロさん、モモタロさん、お腰につけたキビダンゴ…」「ねんねんころりよ、おころりよ…」と、日本語で正しく歌ってくれた。「幼いときに、両親がいつも歌ってくれました」と、話してくれた。
台湾の観光局(日本の観光庁に当たる)によれば、2012年に台湾から156万人が日本を訪れたが、日本から台湾への訪問者は149万人だった。台湾の人口は日本のおよそ5分の1であるから、人口当たりにすれば、日本を訪れる台湾の観光客は、台湾を訪れる日本人の5倍に相当する。事実、日本を訪れる観光客は、台湾が世界でもっとも多い。
多くの台湾人が、自らを「愛日家(アイジツカ)」だとしばしばいう。この「愛日家」という言葉は、ひろく用いられている。
台湾は日本にとって、もっともよき隣邦だ。これほどまで、日本に対して好意をいだいている国は、世界に他にない。
どうして、台湾の人々は、これほど日本を大切にしてくれるのだろうか。