台湾人のなかには、子供のころに父母や、祖父母から「日本は素晴らしい国だ」「日本人を見習うべきだ」と聞かされて、育ったという者が多い。
(画像=cil86/stock.adobe.com)

(本記事は、加瀬 英明氏の著書『日本と台湾 なぜ、両国は運命共同体なのか』=祥伝社、2022年11月11日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

台湾の自立こそが、日本を救う

2013年4月に、台北において、「日台漁業協定」が結ばれた。尖閣諸島周辺の日本の排他的経済水域(FEZ)の一部において、台湾漁船の操業を認める、画期的な協定となった。というものの、日本統治時代には、台湾漁民が日本国民として自由に操業できたのだから、日本が独立を回復した後に、同じ日本人だった台湾人に配慮して、すぐに認めるべきだった。

日台は、運命共同体としての絆によって結ばれている。日本は台湾を「もう一つの日本」とみなして、台湾経済を援(たす)けることに努めなければならない。日台間に、FTA(自由貿易協定)を結ぶべきである。そして、日台が東シナ海の海底ガス資源の共同開発に、取り組むことを提起したい。

日本は中国に対して、台湾に対する武力攻撃を容認しないことを、はっきりと表明するべきである。

日本にとって、日台関係を公的なものとすることが、何としても必要である。また、そうすることによって、日本が台湾を中国と別個の存在として扱うことによって、台湾国民を励ますことができる。

日台断交後、日本政府は台湾があたかも地図のうえに存在していないかのように、対応してきた。日本の存亡に目を瞑(つむ)ってきたのと、同然だった。このような不自然な状況を、急いで正さなければならない。

アメリカは米台断交に当たって、議会が米台関係法(TRA)を立法することによって、その後の米台関係を支えてきた。台湾関係法は、台湾の「平和と安定は、合衆国の政治、安全保障および経済的利益に合致し、国際的な関心ごとであることを宣言する」と、うたっている。

アメリカの台湾関係法から30年以上も遅れることになるが、日本の国会が一日も早く、台湾関係基本法とでも呼ぶものを制定するべきである。

台湾はほとんどの国際機構から、除(のけ)者とされている。2013年に入って、アメリカ議会で、世界の民間航空の安全運航を管理する国際民間航空機関(ICAO)から、台湾が除外されてきたことについて、政権に対して台湾の加盟をICAO加盟諸国に認めさせるよう、働きかけることを義務づける、ロイス法が可決され、7月にオバマ大統領が署名した。日本も、台湾の国際地位を高めるために、台湾がすべての主要な国際機関に加盟できるように、努力するべきである。

台湾は、日本が東南アジアへ入ってゆくのに当たって、日本にとって理想的なパートナーである。

台湾はその歴史的な体験によって、アジアの二つの文化を兼ね備えている。日本文化は創意に溢れ、集団の組織力と規律の正しさによって抜きん出ているが、あまりにも独特であるために、国際性を欠いて、外界から孤立しやすい。

台湾人は、日本文化を身につけているとともに、その出身から中国文化の強い影響も蒙っている。中国文化は仲間しか頼れるものがないから、人々が個性を逞(たくま)しく表現し、起業家精神に溢れている。つねに生きるために新天地を求めてきたから、国際性が豊かである。

台湾が独立国家として繁栄することは、日本の安全にとって、どうしても必要である。台湾の安全をアメリカの手だけに、委(ゆだ)ねてはなるまい。台湾を援けることは、日本を守り、日本を救うことである。

日本と台湾 なぜ、両国は運命共同体なのか
加瀬 英明
外交評論家。慶應義塾大学、エール大学、コロンビア大学に学ぶ。「ブリタニカ国際大百科事典」初代編集長。1977年より福田・中曽根内閣で首相特別顧問を務めたほか、日本ペンクラブ理事、松下政経塾相談役などを歴任。公益社団法人隊友会理事、東京国際大学特任教授。著書に『ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたのか』『アメリカはいつまで超大国でいられるか』(ともに祥伝社新書)、『昭和天皇の苦闘 巡幸と新憲法』(勉誠出版)『「美し国」日本の底力』(共著、ビジネス社)など、多数。1936年、東京生まれ。2022年11月に死去。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます