〈中旬にかけて中だるみも、月間平均470〜480円と高値維持か〉
例年であれば、出荷頭数が増えてくることで10月から11月にかけて豚枝肉相場は年間を通じて底値となり、11月後半から12月上旬にかけて徐々に回復し、年末相場の展開となる。10月は出荷の増加に伴って枝肉相場も下げパターンとなることが予想されていたが、実際は関係者の予想を下回る出荷が続き、全国の出荷頭数が7万頭を上回ったのは10月12日だけだった。増体が良くない豚が多くみられ、市場集荷も少なかった影響で枝相場は下げきらず、結果、月間平均相場は488円(東京市場、上物税抜き)となった。巣ごもり需要がみられた前年同月からは8円安となったが、コロナ以前の一昨年比では24円高と例年に比べ高値推移した。
一方で、末端需要はというと、輸入チルドの供給が不安定な中、量販店などでは国産のフェースを増やす動きもみられたが、月間を通して落ち着いていた。11月は、需要自体はこれといったイベントもなく、「文化の日」「勤労感謝の日」の祝日は飛び石連休となるため、大きな盛り上がりは期待できない。ただ、気温低下に伴って鍋物需要が本格化することで、スライス品などの需要は高まってくることが予想される。出荷頭数は回復に向かうものの、一部でみられる呼吸器系の疾病の影響が長引く可能性も考えられる。このため、11月の枝肉相場は概ね10月並みを維持するものとみられ、月間平均で上物税抜き470〜480円(税込み510〜520円)と予想する。
〈供給動向〉
当初、10月は秋口にかけて出荷頭数は大分増えてくると予想されていたが、実際は月後半になっても1日当たり7万頭を割る日が続いた。夏場は猛暑の影響による増体不良がみられたが、一部で呼吸器系の疾病が出ているとも聞かれ、出荷が伸び悩んだ格好だ。農水省の肉豚生産出荷予測によると、11月の出荷頭数は144.7万頭で前年並みと予測している。
11月から出荷は回復に向かうとされ、20日稼働として1日当たりの出荷頭数は7万2千頭前後と7万頭を超えてくる見通しだ。ただ、一部大手農場などでは呼吸器系の疾病の影響が中旬以降まで続くとみられ、回復には向かうものの、急激な増加には至らないという見方もある。農畜産業振興機構の需給予測では、11月のチルド輸入は北米産の現地価格の高騰の影響から前年同月比9.9%減の3万4,700tと前年割れを見込んでいる。入船遅れも相まって、引き続き不安定な供給体制が予想され、今後の入船のスケジュールによってはタイト感が強まる可能性もある。
〈需要見通し〉
10月は、例年より気温が高い日が多かったことや基本的に需要の端境期だったこともあり、末端の荷動きはあまり芳しくなかった。バラやモモなどアイテムによっては引き合いがみられたが、ロースやヒレは月間を通して鈍かった。
一方で、緊急事態宣言などが解除され、外食向けの手当てについては「週末分の手当てをする動きは徐々に活発化しているが、平日(月〜木)は想定よりも落ち着いており、回復まではほど遠い」(関東の卸筋)ようだ。今後は朝晩の冷え込みに伴い、鍋物需要の本格化が期待され、スライス商材の荷動き活発化が期待される。ただ、基本的には盛り上がりに欠ける展開が予想され、引き続きアイテムによって荷動きにバラつきが生じるものとみられる。
〈価格見通し〉
11月の東京市場の枝肉相場は上物税抜きで473円(前市比6円安)でスタートした。今週は「文化の日」の祝日を挟むため市場の稼働日が少なく、月初ということもあって、相場はある程度、強気に推移するものとみられる。出荷頭数が順調に増えてくれば、中旬以降は中だるみとなり、軟調な展開が予想される。ただ、輸入品との兼ね合いや出荷の動向次第によっては大幅な下げは考えにくく、11月の相場としては例年よりも底堅く推移するとみる向きもある。また、12月に向けて問屋筋からの買いが強まれば、後半にかけて枝肉相場は持ち直してくるため、月間平均では上物税抜き470〜480円(税込み510〜520円)と予想する。
〈畜産日報2021年11月2日付〉