みなし配当
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内山 瑛
内山 瑛(うちやま・あきら)
公認会計士。名古屋大学法学部在学中に、公認会計士試験に合格。新日本有限責任監査法人に入所し、会計監査・コンサルティング業務を中心に研鑽を積む。2014年に同法人を退所し、独立。「お客様の成長のよきパートナーとなる」ことをモットーに、記帳代行・税務申告にとどまらず、お客様に総合的なサービスを提供している。近年は、銀行評価を向上させる財務コンサルティングや内部統制構築支援、内部監査の導入支援にも力を入れている。

みなし配当という言葉は、日頃税務に携わっている人でなければ、聞いたことがないかもしれない。また、実際に関わる機会もまれではあるが、事業承継に関連して、中小企業でも資本政策が重要と言われている昨今、みなし配当の課税についても考慮しておく必要がある。今回は、みなし配当の制度の概要について考えていきたい。

目次

  1. みなし配当とは
    1. 法人税法上の制度として規定
    2. みなし配当が発生する2つのパターン
  2. なぜ配当とみなすのか
    1. もし、みなし配当制度がなかったら?
  3. みなし配当の計算方法
    1. 非適格合併の場合について
    2. 非適格分割型分割・非適格株式分配の場合
    3. 資本剰余金の配当や残余財産の分配など
    4. 自己株式の取得・持分会社の出資払戻し・組織変更
  4. みなし配当の特例について
  5. みなし配当が発生するケースや税金について理解しておこう

みなし配当とは

みなし配当は、「配当」という言葉がついてはいるものの、「みなし」という言葉がついている通り、配当ではない。配当とは、社員(株主)が利益配当請求権(剰余金配当請求権、会社法105条1項1号、621条1項)に基づいて受け取ることができる利益の分配のことである。

みなし配当とは、株主が会社から配当金を受け取ってはいないのに、税制上の都合により受け取ったとみなして課税するものになる。実際に配当を受け取っていないのに、税制上実質的な利益分配がなされたとして課税されることから「みなし配当」と呼ばれている。

法人税法上の制度として規定

みなし配当は、法人税法においては、第24条1項に規定されている制度である。

「法人(公益法人等および人格のない社団等を除く。以下この条において同じ。)の株主等である内国法人が当該法人の次に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあつては、当該法人のその交付の直前の当該資産の帳簿価額に相当する金額)の合計額が当該法人の資本金等の額又は連結個別資本金等の額のうちその交付の基因となつた当該法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは、この法律の規定の適用については、その超える部分の金額は、第二十三条第一項第一号又は第二号(受取配当等の益金不算入)に掲げる金額とみなす。」と規定されている。

みなし配当が発生する2つのパターン

みなし配当が生ずるのは、大きく分けて2つのパターンがあり、「会社から株主へ払い戻しをするケース」「組織再編の際に株主が別会社の株式やお金を受け取るケース」である。それぞれみていきたい。

・会社から株主へ払い戻しがされているケース

会社が払い戻しをする代表的なパターンは、「自己株式の取得」「資本剰余金からの配当金の支払い」「会社解散に際しての残余財産の分配」である。

自己株式の取得は、会社が株主に対価を支払って、自己株式を取得するものであるが、通常の株式譲渡とは異なり、株式の発行会社から直接お金が流れることになるため、一部配当金相当額が含まれていると解釈され、みなし配当が課税されることになる。

資本剰余金からの配当金の支払いは、一見すると配当金を払っている(確かに会社法上も配当である)ようにみえるが、本来、資本剰余金は株主が出資したお金のうち、資本金に組み込まれなかったものなので、会計上は利益剰余金の配当としては扱われない。

つまり、株主が出資したお金の中で余った部分を分配していることになるため、単に株主自身の資本が払い戻されたということになり、厳密な意味での配当金としては扱われず、特殊な計算をしてみなし配当を計算する。

会社解散に際しての残余財産は、株主が出資した分に加えてその会社の利益の蓄積も含められているため、それを株主に分配することは実質的に配当を与えていることと同じ意味になることから、みなし配当課税が行われる。

・組織再編の際に株主が別会社の株式やお金を受け取るケース

組織再編、具体的には、合併や会社分割の際に、組織再編の代償として別会社の株式やお金を受け取った場合である。合併とは、2つ以上の会社同士が一緒になって1つの会社になることであり、会社分割は会社の中にある会社の部分である事業を別の会社に受け継がせることである。

合併と会社分割はそれぞれ違う手法ではあるが、実行した際に対価として受け取る株式やお金は、第三者に株式を譲渡したというよりも、株式の発行会社への譲渡に近いことになり、株主の出資の払い戻しであると同時に、会社がこれまで積み重ねてきた利益の還元でもあると考えられるのである。そのため、この利益の還元とみられる部分については「みなし配当」として扱われることになる。

なぜ配当とみなすのか

なぜ、「みなし配当」という制度があるのだろうか。様々な側面があるが、誤解を恐れずに自己株式の取得を想定して、解説していきたい(厳密な理論的解説については、専門書を参照されたい)。

もし、みなし配当制度がなかったら?

もし、みなし配当制度がなければ、2つの面で不都合が生じることになる。1点目が、資金を受け取る側(個人の場合)にとっての所得の扱いである。資金を受け取った側の利益の課税について、譲渡所得として取り扱われることになると、同じ会社の財産の実質的な払戻しに対して異なる課税関係が生じてしまうことになる。そこで、株式の売買契約という形式的な側面ではなく、会社財産の払い戻しという実質的な側面に着目して、同じ配当所得として総合課税を行うことにしたのである。

また、自己株式の取得や組織再編を会計上と同じ処理をしてしまうと、税務上の払込資本である資本金等と税務上の未配当利益である利益積立金との間で齟齬が生じてしまうため、調整が必要である。これは、会計上は配当可能金額の算出と過去利益の累積という側面に重きを置いているのに対し、税務上は株主間の公平な課税という側面に重きをおいているから生じる差異である。

その差異を調整するために、会計上の資本の払い戻しという処理を利益の配当という処理に組み替える必要がある。その税務上の処理が「みなし配当」である。

みなし配当の計算方法

みなし配当は実際にはどのように計算するのだろうか、それぞれのパターンに応じた税務を理解する必要がある。

みなし配当は個人の所得課税上税務上の配当所得に該当するため、自己株式を取得した法人は、所得税および復興特別所得税を源泉徴収し、翌月の10日までに納付をする。では、その配当所得に該当する金額はどのように計算するのだろうか。

みなし配当は、対価の額全体から資本の払戻し部分を差し引いた金額で計算される。取引ごとに資本の払い戻し部分の計算方法が異なるため、「非適格合併」の場合、「非適格分割型分割・非適格株式分配」の場合、「資本剰余金の配当・残余財産の分配」の場合、「自己株式の取得・持分会社の出資払戻し・組織変更」の場合に向けて議論していきたい。

非適格合併の場合について

まず、1株あたりの資本金等の額を計算する。資本金等の額については、法人税申告書の別表5にて毎期計算している。1株あたりの資本金等の額を計算したうえで、払戻相当の株式割合に応じて、資本の払い戻しとするものである。

非適格分割型分割・非適格株式分配の場合

このケースでは、合併よりも複雑になる。なぜかといえば、合併では被合併法人全体が計算の対象であるが、分割では分割部分だけが計算の対象となる。そのため、まず分割部分と分割法人全体の税務上の純資産額を割り出したうえで、それぞれの純資産額の比率を使って分割部分の資本金額等を別途算出する必要がある。

その資本金等の金額をもとに、1株あたりの資本の払い戻しの金額を計算するという流れとなる。その場合、留意点としては、分割資本金額等を計算する際、分数の分母にあたる分割法人の税務上の純資産額の全体の金額は、分割直前のものではなく、前期末時点のものと使うという点である。

資本剰余金の配当や残余財産の分配など

この場合は、分割と同じような計算になる。配当等の部分に対応する税務上の資本金等の額を算出し、この金額をもとに1株あたりの資本の払い戻しの金額が計算される。

自己株式の取得・持分会社の出資払戻し・組織変更

この場合も、合併に近い処理が行われる。ただし、自己株式を取得する法人が普通株式だけではなく、種類株式を発行している場合には注意が必要である。普通株のほか種類株を発行している場合、税務上では種類資本金額として株式の種類ごとに資本金等の額を別々に管理することとなる。

そのため、自己株式として取得する株式の種類に対応する部分だけ取り出して計算することとなるので留意が必要である。つまり、どの種類株式がかかわった処理なのかにより、みなし配当の金額も大きく変わってくる可能性がある。

みなし配当の特例について

みなし配当が通常かかる場合でも、みなし配当課税が行われないケースがある。ここではそのような特殊なケースを解説する。

相続または遺贈により財産を取得して相続税を課税された人が、相続の開始された日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、相続税の課税の対象となった非上場株式をその発行会社に譲渡した場合を見ていこう。

その人が株式の譲渡の対価として発行会社から交付を受けた金銭の額が、その発行会社の資本金等の額のうちその譲渡株式に対応する部分の金額を超えるときであっても、その超える部分の金額は配当所得とはみなされず、発行会社から交付を受ける金銭の全額が株式の譲渡所得に係る収入金額とされる。

つまり、本来みなし配当として配当所得の総合課税をされるものが、譲渡所得として分離課税がなされることになっている。これは、高額な相続税が課されることの多い、同族会社において、上場株式との取り扱いの差を埋めるために設けられた特例である。

また、相続税の取得費の特例として、この場合の非上場株式の譲渡による譲渡所得金額を計算するに当たり、その非上場株式を相続又は遺贈により取得したときに課された相続税額のうち、その株式の相続税評価額に対応する部分の金額を取得費に加算して収入金額から控除することができる。ただし、加算される金額は、この加算をする前の譲渡所得金額が限度となる。

みなし配当が発生するケースや税金について理解しておこう

みなし配当は会社の合併や分割などで発生することが多く、そのケースは様々で細かいルールもあるためわかりにくい。しかし、事業承継を考えるうえで会社の合併や分割、解散、組織再編は起こりうる。みなし配当に対しては課税されるため、思わぬ税負担とならないためにも、ぜひとも理解しておいていただきたい。

文・内山瑛(公認会計士)

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