クリスプサラダワークス社長 宮野浩史,カンブリア宮殿
(画像=テレビ東京)

この記事は2025年2月27日に「テレ東BIZ」で公開された「デジタルで外食に革命を! 驚き サラダチェーンの全貌:読んで分かる「カンブリア宮殿」」を一部編集し、転載したものです。

900回リピートする店~早い!うまい!健康的!

今、都心には次々とオフィスビルが建っているが、周辺の飲食街は「ランチ難民」の行列ができている。そんな中、今までにない魅力で急拡大するランチ店がある。

東京・港区の「クリスプサラダワークス」虎ノ門ヒルズ店。昼過ぎのカウンターには、出来立ての商品がずらりと並んでいた。客は次々と自分の注文したものを受け取ってオフィスに戻っていく。昼時でもほとんど待ち時間がないという。

客は口々に「早い」「栄養バランスがとれる」「便利」「おいしい」と言う。

商品に貼ってある伝票には、その客がいままでに注文した回数が書いてある。それを見ると200回、300回はザラ。900回を超えるリピーターまでいる驚異のリピート率だ。

▽900回を超えるリピーターまでいる驚異のリピート率

クリスプサラダワークス社長 宮野浩史,カンブリア宮殿
(画像=テレビ東京)

そこまで客の心をつかむのは健康的なサラダランチ。ボリュームたっぷりの健康的な味わいから、ステーキを雑穀米で食べるプロテインプレートまで。メニューは季節メニューを含めれば20種類以上になる。

例えばクリスプの定番・シーザーサラダをボリュームアップした人気メニューが「サーモンアボカドシーザー」(1,894円)。新鮮なロメインレタスに、アボカドとサーモンをぜいたくに入れ、アンチョビが効いた特製のシーザードレッシングでいただく。

▽シーザーサラダをボリュームアップした人気メニュー「サーモンアボカドシーザー」

クリスプサラダワークス社長 宮野浩史,カンブリア宮殿
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熱狂サラダの秘密1~驚きのドレッシング戦略

客を次々とリピートさせるのが、選べるドレッシングのおいしさ。例えばエスニック好きに大人気メニュー、パクチーとグリルチキンがおいしい「スパイシーバイマイ」(ミックスマッシュルームを追加して1,882円)。これにおすすめのドレッシングが、「メキシカンハニービネグレット」だ。

赤ワインビネガーの芳醇(ほうじゅん)な酸味に加えるのは、ぶどうの種から取れるグレープシードオイル。さらに濃厚な蜂蜜をたっぷりかけ、アドボというメキシコのソースを使う。これでエスニック感たっぷりの甘辛くコクのある「メキシカンハニービネグレット」になる。

こんなこだわりのドレッシングが季節ものを含めれば10種類以上もある。個性的な味わいが、客をクリスプのサラダから離さない。

毎日でも食べたくなる絶品のサラダは昼だけで160食が売れていく。同規模の店では考えられない数字だ。現在クリスプは、都心のオフィス街を中心に30店舗を展開、新興外食チェーンとして業績を伸ばし、年商は25億円を突破した。

「1号店を開業する時、夜に料理が残って自分が食べないといけないとしたら、食べるのが嫌になるものは嫌だと思った。ピザやハンバーガーだときつい。10年たっていますが、サラダは余裕で毎日食べられます」と言うのは、クリスプCEO・宮野浩史(43)だ。

「2週間に1回、新商品を出していますが、基本的にお店で作っています。レストランのようなちゃんとした料理がコンビニに行くぐらいの短い時間で食べられるのが僕らの強みです」(宮野)

チキンも店内で焼き上げた出来立てのもの。宮野は、都会の忙しい客たちにおいしいサラダを提供すべく、こだわり抜いている。

▽チキンも店内で焼き上げた出来立てのもの

クリスプサラダワークス社長 宮野浩史,カンブリア宮殿
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熱狂的なファンをつくれ~外食革命!絶品はデータから

熱狂サラダの秘密2~絶品店を作る究極のデータ戦略

クリスプが客を呼ぶ秘密はおいしさだけではない。

この日、宮野がやってきたのは東京・千代田区できた新店「クリスプサラダワークス」東京ガーデンテラス紀尾井町店。開店前、スタッフを集めて「『テクノロジーと人を掛け合わせて外食を変革しよう』と掲げている会社。『熱狂的なファンをつくっていこう』がミッション。お客様のことを知って、初めてお客様の期待を超えられる」と宣言した。

クリスプの店が客をつかむ裏には他の外食と全く違う戦略がある。それを象徴する商品開発会議。この日は夏に向けて準備する新商品、エビをメインとした夏野菜のグリルの試食会が行われていた。

ところが宮野は、味の感想は一切口にせず、手元のパソコンのグラフとにらめっこを始めた。商品を印象でなく、さまざまな顧客のデータから語るのが宮野流だ。

「シュリンプはどういう評価ですか? 日販はだいぶ落ちている印象がある」(宮野)

使った食材ごとに色分けし、売れた商品数の推移を示したグラフがある。毎月、コンスタントに売れ行きを伸ばすのがオレンジ色のサーモン。青色で示されたシュリンプは、売りはじめから3カ月で売り上げが減ってしまっている。

▽使った食材ごとに色分けし、売れた商品数の推移を示したグラフ

クリスプサラダワークス社長 宮野浩史,カンブリア宮殿
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「ビーフとシュリンプは同時に出したから食い合っている」「サーモンは食い合っているけど、チキンは食い合っていない」などと、シュリンプをどの食材と同時に売ると影響が出るのか、データをもとに仮説を立て、客の購買行動に向き合って行く。

クリスプでは、どの商品がどんな顧客層に繰り返し買われているかなど、販売直後のさまざまなリアルタイムのデータが分析できるという。

「リアルタイムで15分ごとに入ってきます。昨日発売した商品のデータもすぐに見られる。『これ、おいしそうだからやってみよう』という感じではなく、リアルタイムでディスカッションできるデータがあるのが強みです」(宮野)

今まで勘に頼っていた外食業界を変えるクリスプのデータ化戦略。その基盤となる細かい顧客データの収集を可能にしているのが、多くのユーザーが使っているモバイルオーダーシステムだ。

事前にメニューを選択し、支払いもキャッシュレスで済むため、待ち時間はほぼなし。客は「これで予約できる楽」と言う。このオーダーシステムからの注文情報をデータベース化。重視しているのが、客が食後に行う5段階評価だ。

▽オーダーシステムからの注文情報をデータベース化、重視しているのが5段階評価だ

クリスプサラダワークス社長 宮野浩史,カンブリア宮殿
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特に最高ランクの星をつけてくれた客は「5をつけた時に『どうしてですか?』」(宮野)と分析し、改善していくと言う。

「『熱狂的ファンをつくる』というミッションを掲げているので、どうやったらお客様に喜んでもらえるか、どうやったらもう1回来てもらえるか、想像していてもしょうがないから、確認して、当たっているかどうかを検証していく。『違っていたら改善』を繰り返していく。1人1人のお客様の満足度、熱狂度は上がっていくと思います」(宮野)

忙しい中でも最高のランチをとりたい。クリスプはそんな現代のシビアなニーズを徹底的に分析。最新のデジタル戦略とこだわり抜いたサラダを武器に、急拡大を続けている。

革命的ランチ店誕生秘話~外食をひっくり返す決意

クリスプサラダワークス社長 宮野浩史,カンブリア宮殿
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宮野の新たな挑戦の舞台は東京・江東区の商業施設「有明ガーデン」。初のフードコートへの出店だ。クリスプは2025年だけでもすでに10軒以上、新店をオープンさせることが決まっている。

「東京都心を中心にした出店だけでも100店舗ぐらいは十分いけると思います」(宮野)

1981年、千葉県で生まれた宮野が、高校を中退して向かったのはアメリカ。そしてロサンゼルスである商売を始める。スーパーの前のスペースを借り、買い物帰りの客にホカホカの天津甘栗を販売。これが驚くほどのビジネスとなった。

「1日で40万円、50万円に。人ってこんなに喜んでくれるんだと」(宮野)

そんな生活を続けるも、同時多発テロの影響で住みにくくなったアメリカを離れ日本へ帰国。その後、「タリーズコーヒージャパン」に就職するなどし、外食の経験を積む。そして業界のある疑問に行き着く。

「1~2店舗で個人でやっている店と、100店舗、1,000店舗でやっているチェーン店だと、何となく1店舗のほうが『いい店』が多いような気もする。チェーン店は資本力もあるしいろいろな人たちがいろいろな工夫ができる。購買力や人の力もあるのに、1店舗のほうが『いい店』ということを何とかしたい。お客様が『100店舗になったほうがいい』と感じられる世界観をつくっていこうと」(宮野)

宮野は、そんな高い志を持って2014年、東京・港区の麻布十番にクリスプサラダワークスをオープンする。珍しかったサラダの店には行列ができ、テレビの取材までやって来た。ところが忙しさに追われる中、行列で客はいらいらし、スタッフも疲弊していた。

「忙しくて水を飲む暇もない。ただサラダを売る自動販売機みたいになってきて、これって全然いい店じゃないし、自分が作りたかったお店じゃないよな、と」(宮野)

そんな宮野はアメリカからのあるニュースに惹きつけられる。それは「スターバックス」が、スマホを使った先進的なオーダーシステムを導入したというものだった。

「これはすごいなと思った。モバイルオーダーみたいなのがあって事前に注文できたら、お客様は店で待たなくても出来上がったらくればいいし、お客様の名前や来店情報も分かるので接客も良くなるし、お客様の体験も良くなる。これが最初の入り口でした」(宮野)

宮野は先進的な店舗運営を可能にするシステムの開発に挑戦。効率化と顧客の支持の両立を実現していった。

時給が上がる驚きの勤務システム~何でも公開する経営術

クリスプサラダワークスで2024年5月から働き始めた栄翔子が驚いたのが、働くシフトを簡単に決められることだという。

「シフトに入りたい日付をタッチすると、どこのお店が空いているか一覧で見られるようになっていて、入りたい店があったら『予約する』を押すと、その店のシフトを取れる。便利です」(栄)

▽働くシフトを簡単に決められる「クリスプワークプレイス」

クリスプサラダワークス社長 宮野浩史,カンブリア宮殿
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スマホの操作だけで働く日時を確定できてしまうのだ。しかもこのシステムでは、30ある店舗のどこで働いても構わないと言う。

「今まで12店舗ぐらい、スタンプラリー感覚で働いています。全部行けたらいいな」(栄)

これは宮野が開発した外食の働き方を変える「クリスプワークプレイス」。これで人手不足の問題も解決していた。

「例えばこの曜日のこの時間に人がいないという時、『200円時給を高くする。誰か入りたい人いる?』とアプリに出すとすぐに埋まる。このシステムを運用し始めてからほぼ人不足はないです」(宮野)

このシステムのおかげで人材配置が効率的に行われ「入った時よりも今は300円ぐらい高くなりました」(トレーナー/アルバイト・渡部七菜)、「何十円も時給上がるんだ、ありがとうございますって感じです」(アルバイト・清原未羽)と、アルバイトの時給は毎年増え続けている。

さらにこの日の店長会では次なる挑戦が話し合われていた。スタッフ1人1人への客の評価を数値化し、還元する仕組みを作ると言う。

▽店長会では次なる挑戦が話し合われスタッフ1人1人へ還元する仕組みを作ると言う

クリスプサラダワークス社長 宮野浩史,カンブリア宮殿
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「やはり人の力がより重要になってくるので、人のデータを持っている会社が間違いなく強いと思うし、『金払うからとりあえずこの日働けよ』という時代ではない」(宮野)

人材という外食の大きな問題も、最新技術で解決しようとしている。

クリスプのサラダを彩るオリジナルドレッシングは、かなりマニアックな配合で作られているのだが、実はそのレシピは全てネットで公開されている。

そのオープンな姿勢はクリスプのさまざまな経営データまで。ホームページの「クリスプマトリクス」には、各店舗の注文実績からその単価の推移、さらに顧客の満足度やアルバイトの平均時給まで出ている。

▽「クリスプマトリクス」オープンな姿勢はクリスプのさまざまな経営データまで出ている

クリスプサラダワークス社長 宮野浩史,カンブリア宮殿
(画像=テレビ東京)

「インターネットの会社などは決算で開示している会社もありますが、外食の会社はほとんど開示されてない。少しでも僕らのデータが参考になって、魅力的な業界になるきっかけになればいいと思います」(宮野)

全てをさらけ出す姿勢にも、外食業界に変革を起こそうという宮野の意気込みが、現れている。

※価格は放送時の金額です。

~村上龍の編集後記~

業界的にはデジタル化は進んでいない。宮野さんはそう言う。データやファクトでビジネスをするというより、勘と経験に頼って経営しているケースが多いと。クリスプサラダワークスは違う。データを分析したマトリックスがあり、1人の客がどんな傾向でサラダに向かっているかがわかる。

マトリックスを見ると、1人ではなく全ての客のデータがある。客だけではなく、働いている人の情報もある。そこにはあらゆるデータとファクトが詰まっていて、財務状況まで公開されている。こういう企業はなかった。サラダだけにはとどまらないだろう。

<出演者略歴>
宮野浩史(みやの・ひろし)
1981年、千葉県生まれ。15歳で渡米、18歳で天津甘栗の露天商を開業。2003年、帰国し緑茶カフェなどの運営に携わる。2014年、クリスプサラダワークス開業。

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