助成金,消費税,補助金と税金
(写真=Gunnar Pippel/Shutterstock.com)

助成金・補助金は、主に中小企業が公的機関から補助を受けることができる資金調達の方法だ。金融機関からの融資と異なり、返済不要なお金なので、起業間もない会社や設立してからかなり年数が経った会社であっても、条件に該当すれば利用可能な助成金・補助金がある。しかし、助成金・補助金が交付された後の税金の取扱いにも注意が必要だ。以下、それらについてまとめてみよう。

助成金・補助金は目一杯活用したいもの

国は中小企業の底上げのために様々な施策を打ち出している。特に後継者不足により中小企業の大廃業時代がすでに到来している。2019年2月に中小企業庁が中小企業政策審議会基本問題小委員会で公表した資料「事業承継・創業政策について」によると、70歳が中小企業・小規模事業者の経営者の平均リタイアメントの年齢で、今後10年にその年齢に達する経営者は約245万人となり、その内約半分の127万人は後継者が決まっていない状態なのだ。中小企業とはいえ、そこには従業員とその家族が存在する。これをそのまま放置しておくと、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDP(国内総生産)が失われる可能性があると言われている。

単に大企業の下請けとしての位置づけではなく、技術革新を生み出す企業に国としても資金を拠出して活性化を促すのが、助成金や補助金の本来の目的の一つである。

助成金や補助金を受給できる対象は、企業、民間団体、個人事業主などで、交付元は、国や地方公共団体などが主体となっている。

助成金と補助金の違い

助成金も補助金も返済不要という点では違いはない。しかし、呼び名が2つあるということは、内容に関して少し違いがある。

助成金とは?

助成金は、例えば社員数、企業規模など条件に合致すれば、審査に通りやすいのが特徴だ。

従って、人気のある助成金で先着順などの場合、開始早々に予算枠が埋まってしまうのが現状だ。案件を逃さないためにも常にアンテナを張って準備をしておく必要がある。

また、毎年決まって予算に計上される助成金もあるので、その年の年度枠が埋まってしまっても来年度の予算で審査に通る可能性もある。そのためにも申請書類をあらかじめ準備しておくと、次年度慌てることなくスムーズに申請することが可能だ。

助成金は、厚生労働省が管轄のケースが多いのも特徴だ。対象となるのは、新規雇用、障害者雇用、パート、アルバイトから正規雇用への転換など、更には従業員の職業教育など会社が雇用者のために施策を行った場合に支払の対象になるケースが多い。

補助金とは?

補助金は、国や地方自治体の政策に沿った目的のために設定されるもので、予算枠があり、更に審査もかなり厳格に行われる。

代表例として、創業支援等事業者補助金などがある。これは、市区町村と連携した民間事業者等が行う、創業支援等の取り組みを補助することを目的としている。

補助金は助成金と比べて種類が多く、交付される金額も多いのが特徴だ。国の政策に合致した事業内容か否かが重要なポイントである。

しかし、実際の現金としての交付は後払いとなり、更に補助率が1/2や2/3となるケースが多いので、お金が交付されるまでの資金繰りを自分でまかなう必要がどうしても出てくる。

補助金は、経済産業省が管轄のケースが多い。対象となるのは、創業期、中小企業持続化、IT導入などのそれぞれの政策ターゲットに合致した場合、それらに関わる開発費、外注加工費、市場調査費、コンサルティング費、販促費などが対象となる。

助成金・補助金はどうやって記帳する?

助成金・補助金が交付される時、法人としてどのように記帳(仕訳)をすればよいのだろうか。企業の会計の種類として、一般的に、管理会計・財務会計・税務会計の3種類が挙げられる。

管理会計は、あくまで会社内部向けのため、財務会計・税務会計とは異なり法的なルールはなく、企業によって管理会計の仕方がそれぞれ異なる。

これに対して、財務会計と税務会計は外部向けであるため、必ず一定の法的ルールに則り会計情報を作成する必要がある。税務会計は財務会計の一種であるが、財務会計と税務会計では考え方が異なる。そこで、まずその違いを明らかにした上で、記帳(仕訳)の仕方を解説していこう。

(1)財務会計では「収益」と「費用」

財務会計は、IFRS(国際会計基準)などの会計基準に則り、記帳を行う。その基本は、貸借対照表(Balance Sheet 略してB/S)と損益計算書(Profit and Loss Statement 略してP/L)の2つだ。

B/Sは、主に決算期末時点の企業の財産状況を明らかにするもので、P/Lは、1年間の売上、経費、税金などを考慮し、最終的にいくら黒字になったか、赤字になったかを表すものだ。

財務会計上、P/Lでは、儲けの類を収益、経費の類を費用と呼ぶ。収益から費用を引いた金額を黒字の場合は利益、赤字の場合は損失と表現する。

(2)税務会計では「益金」と「損金」

税務会計は、税金の申告に使うもので、上記の財務会計で作成したB/SとP/Lを基に、各種税務調整を行い、最終的に支払うべき税金を確定させるための課税所得を算出する。

では、上記の財務会計と税務会計はどのように異なるのだろうか。財務会計は特に上場会社などの場合、投資家に有益な情報を伝達する一手段で、企業の決算期の財務状況や1年間の稼ぐ力を表す。一方、税務会計は財務会計を基に、会計上のルールに則って調整を加え、最終的に課税額を算出するためのものだ。

課税額確定までの大まかな流れは、以下のようになる。

① B/SとP/Lの財務諸表確定
② P/Lに税務上の調整を加える
③ 課税額確定

では助成金・補助金を受給した時の経理処理はどのようにすべきなのだろうか。以下、主に税務会計の観点から解説を加えていこう。

助成金・補助金と法人税の関係

助成金・補助金を受給した場合、経理上は雑収入として記帳するのが一般的だ。従って、税務会計では上記で説明した益金として計上されるので、最終利益が出れば課税される。つまり助成金も補助金も法人税の対象となるので、その計上時期が大切になる。例えば、決算期間近に記帳を行い、益金算入した場合、それを上回る損金がないと、法人税が課税されるのだ。

助成金・補助金の記帳のタイミングと仕訳

特に創業間もない企業の場合、助成金・補助金がP/Lに与える影響は大きいので、計上時期を間違えることで、課税されることになりかねない。助成金・補助金は支給が決定した日にまず未収入金として計上し、実際の入金時に口座の預金として計上することが求められる。

【仕訳例1】
・補助金100万円を受給したケース (決算期をまたがないケース)

借方 現預金 1,000,000 貸方 雑収入 1,000,000

しかし、助成金・補助金の受給が決定されることと入金されるタイミングがずれるケースは、往々にしてある。その場合は、一旦未収入金で記帳して、入金されたタイミングで現預金を計上する事となる。

【仕訳例2】
・補助金100万円を受給したケース (決算期をまたぐケース)

受給決定時
借方 未収入金 1,000,000 貸方 雑収入 1,000,000(ここで益金に算入される)
入金された時
借方 現預金 1,000,000 貸方 未収入金 1,000,000(未収入金を消し込む)

従って、気をつけるべきタイミングは仕訳時だ。受給決定金額を上回る損金が発生していないと、税金が課税されることとなる。例えば、補助金等の内容が、雇用関係のものであった場合、職員の給与と相殺して計上することは認められない。

設備投資型補助金等の場合の圧縮記帳とは

補助金等の内容によっては、固定資産の購入に対しても補助対象となるものもある。その場合、固定資産の取得価額を一定額減額して固定資産の購入金額とする事ができる。これを圧縮記帳という。

固定資産の圧縮記帳は、税法の規定に基づく会計処理であることが大前提だ。

例えば印刷機を購入する際、国から1,000万円の補助金を受給したと仮定する。前述の通り、この交付を受けた補助金は、益金として計上するのが原則だ。仮に法人税の実効税率が25%だとすると、1,000万円国から交付を受けたものであっても、1,000万円のうち、250万円がすぐに国庫に納付されることとなる。そうすると、補助金は4分の3に減ってしまうことになる。これを回避するために考えられたのが、圧縮記帳という方法だ。

圧縮記帳の考え方は、国庫補助金等を受け取ったときの収益と同じ金額の費用を計上して両者を相殺することにより、税負担を軽減するというものだ。

例えば、国庫補助金1,000万円を受け取って最新の3Dプリンター4,000万円を購入したケースを考えてみよう。 なお、処理方法は以下で記載する直接減額方式によるものとする。

国庫補助金1,000万円を受け取った時点で「国庫補助金受贈益」という雑収益が1,000万円計上される。これを打ち消すために「固定資産圧縮損」という費用を収益認識と同時に1,000万円計上することで、収益と費用が相殺され、国庫補助金を受け取った時点での益金を実質的にゼロにし、法人税への影響もゼロにする仕訳を行う。一定の要件を満たすことにより、法人税法上もこの方法が認められている。

この仕訳は、下記のようになる。

借方 固定資産圧縮損 10,000,000 貸方 機械(固定資産)10,000,000

そうなると、4,000万円で購入した3Dプリンターの帳簿価格が1,000万円減り、3,000万円となる。このように固定資産の金額が4,000万円から3,000万円に圧縮されることから、「圧縮記帳」という言葉が使われている。

圧縮記帳後の経理処理

ここまで、機械の帳簿価格が4,000万円から3,000万円に圧縮されたところまで見てきたが、そうなるともう一点考慮しなければならないのが減価償却だ。

3Dプリンターは機械なので、税法に則り減価償却を進めていく必要がある。例を簡略化するため、この3Dプリンターの償却期間を5年、残存価格は0円と仮定した上で4,000万円と3,000万円で減価償却費を計算してみよう。

圧縮記帳前の4,000万円の場合、

 4,000万円÷5年=800万円

が5年間毎年計上する減価償却費となる。

一方、圧縮記帳後の3,000万円の場合、

 3,000万円÷5年=600万円

が5年間毎年計上する減価償却費となる。

減価償却費は税法に則った計算方法であれば、損金計上できるので、多く計上したほうが支払う法人税も減る事となる。

固定資産圧縮損 3,000万円(圧縮記帳後)の
3Dプリンター減価償却費
4,000万円(圧縮記帳なし)の
3Dプリンター減価償却費
1年目 1,000 600 800
2年目 600 800
3年目 600 800
4年目 600 800
5年目 600 800
合計 1,000 3,000 4,000

この表から分かることは、5年トータルの損金計上額は、圧縮記帳を行った場合と行わなかった場合とで全く変わらないということだ。唯一違う点は、1年目は圧縮記帳を行った方が、1,600万円(固定資産圧縮損1,000万円+減価償却費600万円)、行わなかった方が800万円と違う点だ。この意味することは、税金の支払いが、一年目は圧縮記帳を行った方が楽になる、という点だ。しかし5年トータルで考えると共に4,000万円で変わらない。

従って、圧縮記帳の最大のメリットは、企業の圧縮記帳を行った一年目の資金繰りを楽にするという点にあるといえる。すなわち、圧縮記帳は、免税制度ではなく、単なる課税の繰り延べを可能にする制度に過ぎないということである。

圧縮記帳の方法は2パターン

一般的に、圧縮記帳には以下の2つの方法がある。

(1)帳簿価額から直接減額する方法

「直接減額方式」とは、例えば補助金で印刷機を購入した場合、損金処理により固定資産の価額から直接補助金の金額を減額する方法を指す。ただこの方法は、圧縮記帳が適用される初年度は税負担が少なくなるが、次年度以降は固定資産の取得価格自体が減額されているので、減価償却費が少なくなる。従って次年度からの税負担は増加する事となる。これが課税の繰り延べと言われる所以だ。

(2)剰余金の処分により積立金として処理

もう1つは、「剰余金による積立金方式」と呼ばれる方式だ。これは確定決算または決算確定の日までに、剰余金の処分により圧縮積立金を積み立てる方法だ。利益剰余金を圧縮積立金として積み立てることで利益剰余金を減らし、株主への配当財源から補助金収入を取り除くのだ。

固定資産の購入について補助金等を受け取った場合は、この圧縮記帳を利用することで一定期間税務上の資金繰りが楽になるので、実務に取り入れることを検討するとよいだろう。

助成金・補助金と消費税の考え方

行政機関から助成金・補助金などで交付されたお金は、消費税は不課税という扱いになる。消費税の課税対象は、「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等及び外国貨物の引取り(輸入取引)」であると定められている。これに沿って考えると、助成金・補助金の交付金は対価を得ているわけではないので、不課税なのだ。

収益にかかる消費税の区分として不課税と非課税がある。「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等及び外国貨物の引取り(輸入取引)」したという文言に当てはまらず、消費税が課税されない場合を不課税という。これに対し、この文言には当てはまるが、土地や有価証券など一定の取引に対して課税しない場合は非課税という言葉を使う。従って、助成金・補助金は、一般的に対価として支払われるものではないので、不課税となるのだ。

圧縮記帳と減価償却を上手く使うことで税負担を減らそう

ここまで、助成金・補助金の交付を受けた時の税法の考え方の概略をお伝えしてきた。特に圧縮記帳の制度を上手に使うことで、圧縮記帳を行った年度の資金繰りを楽にすることができるという効果を理解できたのではないだろうか。もう一つ大切なのは、減価償却だ。上記の説明の通り、圧縮記帳と減価償却を上手く使うことで税負担をコントロールすることができる。

ここでもう一つ考える必要があるのが、キャッシュフローの概念だ。上記で例として挙げた4,000万円の3Dプリンターを購入する場合、1,000万円の補助金を受けることができれば、キャッシュフローは格段に改善する。効率的な資金繰りを考えながら設備投資を行うことで、資産を上手に使いながら利益を出していくことができる。税負担上もキャッシュフロー上も共にメリットのある助成金と補助金、是非有意義に使いたいものだ。

文・中村伸一