矢野経済研究所
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2023年のサステナブルフードの市場規模は1,722億円

~持続可能性に配慮した食料生産や消費活動が求められる中、環境に配慮し、持続可能な生産方法で作られた農産物・畜産物・水産物が注目を集める~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のサステナブルフード市場を調査し、市場概況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。

サステナブルフード総市場規模推移・予測

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1.市場概況

2023年のサステナブルフードの市場規模はメーカー出荷金額ベースで1,722億円と推計した。

近年、食料生産に関して、気候変動や環境問題など、農業・水産業・畜産業を取り巻く環境は大きく変化している。加えて、2022年以降は、世界的な政情不安定の影響から、食品の供給不安定化や価格高騰が発生し、食料安全保障の強化や持続可能な食料生産が世界的な課題となっている。

持続可能性に配慮した食料生産や消費活動が長期的に求められる中、オーガニック農作物(有機JAS)や植物工場産野菜などの農産物、ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)、MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)、MEL(マリン・エコラベル・ジャパン協議会)などの認証水産物や陸上養殖の水産物、家畜の生育方法・生育環境に関する基準を満たしたアニマルウェルフェア畜産物、代替肉(植物由来肉・培養肉)などが注目を集めている。

2.注目トピック

エシカル消費意識の高まり

エシカル消費とは、倫理的な消費を指し、環境問題や社会問題といった大きなテーマに対して、原材料の種類や生産方法などの観点から環境に配慮した商品を選択する消費行動によって社会に貢献しようとする考え方を意味する。

このエシカル消費は、国際目標となったSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)と関係する考え方である。近年、消費者や生産者の間でも、SDGsの観点から環境保護による持続可能な社会の実現に向けた取り組みに対して理解が深まりつつある。

2015年9月の国連サミットで採択された、2016年から2030年までの期間での国際目標であるSDGsは、持続可能な社会に向けて取り組むべき17の目標とその課題ごとに設定された169のターゲット(達成基準)から構成されている。

この17の目標のうち、12番目に設定されている「つくる責任つかう責任」は、廃棄物の削減などについて生産・消費パターンを変えることを目標としている。現在の生産・消費パターンは地球環境に対して過度に負担を強いており、このまま同じ生産・消費パターンを繰り返していると、化石燃料や金属などの貴重な地球資源が枯渇してしまう可能性がある。そこで注目されているのがエシカル消費という考え方であり、エシカル消費を続けることがSDGsの目標「つくる責任つかう責任」の達成に繋がる効果的な手法と捉えられている。

3.将来展望

オーガニック農産物は、スーパーマーケットなど小売店での品揃えが拡充しており、オーガニック農産物を扱う事業者間での流通量が拡大している。今後は栽培技術の普及と生産者の増加により安定供給が進み、低価格化と普及拡大が始まると考える。

植物工場産野菜は、天候不順の激化等から露地野菜の調達が不安定化する中、供給量・品質ともに安定調達できる点が魅力となり、需要分野は業務用・小売用ともに拡大している。洗浄の手間などが少ないことから、生産工場の省力化に繋がることもメリットとなり、今後も市場は拡大する見込みである。

認証水産物は、SDGsの認知度が向上したことに伴い水産資源や環境への配慮が進み、事業者の認証取得が加速した。大手小売業の購買方針としては認証商品に対して積極的であり、今後も認知拡大や小売店等での取り扱い拡大を見込む。

陸上養殖水産物は、通常の養殖と異なり海への影響がほとんど無いことから環境負荷が低く、持続可能性が担保されているため、持続可能な原料調達に注力するコンビニエンスストアなどの需要にも合致している。より持続可能性に配慮した水産物が、消費者の購入選択肢の一つとなるよう、販売拡大を期待する。

代替肉(植物由来肉・培養肉)は、植物由来肉では小売店での販売や外食メニューへの導入等が進み、消費者との接点が増加し、認知度が高まっている。培養肉では、日本国内での食品の安全性や表示ルールなどに関連する法律の整備が整うとともに、2020年代半ばには、生産における基礎技術の完成とともにコストダウンの取り組みが進むことが想定され、2020年代後半に掛けて市場形成が進むと見込む。

アニマルウェルフェア畜産物は、現状では限られた規模の市場となっているが、中長期的には増加傾向での推移を見込む。市場は欧米で先行しており、日本でも家畜の飼育環境下での配慮などについて適切な消費者理解を進めることで、市場拡大に寄与する可能性がある。

持続可能性への社会的需要の高まりから市場は拡大し、日本国内におけるサステナブルフード市場は、2030年にはメーカー出荷金額ベースで2,976億円に伸長すると予測する。

調査要綱

1.調査期間: 2024年1月~2024年2月
2.調査対象: サステナブルフード取り扱い企業・団体、農林水産省、業界団体、業界誌等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談取材(オンライン含む)及び電話、メールによるヒアリング調査、ならびに文献調査併用
<サステナブルフード市場とは>
本調査におけるサステナブルフードとは、環境に配慮し、持続可能な生産方法で作られた農産物・畜産物・水産物等の食品を指す。
市場規模は、農産物(オーガニック農産物、植物工場産野菜)、畜産物(アニマルウェルフェア畜産物(アニマルウェルフェア認証等)、代替肉(植物由来肉、培養肉)、水産物(陸上養殖水産物、認証水産物(MSC、ASC、MEL等))の合算値である。
<市場に含まれる商品・サービス>
農産物(オーガニック農産物、植物工場産野菜)、畜産物(アニマルウェルフェア畜産物(アニマルウェルフェア認証等)、代替肉(植物由来肉、培養肉)、水産物(陸上養殖水産物、認証水産物(MSC、ASC、MEL等))

出典資料について

資料名拡大するサステナブルフード市場の現状と将来展望 ~持続可能な農畜水産物(市場分析編)~
発刊日2024年02月29日
体裁A4 237ページ
価格(税込)220,000円 (本体価格 200,000円)

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