矢野経済研究所
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2月18日、中国文化観光省は春節休暇における国内観光収入が13兆3000億円、前年同期比47.3%のプラス(休暇日数調整後)、コロナ禍前の2019年との比較でも同7.7%のプラスになったと発表した。2月10日から17日まで8日間の国内旅行者数は延べ4億7400万人、対2019年比19%増、海外旅行者もコロナ禍前の水準をほぼ回復したとされ、個人消費全体の回復ぶりが強調された。

一方、中国国家統計局が発表した1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.8%のマイナス、前年比割れは4か月連続、下落率は14年ぶりという高水準であった。落ち込み幅の大きさは昨年の春節休暇が1月であったことによる反動もあるだろう。しかしながら、総額でコロナ禍前を上回った春節期の観光消費も一人あたりに換算すると同1割弱のマイナスとなる。家計の節約指向は依然根強いとみるべきだ。

景気低迷の背景には途方もない規模で顕在化した不動産不況がある。20日、中国人民銀行は住宅需要の喚起をはかるべくローン金利の引き下げを発表した。ただ、これで業界が苦境から脱するとは考えにくい。優先すべきは過剰債務を抱えた業界の抜本的な再建であるが、地方政府の財政も逼迫しており思い切った策は取り難い。加えて外資による中国離れも深刻だ。相次ぐ資本の引き上げや直接投資の縮小は中国経済を下支えてきた原資を失うことを意味する。すなわち、今、中国は経済構造の根本的な転換が求められていると言え、目先の痛みを避ける選択がなされるのであれば停滞の長期化は避けられない。

とは言え、圧倒的な規模の優位はリスクを受けとめる余力と時間的猶予をもたらす。米国による経済制裁をまともに受けたファーウェイ、2022年度の決算は散々だった。幹部は「この状況に適応するしかない」と会見で述べていたが、その一方で期中に過去最多の研究開発費を投じている。昨年度、業績は早くも回復に転じた。はたして当局は現状にどう適応しようとしているのか、選挙という審判に無縁のこの国の政策判断は唯一トップの意思に委ねられる。それだけに先行きは見え難い。下振れシナリオを想定しての準備を怠るまい。ただし、経済政策の次元を越えての “不測の事態” だけは是非とも勘弁願いたい。

今週の“ひらめき”視点 2.18 – 2.22
代表取締役社長 水越 孝