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社長の「見た目」はきわめて重要
「第一印象は、見た目で九割が決まる」とはよく言うが、人は初対面の人をどこで判断するのかあらためて考えると、やはり「見た目」というのは良いにこしたことはない。
我々も日々、日本全国の経営者の方々とお会いしているが、社長を見ればその会社のことがたいていわかるものだ。そう考えると「格好などどうでもいい」と言っていられるだろうか。本当にそうなのだ。
このようなお客様がいた。地方のお客様だが、取引先が東京に多いため月に何度も東京に出てこなくてはならない。
しかし、地元で普段着ている格好でお客様の会社に打ち合わせに行くと、「どうも田舎くさくて合わない。あれでは足元を見られてしまう」というのだ。東京にいる人からしてみれば、「そんな馬鹿な」と思うかもしれないが、社長は本気で言っていた。
その社長は、月に何度も東京にくるので、ホテル暮らしではなく賃貸マンションを借りていたが、そこには東京での打ち合わせ用の衣装があると言っていた。
私は、「では、地元でもその服でいればいいのでは?」と言うと、「それでは、今度は地元で『あいつは東京に頻繁に行くようになって、チャラチャラするようになった』と言われ、相手にされなくなってしまう」と言うのだ。スーツだけでなく、時計、靴までも替えているそうだ。冗談のような本当の話だ。
しかし、そういう人は意外と多い。日本経営合理化協会のお客様は、大手の下請けで、受注事業をしている方が多い。そういう方はお客様の会社に行く際には高級外車で行くわけにはいかないだろう。嘘か本当か知らないが、お客様のイベントに夫婦で参加しなくてはならないようなときは、奥さんの服装や髪型まで地味に見えるようにして参加するという方もいた。
反対にこのような方もいる。典型的な見込み事業の会社の社長だ。派手好きでドイツ製の高級スポーツカーに乗っている。
全国経営者セミナーのときだった。私は司会をしていたので、司会台から動くことができない。十八時頃だったろうか、私の携帯電話にその社長から着信があった。しかし電話に出ることはできない。あと二時間で終了なので、そのまま待つことにした。
すると、数分経った頃、部下が司会台にいる私に伝言メモを持ってきた。何でもその社長が、重要な話があるから受付まで来てほしいというのだ。のっぴきならない用事かと思い、私は部下に司会台に座っているように頼み、受付へと走った。
ところが、受付へ行くと女性社員とその社長が談笑しているではないか。何事かと思い声をかけると、その社長は「ああ、太陽さん久しぶりです。今日の講義終了後にある夕食会は何時からか確認したかったので」と私の前に左腕を突き出した。
「そんなことのために?」と一瞬感じたが、ふと気づくとその社長の左腕には、数百万円するであろうスイス製の高級腕時計が光っていた。軽いめまいを感じた。
信じられないことにその社長は、その高級腕時計を一刻も早く私に見せたいがために、私を司会台から呼び寄せたのだった。これもまた冗談のような本当の話だ。
面白おかしく書いたが、しかし、いずれの社長もわからないでやっているわけではない。きちんとした考えのもと、そのようなものを身につけているのだ。先ほどの派手好きな社長がドイツ製のスポーツカーに乗っているのも、スイス製の腕時計を身につけているのも、社員から言われて買ったものだ。
この会社は業績もよく、社員の賞与もかなり出ていた。社員たちが車を買おうにも、腕時計を買おうにも、社長よりいい物を買うわけにはいかないと思ったのだろう。また、自分たちの社長が、申し訳ない言い方だが、たとえばみすぼらしい、パッとしない格好をしていたら、そこで働いている社員は夢も希望も持てないこともあるだろう。
「見た目」というのは、想像以上に重要なのである。皆さんの会社が、モノを企画したり、デザインしたり、設計したりする会社であったとする。その会社の社長のセンスが悪かったら、お客様は仕事をくれるだろうか。最初に言ったが、「第一印象は、見た目で九割が決まる」のである。気をつけていただきたい。