※画像をクリックするとAmazonに飛びます
経営者は「四つの〇」を描け
牟田式の「経営の原理原則」とは何かというと、やはり「受注事業と見込み事業」の考え方がまず第一である。
詳しくは第二章で述べるが、受注事業には受注事業の長所と短所があるし、見込み事業には見込み事業の長所と短所がある。それをよく理解して、自社の「儲かる事業体質への転換」を果たしていかなければならない。
しかしながら、講演などで「自社は受注事業ですか?見込み事業ですか?」と実際に手を挙げていただくと、意外とわかっていない社長がいる。自社が受注事業なのか見込み事業なのかわかっていなければ、正しい手を打つことはできないだろう。しっかりと理解をしていただきたい。
そして、「受注事業と見込み事業」の考え方を理解したうえで必要になってくるのが、「社長として四つの○が描けるかどうか」である。
「四つの○」とは、事業発展計画書を構成する四大体系で、何のために事業をやっているのかという「経営理念」、儲かるための方向性を決める「戦略」、この一年どのように戦うのかという「戦術」、「経営目標」を数字で表してもらったもので、我々は「四つの○」と呼んでいる。
日本経営合理化協会では、この事業発展計画書を、売り上げ規模、業種業態にかかわらず、どんな企業であっても必ずつくっていただくようにしている。
それは、どんな素晴らしい事業であっても、どんな高い目標でも、社長の頭の中にあるだけでは、決して社員に伝わることはなく、理念や哲学は時代とともに風化してしり、目標も口だけでは、「社長がまた何か言っているが、どうせ変わらない」と、なぁなぁになってしまったりするからである。
だから、社長は事業発展計画書を作成し、発表会を開き、そして計画書に書いてある通りに実行する仕組みをつくっていかなければならない。何年も何年もやり続けることによって、自社の「社員像」というものができあがってくるのだ。それが社長としての最重要の実務である。
前の項目で「経営は原理原則が八割、時事的なモノが二割」と述べたが、「四つの○」のうちの最初の一つ、「経営理念」が特に重要になってくる。
日本経営合理化協会の経営理念は「強く必要とされる存在になる」というものだ。お客様から必要とされていれば、商品・サービスも、会社も、人間でさえ長く生きながらえることができるという実存主義の考え方からきているものだ。
昨年、あるお客様からこのようなことを言われた。盛岡でお客様の発表会に理事長と参加をして、ホテルから盛岡駅に向かうタクシーの中で言われたことだ。
その方は三代目で、三十三歳のときに父親から売り上げ規模一〇〇億円を超える会社を引き継いだ。周りからは「あんな三十三歳見たことない」とか、「俺が三十三歳のときはあんなしっかりしていなかった」などと言われるが、「日本経営合理化協会のセミナーに参加するまでは、決してそんなことはなかった」と、タクシーの中で社長はポロリと言った。
「後継者のためのセミナーに参加してみてはどうか」と銀行から言われて、パソコンで検索して出てきたのが、日本経営合理化協会主催の「後継社長塾」だった。
参加してみて社長は驚いた。参加者は、規模は大小様々だが、どれも素晴らしい会社ばかりだった。そこでの同じ立場、同じ価値観の人々と過ごした一年間が、社長の人生を大きく変えたのだった。
「こんな空間があったのかと。合理化協会さんに出会っていなかったら、今頃ウチの会社はどうなっていたのか」
そう助手席で語る社長の顔は後ろの座席からは見えないが、その言葉は熱を帯びていた。「強く必要とされている」と実感した瞬間だった。
日本経営合理化協会が提供しているのは、セミナーや、出版物や、講演CDだけではない。セミナー会場でお客様を見ているとつくづく思う。
受付の周りに集まり、担当者と話す方々、コーヒーコーナーで、丸テーブルを囲み談笑する方々、休憩時間に講師の先生に質問にいく方々、「休憩時間もシンとすることなく、アチコチで人の輪ができるセミナーというのは他にはない」と、多くのお客様からおっしゃっていただける。これも創業以来五十年、「お客様から強く必要とされるにはどうしたらいいのか」と、考え、商品・サービスを磨いてきたからである。
もちろん、多くの方々からの助言もあった。そういった方々が、いまの我々を支えてくれているのである。本当に、有り難い限りである。
何のために事業をやっているのか。「経営理念」──人生観、世界観、哲学、ロマン、そういったものを社長としてきちんと持ち続けること。守り通すことが重要である。