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中小企業の人材採用の成功事例。離職率を下げる工夫
人は、「おぎゃあ」と生まれてから死ぬまでに、何らかの組織に属して生きていく。個人差はあるが二十歳前後までは、「学校」という組織、そしてそこからは、「会社」という組織に属する。六十歳まで働くとすると、人生の中で一番長く所属するのが会社という組織だ。「ここは面白そうだ」という会社に入りたいとは誰もが思うところだろう。家族と過ごす時間よりも働いている時間の方が長いのだから当然のことだ。
「ウチはこういう会社です」と学生に伝えるために、採用に関して面白い取り組みを行っている会社も色々とある。会社説明会で自社のPR映像を流す会社は多いが、ある会社では、まるで映画のようにスパイが会社に潜入して、「なぜこの会社は凄いのか」というポイントを探る。スパイが解説するので、誰が見ても会社の強みがわかる。評判が良かったのかシリーズ化している。私も観たが、ちょっとその女性スパイに会ってみたくなった。女優のような美女だった。
東北にある会社では、「ウチは社内結婚したカップルが〇〇組います」と、そのカップルの写真を説明会で展示している。学生たちはそれを食い入るように見るという。ふざけているようだが、社長はいたって真面目だ。「太陽さん、ウチは地方なので地元に学生を呼ぶためには、夢を持ってもらわないとダメなのです」と語る。
もちろん、これだけではない。社長は、最終面接に残った学生の家を一軒一軒まわって両親に挨拶する。その数、数十軒だ。ご縁がなかった学生も地元の大切なお客様なのである。そこまでするのかと感心した。
また、ここまでして採用した社員も、すぐに辞めてしまうという会社も多いだろう。採用したら終わりではなく、そこからがスタートだ。
その最初の新入社員研修に力を入れている会社もある。ある会社では、鹿児島にある「知覧(ちらん)特攻平和会館」に新入社員を必ず連れて行く。そこには、国のために若くして命をかけた若者たちの遺書や遺影が残っている。新入社員たちと同じくらいの年齢だ。それを見てどう感じるかは人それぞれだ。しかし、その会社は、知覧で新入社員研修をするようになってから、入社から三年の離職率がゼロになったという。
どういう採用活動をするのか、どういう新入社員研修をするのか、それは社長の考え方次第だろう。
しかし、冒頭で述べたように、家族と過ごす時間よりも会社で仕事をしている時間の方が長いのだ。社長は、「自分が学生を選んで採用している」と同時に、「学生も自社を選んで来てくれている」ということを自覚しなければならない。