アート作品を単なる装飾品としてではなく「資産」としてコレクションをするアート投資は、近年新たな流れになりつつあります。最近の動向とアート投資で大切なことを一度振り返ってみましょう。
コロナウイルスをきっかけに大きく変化
功を奏したオンラインオークション
アカデミックな知識の有無はさておき、傑作と呼ばれる絵画や彫刻を見ると感性が刺激されたり、癒されたり、喜びを感じたりします。アート好きな人が美術館やギャラリーを巡り、作品を収集する理由は、作品に魅力がある、アーティストを応援したいなど感情的な部分が強いです。しかし、ここ10年でアート作品の収集は、感情的資産である以上に経済的な側面が強くなりました。それは、投資家たちがこのアートのフィールドを新しい市場への投資の機会として捉えているからです。
特に新型コロナウイルスのパンデミックは、アート界に大きな変化をもたらしました。それまで主流だった対面式のオークションが中止となり、当然のごとく売上高も減少。しかし、パンデミックをきっかけにオークションの形式をオンラインへと移行したことで状況は好転しています。2021年の世界のアートオークション売上高は約1.9兆円(170.8億ドル)に達し、2020年比で60%増、パンデミック以前の2019年も上回る結果を残しました。取引された作品数も約66万4000点と29%増加し、これまで以上に多くの取引がされています。これは投資対象としてのアートの未来に良い兆しを与えていると言えるでしょう。
ミレニアル世代参入
オンラインオークションの浸透に始まり、2021年は「NFT元年」と呼ばれるほど、アート界でのデジタル革命が躍進しました。2021年10月、大手オークションハウスのサザビーズが独自のNFTプラットフォーム「サザビーズ・メタバース」を開設したことは記憶に新しいです。サザビーズは2021年の総括レポートで、その入札者の78%が新規顧客、そしてその半数以上が40歳未満だったことを発表。クリスティーズも2021年の新規顧客の32%をミレニアル世代が占めたと報告しています。
また、投資目的でアートをオンラインで購入した新しいコレクターの43%がアート作品と連動した小額投資が良い動きであると答えました(参考)。オンラインオークションやNFTの広まりによって、より若い世代へのアクセスが可能なったことを表しています。
アート投資で大切なこと
アート投資にはいくつかの方法があり、リスクとリターンの度合いが異なります。例えば、新進気鋭の若手アーティストのユニーク作品(一点物)を購入したら、数十年後に価値が上がり、高いリターンが得られるかもしれませんし、反対に転売に苦労する可能性もあります。一定数量産されたプリント作品だったら、ユニークよりは安く手に入り、リターンも見込めますが、オリジナルのユニーク作品と全く同じ価値にはならないでしょう。
一つ言えることは、すぐにリターンを得るつもりで作品を購入するのはおすすめできません。なぜなら作品の価値は、制作された時期がアーティストのキャリアにおいてどんな地点にあたるのか、どんなコレクターや美術館に渡り、どんな展覧会で展示されたかなど様々な経緯を経て、長い時間をかけて形成されるからです。
投資を始める際に必ず念頭に置いておかないといけないのは、「リスク」があることです。アート作品を趣味ではなく、投資の文脈で集めようと思うのなら、それなりの知識が必要になりますし、保管場所も考慮に入れないといけません。プラットフォームなど信頼できる情報源を活用して、専門家の意見を仰ぐのが望ましいです。
出典:https://www.sothebysrealty.com/
そして何よりも重要なことは、いつどんな時も「自分が好きな作品を買う」ことです。アート作品を購入するということは、「アーティストの声」「テーマ」「感動」を共有するということです。価値が上がるからと、好きでもない作品に投資をするのはアート投資の“醍醐味”を無駄にしてしまうのと同じです。それに、美術館やギャラリーを巡って、自分が好きなアートのジャンルやアーティストをじっくりと見つけていくのは、楽しい作業になるはずです。個展の初日に足を運べば、アーティストと直接話をすることもできるでしょう。
現代のアートはますます多様化していて、幅広い年齢層や目的、背景をもった投資家に開かれています。不確実な世界ではあるけれど、これからのマーケットを大きく育てていく一人になれるのがアートの世界です。
ANDARTでは、これまで手が届きづらかったバンクシーやアンディ・ウォーホルなどの高額な有名アート作品や大型作品、新進気鋭の若手アーティストの作品が1万円から購入/売買ができ、さまざまな優待を通して気軽に本格アートコレクションを楽しむことができます。メルマガではアートニュースやオークション速報もお届けしています。
文:ANDART編集部
参考
・https://www.abcmoney.co.uk/2022/02/24/investing-in-art-an-open-market-which-is-growing-double-figures-every-year/
・https://www.fool.com/investing/stock-market/market-sectors/communication/media-stocks/art-investment/