新型コロナの感染拡大が止まらないほか、ロシアによるウクライナ侵攻で穀物全体の相場が高騰し、原油価格などのエネルギー相場も高まっていることから、製品価格の値上げに、ハナマルキ、ひかり味噌の大手みそメーカー2社が踏み切った。これにより、中堅みそメーカーも値上げの方向へ傾くのではないかと見られる。
また、海上輸送の需給ひっ迫で、海上運賃が高騰し、コンテナ不足が起こっており、みその輸出が伸び悩んでおり、国内における内食需要の高まりによる売上だけでは、全体の業績の落ち込みをカバーすることは難しい状況だ。
食品需給研究センターがまとめたみその2021年の生産量は、前年比2.7%減の46万2,083t(前年比1万2,617t減)となった。全体的に前年を下回る月が多く、夏場の7月に落ち込み、最需要期の1月、2月、12月も前年を下回った。みその種類別では、米みそが前年比2.6%減の39万4,187t、麦みそが同4.9%減の1万5,653t、豆みそが同4.7%減の2万3,556t、調合みそが同0.4%減の2万8,687tとなった。
〈価格維持難しく、値締め・容量変更・値上げの選択必要、JAS制定で輸出拡大に期待〉
ロシアのウクライナ侵攻による情勢不安で、小麦やトウモロコシなどの穀物の値段が高騰していることから、大豆の価格にも影響を与えている。原油や天然ガスの価格も上がっており、加工食品メーカーにおける生産コストも急騰している。また、大豆やトウモロコシのシカゴ相場も、南米の高温・乾燥による減産見通しを反映し、高値で推移している。
こうした要因から、しょうゆをはじめとした調味料においても、商品価格の値上げが発表され、みそにおいても、大手みそメーカーのハナマルキとひかり味噌が動いた。原料価格や物流費の上昇が続く中、価格維持に努めてきたが、製品の主原料である大豆やその他原料の大幅な価格高騰、また物流費や包装資材費などの価格上昇が続いているため、値上げに踏み切った。両社ともに、一部製品の出荷価格を約5~13%(ハナマルキは4月1日から、ひかり味噌は7月1日から)値上げするとした。
これにより、流通との値上げ交渉が、以前よりも、しやすい環境が整いつつあるものの、中堅みそメーカーにとっては、まだトップメーカーのマルコメが値上げを表明していないことから、値上げに踏み切れないでいるのも事実だ。ただ、現在の製品価格を維持することは、難しく、タイミングを逸したら、当分値上げはできないという考えから、早急な判断が求められている。値締め、容量変更、値上げなどの中から、選択せざるを得ない状況となっている。
一方、みそJASは4月30日から施行される。海外では大豆の発酵食品や日本のみその製造方法を真似て安価に販売している模造品が存在することから、今回のJAS制定で日本のみそが適正価格で販売され、輸出拡大に寄与することが期待される。今後は輸出品を中心に認証マークが付けられ販売されていくだろう。
輸出に関しては、世界的な海上輸送の需給ひっ迫により、海上運賃が高騰し、コンテナ不足が起こっていることから、伸び悩んだ。受注はしているものの、みそを発送できない事態が相次いでいるメーカーが多く見られる。
各社の業績動向では、コロナ感染拡大の影響で、内食需要が高まり、業績の良かった一昨年を上回ることは難しいとされていたが、マルコメ、ひかり味噌は前年を上回って推移し、ハナマルキの21年度は前年並みで着地している。
マルコメは、「丸の内タニタ食堂の減塩みそ」、「プラス糀無添加糀美人」などが伸びており、無添加全体では前年比を上回って推移している。ハナマルキは、「追いこうじみそ」の販売が好調で、当初想定した計画を上回って快走しているという。ひかり味噌は、「無添加円熟こうじみそ」が好調で、特売を抑制しながらも、販売数量を伸ばしており、無添加、有機、国産といったみそにおける3つの柱を中心に販売促進をかけていくとしている。
中堅みそメーカーは全体的に前年を下回って推移している。付加価値の高い高価格帯の商品の販売は好調だが、それ以外は低迷し、業務用みそは、外食産業の低迷により、苦戦を強いられている。
〈大豆油糧日報2022年4月19日付〉