マルコメの22年3月期の業績見込みは、全体で前年比2.1%増の493.5億円の見込みで、うちみそは1.5%増の259.6億円、即席みそ汁は3.0%増の186.2億円、大豆のお肉が27.4%増となっている。新型コロナの影響で、前年度を維持するだけでも難しいと言われていた中で、なぜ前年を上回ることができたのか。そして注目されている値上げについても同社の青木時男社長に聞いた。
──巣ごもり需要で業績の高まった昨年をさらに上回った要因について
みそについて国内では、無添加の「丸の内タニタ食堂の減塩みそ」、「プラス糀無添加糀美人」などが伸びており、無添加全体では前年比8.9%増の見込みとなっている。家庭内食化需要の定着化とともに、健康に良い食品に対しては、少しグレードの高い商品を購入する傾向にあるのではないかと考えられる。液みそに関しても、11.5%増の見込みとなっており、みそとは別に購入され、いろいろな料理にバリエーションをつけたいというニーズにマッチングしているようだ。
海外については、ロサンゼルス工場による北米をはじめ、中国、韓国においても市販品に加えて、加工用原料としての需要が高まっており、2ケタ増となっている。
即席みそ汁については、フリーズドライの顆粒みそが好調で、味の濃淡や分量を好みで調整できることが支持されているようだ。また、具材がみそ漬けになっていないので、非常においしいという声を聞いている。
それから、賞味期間が長く、健康志向の方々が気にするような賦形剤が添加されていないということも、だんだんリピーターが増えてきている要因のようだ。海外はコーヒーにはじまり、調味料のほとんどが顆粒なので、この流れにみそも入ってきたということだろう。
〈賄えるものは国消国産を推進していくことが一番大事/青木社長〉
──ロシア・ウクライナ情勢からの影響は
みそでは麹歩合の高いジャンルが定着をしているが、ロシア・ウクライナ情勢などの影響で、主原料の大豆がひっ迫し、塩も上がっている。そう考えると、米の構成比が高く、麹歩合の高いみそは、米の価格が上がっていない分、価格競争力を持っているのではないかと考えられる。
ウクライナ情勢は先が全く見通せないことから、食料調達、食料安保の観点で、日本で賄えるものに関しては、もっと国消国産を啓蒙していくべきではないか。日本の食生活も、米を主体とする食生活にもう一度回帰するような見直しの機運を高めるべきだ。これまで、当たり前で暮らしていたものが、これからは高騰し、供給が滞ることが日常化していく。日本の食料自給率を高めるためにも、米飯を推進して、賄えるものは国消国産を推進していくことが、一番大事なのではないかと思う。
すべての原材料が高騰している中、米価は安定している。米を見直していき、SDGsの観点からも、肉食の少ない和食を推進していくべきではないだろうか。
──ハナマルキ、ひかり味噌が値上げを発表したことについて
コストが合わないとなれば、品質に影響してくる。それは、お客様にご迷惑をお掛けすることにもなるため値上げはあって然るべきだと思う。当社においても原料価格の高騰を受け、お客様、お取引先様にとって有益となる価格の在り方を模索している最中だ。
──みそのJAS制定について
日本独自の伝統的な生産方法であれば、海外生産も当てはまるため、日本酒のGI表示など、日本製のみそが本物のみそであると定義、位置づけられれば日本のみそ業界にとって、さらに有益になるのではないだろうか。
〈大豆油糧日報2022年4月15日付〉