2021年は新規上場(IPO)が14年ぶりに100社を超える“上場熱”の活況な一年となり、東京証券取引所が運営するプロ投資家向け市場「TOKYO PRO Market(TPM)」にも過去最多の13社が上場しました。2019年より日本M&AセンターはTPM上場を支援する「J‐Adviser」として、企業の成長と市場の発展に貢献してきました。今回、日本M&AセンターTOKYO PRO Market事業部長の雨森良治が、東京証券取引所上場推進部の横尾直樹課長にTPMの魅力をお聞きしました。 ※感染予防対策を講じた上でインタビュー時のみマスクを外しました。
―TPMについて教えてください
現在のTOKYO PRO Marketは、2009年に開設された東証とロンドン証券取引所との共同出資による「TOKYO AIM」が始まりで、2012年からは東証が単独で運営しています。2022年は東証による単独運営からちょうど10年になる節目のメモリアルイヤーで、TPMの注目度も確実に高まっています。TPM上場には株主数や利益の額などの形式要件がなく、また必ずしも新株を発行する必要もないことから柔軟な上場制度で、経営者がある程度オーナーシップを維持したまま上場できる点が特徴です。
TPMには上場を希望する企業を支援する伴走者のようなJ-Adviser制度があります。ここ数年でJ-Adviserの新規参入が相次ぎ、プロモーションも相まってTPMの知名度も高まっている状況にあります。5年ほど前にはTPMに上場する企業は年間数社でしたが、これからは毎年、二桁の上場が見込めるほどの環境に成長していると感じています。
―2022年4月に東証の市場再編が予定されていますが、TPMに影響はありますか
TPMは再編対象の市場区分ではないため影響はありません。市場再編について簡単に説明すると、2013年に東京証券取引所と大阪証券取引所が統合され、両取引所の市場区分がそのまま維持されてきました。そのため東証一部、東証二部、マザーズ、JASDAQスタンダード、JASDAQグロースの計5つの市場がありました。しかし、複数の市場のコンセプトが重複し、上場企業にとっても投資家にとってもわかりにくい状態となっていました。それらを是正し、よりわかりやすい市場区分への再編に向けて政府の金融審議会での議論が重ねられ、4月より一般市場はプライム、スタンダード、グロースの三市場に再編されます。今回の再編対象ではないTPMはこれまでのコンセプトを維持し、更なる活性化に向けて取組んでいきます。
この再編は、経営者にとって自社がどの市場を選択すれば良いか、どの市場区分が適切かを検討するきっかけになると考えています。それぞれ市場のコンセプトが異なり、会社の規模や成長ステージに応じて選択していただける環境が整います。TPMは一般市場(プライム、スタンダード、グロース)に比べて、上場基準が緩やかで、ファーストステップとして取り組みやすい市場です。TPMをエンドマーケットとして捉えていただいても良いと思いますし、一般市場へとステップアップすることも選択肢になります。
―TPMに上場するメリットについて教えてください
新規上場(IPO)というと、一般的には資金調達を目的とするイメージを持つ方が多いと思います。ただ経営者の方々と話すなかで、必ずしも目的が資金調達だけではなく、上場ニーズが多様化していると感じています。TPMは、上場時の資金調達をマストとする制度設計にはしていません。そのため、会社の知名度や信用度の向上、人材採用の強化、また社内管理体制やガバナンスの強化といった面を目的に上場いただけることは、TPMならではのメリットだと感じています。一方でTPMの課題もあります。特定投資家に限定している市場ゆえに株式の流動性が低いといった声も上がっています。今後更に市場を活性化させ、成長意欲のある企業に成長資金が入りやすくするために、この特定投資家の要件見直しも議論されています。
―TPM上場を目指す経営者にメッセージをお願いします
2022年3月現在、東京証券取引所に上場している会社は約3,800社あります。上場企業は日本国内の株式会社のうち1%にも満たず、そのほとんどが大企業で占められており、それが常識だととらえられているかと思います。TOKYO PRO Marketは、その常識を壊し、上場という概念に新しい価値を生み出すことができるマーケットだと思っています。TPMは、業種・業態、また会社の規模の大小を問わず、成長意欲のある経営者の皆さんを後押しするマーケットでありたいと考えています。TPMを活用し、成長に繋げていくツールとして使って欲しいので、是非皆さんもチャレンジしていただきたいです。