こめ油が好調だ。「1度使うとリピート率の高い油」(こめ油メーカー)ということもあり、特に大容量がけん引している。
一方で、米の国内消費が減少している中、原料の米ぬかの調達コストは上昇しており、輸入原油についても、世界的な油糧原料の相場高騰、コンテナ不足による需給ひっ迫などで、調達価格の高騰が続いている。それを受け、2021年は3度の価格改定が実施された。業界ではコスト増や安定供給といった課題への対応が必要となっている。
2021年上期(4~9月)の家庭用食用油の販売実績(日清オイリオグループ推計)は、前年が内食需要の高まりで市場が大きく拡大した裏年となったこともあり、金額が前年同月比5.2%減の817億円、重量は同8.8%減の16万4451tと金額、重量ともに減少した。
油種別で見ても減少が目立つ中、こめ油は18.7%増の59億円と引き続き大幅に伸びており、好調さが際立っている。
こめ油は、国産米ぬかなどの原料高騰などを受け、ボーソー油脂や築野食品工業が6月、9月、12月と、3回の価格改定を実施し、いずれも30円/kg値上げした。ただ、上期に限れば、3~4月、6月、8月と、3回の価格改定を実施した汎用油との価格差が縮まったことも、追い風となったもようだ。
日本こめ油工業協同組合の鈴木清和専務理事は、こめ油の人気について、「使いやすさと健康面だ。揚げ物をしてもあまりにおいがせず、油っぽさもない。熱を加えても酸化が少なく、健康的なイメージがある。大容量が売れている。品質や健康面は以前からPRしていたが、使ってみるとよく分かり、リピーターが増えている」と分析する。
〈市場は順調に拡大も調達コスト上昇、組合として国産米ぬか集める取り組み必要〉
こめ油市場は2020年に、国内生産と輸入を合わせて10万tを超えた。2021年も10万t超えは確実と見られ、市場は順調に拡大しているが、こめ油業界の課題は、米の消費量が減退していることから、国産米ぬかの発生量が減少し、輸入原油についても調達コストが上昇していることだ。
鈴木専務理事は、「国産米ぬかは今まで集めてなかったところからも集めている。輸入原油もコンテナが取れず、積み込みが遅れている。こめ油の消費量は増えているが手当は難しい」と説明する。
農水省の油糧生産実績では、2020年のこめ油の生産量は6万8,705t、米ぬか処理量は35万70tとなった。2021年は1~11月累計でそれぞれ前年同期比1.7%増の6万3513t、0.9%増の32万1231tで推移しており、米ぬか処理量は微増にとどまっている。
国産米ぬかは、こめ油のほかに、キノコの培地用や飼料用、漬物用、肥料用などと競合しているという。20年は国産米ぬか発生量の約58%を集めているとしており、「組合として、58%以外を集める取り組みをしていかないといけない」としている。
〈大豆油糧日報2022年1月19日付〉