ビーズソファブランドの「Yogibo(ヨギボー)」のビーズソファは、身体へのフィット感が絶妙であると話題となっており、この手の商品はよく「人をダメにするソファ」と称される。そんなYogiboに関する1本のニュースが報じられた。米国本社を日本企業が買収したというのだ。買収したのはどんな企業だろうか?
日本の株式会社ウェブシャークがYogiboを買収
Yogiboを買収したのは、2014年11月からYogiboの日本総代理店を務めていた「株式会社ウェブシャーク」だ。2002年に設立され、大阪に本社を置く企業で、卵バンズを使用したハンバーガー「エッグウィッチ」の店舗などを運営していることでも知られている。
買収金額は非公開だが、報道では「100億円超」(日経新聞)という数字が出ている。ウェブシャークはアメリカのYogibo LLCと株式の持分譲渡契約を2021年12月11日に締結し、株式の取得を2021年12月30日に完了したという。
同社は、2022年1月13日に発表したプレスリリースで、Yogiboを買収した狙いなどについて説明しているが、まずその前にYogiboとはどのようなブランドなのかを振り返っておこう。
そもそも「Yogibo」とは?
Yogiboの製品は、Eyal Levy(エヤル・レヴィー)氏が妊娠していた妻のために開発したビーズソファに起源を持つ。同氏は、のちにYogibo LLCを創業し、妻が妊娠中でもうつ伏せで楽に寝られるよう、ビーズソファを作った。
このビーズソファの事業展開が本格的に始まったのが2009年だ。Levy氏が米ニューハンプシャー州を拠点にYogibo LLCを設立し、アメリカ国内のショッピングセンターなどで商品を販売していった。
その後の2014年、Yogibo LLCはウェブシャークと日本総代理店契約を結び、日本でもYogiboの販売がスタートした。Yogiboは若者世代を中心に広く知られるようになり、一部カラーは品薄状態が続くなど、人気が高まっていった。
Yogiboのビーズソファの人気が高まったのは、さまざまな形状にビーズソファを変化させ、ソファとしてはもちろんだが、ベッドやリクライニングチェアのような使い方もできるからだ。現在では、宿泊施設やオフィスなどでもYogiboのソファを見掛けることもある。
ちなみに、Yogiboの日本店舗は2021年12月時点で86店舗あり、報道によれば、世界全体の店舗数の約7割が日本の店舗だという。
買収の経緯は?今後の展開は?
では、ウェブシャークはなぜYogiboの米国本社(Yogibo LLC)を買収することになったのか。プレスリリースによれば、Yogibo LLC側から買収に関する打診があったことがきっかけだったという。
今後については「現在までYogiboは各国のブランドデザインが均一化されておらず、海外渡航したユーザーのブランドイメージに悪影響を及ぼす可能性があることから世界的なデザインの統一を推進いたします」と説明している。
また、ウェブシャークは日本事業でビッグデータやAI(人工知能)を活用する需要予測技術を販売戦略策定で活用しており、このような技術を各国のYogibo店舗に導入することも説明されている。
付け加えると、Yogiboは現在、アメリカと日本のほか、カナダや韓国、台湾、タイ、シンガポール、オランダなどでも店舗が展開されている。ウェブシャークがYogiboの世界戦略の舵取りをするようになり、Yogiboブランドがさらに世界で存在感を高めていけるか、注目だ。
生産体制の見直しにも乗り出す計画か
報道によれば、ウェブシャークの売上高の多くはYogiboの事業によるもので、ウェブシャークはYogibo LCCの買収を機に、社名を「ヨギボー」に変更することを検討するようだ。
世界展開を加速させる方針であることも報じられており、経済成長や人口の増加が見込まれるマレーシアやインドに進出する計画を立てているという。現在の生産体制に関しては見直しを行い、品質向上によって不良品率を下げていく方針のようだ。
Yogiboに関しては2021年7月、日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」と、タイトルパートナー契約を結んだことでも知られる。
当時、Yogiboは報道発表で「ジェンダーの枠を越え一人ひとりが輝く社会の実現に向けた取り組みを推進し、社会にポジティブな影響を与えることができると考え、この度の契約を締結するに至りました」と契約締結の理由についてコメントしている。
製品展開以外のこのような取り組みについても、引き続き注目していきたいところだ。
米ブランド買収を試みる日本企業が今後増えるかも
米国発の有名ブランドの本社を日本企業が買収する事例は決して多くはない。ウェブシャークがYogibo買収でさらなる成長を果たせれば、ほかの日本企業が同様の動きに追随しようというムードが高まるかもしれない。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)