減価償却,方法の変更
(写真=PIXTA)

建物や機械、自動車など資産を複数年に分けて経費計上していくのが減価償却だ。減価償却の方法は、法律により決められているものと選択できるものとがある。また選択できるものについては変更も可能だ。この記事では、減価償却の2つの方法である定額法と定率法の計算方法、および減価償却方法を変更するためにはどうすればよいのかを見ていこう。

減価償却とは?

業務のために使用する建物や機会、自動車などの資産は、一般に年数を重ねるごとに価値が減っていく。このような資産を「減価償却資産」と呼ぶ。土地や骨董品などのように時間がたっても価値が減らない資産は、減価償却資産ではない。減価償却資産を取得するためにかかったお金は、取得したときに全額を経費とするのではなく使用できる全期間にわたって分割して経費計上していくことが必要だ。

使用できる期間は「法定耐用年数」として資産の種類ごとに定められている。例えばRC造の住宅なら47年、木造の住宅なら22年といった具合だ。

⇒ 法定耐用年数の詳細はこちら

少額の減価償却資産について

少額の減価償却資産については、通常の減価償却方法にかわる簡便な償却方法が以下の通り認められている。

  1. 使用可能期間が1年未満、あるいは価格が10万円未満のものについては、購入した年に全額を経費とすることができる。

  2. 価格が10万円以上20万円未満のものについては、3年間に分割して経費としていくことが認められる。

  3. 青色申告書を提出する中小企業は、価格が10万円以上30万円未満のものについては、合計して300万円までを購入した年の経費とすることができる。

減価償却の主な方法は「定額法」と「定率法」

減価償却の主な方法は「定額法」と「定率法」の2つだ。定額法と定率法のどちらを用いるかは、下の表の通り個人事業主と法人のそれぞれで減価償却資産の種類ごとに、あらかじめ決められているものと選択できるものとがある。

資産の種類 個人事業主 法人
法定償却方法 選択 法定償却方法 選択
建物 定額法 定額法
建物附属設備
構築物
機械装置 定率法 定率法 定額法
車両運搬具
器具備品
ソフトウェア 定額法

上の表で見る通り建物と建物附属設備、構築物、およびソフトウェアについて減価償却方法は個人事業主および法人とも定額法と定められており選択の余地はない。一方、機械装置や車両運搬具、器具備品については、定額法と定率法とを選択することができる。ただし法定償却方法は、個人事業主の場合は定額法、法人の場合は定率法とされている。

減価償却方法を法定の方法とは異なるものにする場合には、所轄の税務署に届出をしなくてはならない。届出をしない場合は、自動的に法定の方法となる。また減価償却の方法を変更する場合には、変更しようとする年の3月15日までに所轄の税務署へ申請し承認を受けなければならない。

「定額法」における減価償却費の計算方法

定額法とは、毎年同額の減価償却費を計上していくものである。同額であるために、わかりやすいことがメリットだ。

定額法減価償却費の計算方法

定額法の減価償却率は、次の式で求められる。

・定額法償却率 = 1÷法定耐用年数

法定耐用年数が2~6年までの定額法償却率(2007年4月1日以降取得の場合)を表にまとめると下のようになる。

法定耐用年数 定額法償却率
2年 0.500
3年 0.334
4年 0.250
5年 0.200
6年 0.167

定額法における減価償却費は、次の式で求められる。

・定額法減価償却費=取得価額×定額法償却率

取得価額100万円、法定耐用年数10年のケースにおける例

例として取得価額100万円、法定耐用年数10年のケースにおいて定額法の減価償却費を計算してみよう。このケースでの定額法償却率は、次のようになる。

・定額法償却率=1÷10=0.100

したがって1~9年目までの減価償却費は、次のようになる。

・定額法減価償却費=100万円×0.100=10万円

ここで最終年の10年目のみ、減価償却費は9万9,999円となる。なぜなら「残存価額」として1円を形容することが定められているからだ。そのため減価償却は残存価額である1円を残して行う。この「1円」は、減価償却資産があったことを忘れないようにするための備忘価額だ。備忘価額がなくなるのは、資産を処分または売却したときとなる。

「定率法」における減価償却費の計算方法

定率法とは、未償却残高に対して同じ割合で減価償却を行ってく方法である。未償却残高は、資産を購入した直後は多く償却を行うにつれて減っていくため、減価償却の金額もはじめは多く年度を重ねていくごとに少なくなっていくのが特徴だ。そのため定率法は早い時期に取得経費を計上できることがメリットである。

ただし定率法においては、「償却保証額」が決められる。計算によって得られた減価償却の金額が償却保証額を下回った場合には、それ以降は定額を経費として計上していく。

定率法減価償却費の計算方法

2012年4月1日以降に取得した減価償却資産について定率法の減価償却率は、「200%定率法」が採用されている。200%定率法においては、定額法の減価償却率を2倍したものが定率法減価償却率となる。定額法の減価償却率は上で見た通り「定額法減価償却率=1÷法定耐用年数」だ。したがって定率法減価償却率は「定率法減価償却率=2×1÷法定耐用年数」となる。

減価償却費は、「定率法減価償却費=未償却残高×定率法減価償却率」で計算される。

取得価額100万円、法定耐用年数10年のケースにおける例

ここでも取得価額100万円、法定耐用年数10年のケースについて定率法における減価償却費を計算していこう。法定耐用年数10年の定額法減価償却率は、上で見た通り「0.100」。したがって定率法減価償却率は、「2×0.100=0.200」だ。1~6年目までの定率制減価償却費は、下の表の通りとなる。

年数 未償却残高 減価償却費
1年目 100万円 100万円×0.200=20万円
2年目 100万円-20万円=80万円 80万円×0.200=16万円
3年目 80万円-16万円=64万円 64万円×0.200=12万8,000円
4年目 64万円-12万8,000円=51万2,000円 51万2,000円×0.200=10万2,400円
5年目 51万2,000円-10万2,400円=40万9,600円 40万9,600円×0.200=8万1,920円
6年目 40万9,600円-8万1,920円=32万7,680円 32万7,680円×0.200=6万5,536円

1年目の減価償却費は、未償却残高100万円に定率法減価償却率0.200をかけたものとして計算されるため20万円となる。2年目は、未償却残高は100万円から1年目に償却した20万円を引いた80万円だ。減価償却費は、その80万円に減価償却率0.200をかけた16万円となる。以下同様の計算となり、7年目の減価償却費を同様に計算すると「未償却残高=32万7,680円-6万5,536円=26万2,144円」だ。

そのため「26万2,144円 ×0.200=5万2,428.8円≒ 5万2,429円」と求められる。しかし、この場合、これをそのまま減価償却費には適用しない。定率法の場合には、「償却保証額」が定められているからだ。償却保証額とは、定率法減価償却において償却すべき最低限の金額のこと。定率法減価償却においては、減価償却費は年を追うごとに減っていく。

減っていく減価償却費が最低保証額を下回った場合には、その後は定額法に移行して減価償却をしていくこととなる。償却保証額は、「減価償却資産の取得価額×保証率」で求められ保証率は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令第9,10」に規定されている。

※減価償却資産の耐用年数等に関する省令

保証率は、耐用年数によって決められており、この例における耐用年数10年の場合には「0.06552」だ。(2012年4月1日以後に取得された減価償却資産の場合)この例での取得価額は100万円なので償却保証額は、「100万円×0.06552=6万5,520円」となる。計算によって求められる7年目の減価償却費5万2,429円は、上の償却保証額6万5,520円より少ない。

したがって8年目以降の定率法減価償却費は、定額法の場合と同様の計算方法、「減価償却費=改定取得価額×改定償却率」に変更されることになる。ここで「改定取得価額」は、計算によって得られる減価償却費が償却保証額を下回った年の未償却残高だ。また「改定償却率」は、やはり「減価償却資産の耐用年数等に関する省令第9,10」で定められている。

耐用年数が10年の場合には、改定償却率は「0.250」。したがってこの例で7年目以降の減価償却費は、「改定取得価額×改定償却率=26万2,144円×0.250=6万5,536円」となる。7~9年目までは、下の表の通り、この6万5,536円ずつを毎年償却していく。

年数 改定取得価額 減価償却費 未償却残高
7年目 26万2,144円 26万2,144円×0.250=6万5,536円 26万2,144円-6万5,536円=19万6,608円
8年目 26万2,144円 26万2,144円×0.250=6万5,536円 19万6,608円-6万5,336円=13万1,072円
9年目 26万2,144円 26万2,144円×0.250=6万5,536円 13万1,072円-6万5,536円=6万5,536円

10年目は、計算上ではやはり6万5,536円を償却することになる。しかし定率法においても定額法と同様、残存価額は「1円」と決められていて、減価償却はこれを残さなければならない。したがって10年目の減価償却費は、「6万5,336円-1円=6万5,335円」となり、これで減価償却が完了する。

減価償却方法の変更は可能 書類提出も必要!

減価償却の2つの方法である定額法と定率法とを見てきた。減価償却資産の種類のなかで償却方法として定額法と定率法とを選択ができるものについては、現在行っている償却方法を変更することもできる。減価償却方法を変更するためには、個人事業主の場合であれば「所得税の減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」の提出が必要だ。

法人の場合であれば「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を所轄の税務署へ提出する。変更承認申請書には、納税地や住所・氏名などのほか、以下のような内容を記載しなければならない。

・資産・設備の種類
・現在の償却方法
・採用した年
・新たに作用しようとする償却方法
・変更の理由

現在の方法を採用してから3年がたっていない場合には、合併や分割のためなど特別な理由がない限り変更が認められない。

年の途中で購入した場合の減価償却方法

減価償却資産を年の途中で購入した場合には、「月割り」により減価償却費を計算する。例えば、ある減価償却資産を9月25日に購入したとしよう。月の途中であっても1ヵ月とみなすため、その年に使用する月数は9~12月の「4ヵ月」となる。4ヵ月分の減価償却費は、定額法の場合には「1年分の減価償却費×4ヵ月÷12ヵ月」で算出。

また減価償却の最終年も8ヵ月分を償却しなければならない。その際の償却費も「1年分の減価償却費×8ヵ月÷12ヵ月」として計算される。

中古品を購入した場合の減価償却方法

中古品を購入した場合の減価償却の方法は、その中古品の価格がまったく同じものを新品として購入した場合の価格の「50%を超えるか」「50%以下であるか」によって異なる。

中古品の価格が新品の価格の50%を超える場合

法定耐用年数を適用する。すなわち、新品の場合とまったく同じようにして減価償却費を計算する。

中古品の価格が新品の価格の50%以下である場合

減価償却の方法には、次の2つの方法がある。

  1. 使用可能期間を見積もる
  2. 以下の簡便法を用いる

・法定耐用年数の全部を経過した資産の場合
その法定耐用年数の20%に相当する年数とする。

・法定耐用年数の一部を経過した資産の場合
法定耐用年数から実際に経過した年数を差し引き、経過した年数の20%に相当する年数を加える。 (ただし1年未満の端数は切り捨て2年に満たない場合は2年とする)

耐用年数の途中で処分/売却した場合の経費計上方法

減価償却資産を処分や売却した場合の経費計上方法には、「直接法」と「間接法」の2つがある。

処分した場合の経費計上方法

例えば20万円で購入した備品をすでに15万円を減価償却しているとしよう。残存価格5万円の備品を処分したとする場合、直接法においては、借方に「固定資産除去損 5万円」、貸方に「備品 5万円」を記帳する。また間接法は、備品の残存価格を固定資産から直接差し引くのではなく新たな勘定項目「減価償却累計額」を使用。

貸方に「減価償却累計額 15万円」と「固定資産除去損 5万円」を貸方に「備品 20万円」を記帳する。

売却した場合の経費計上方法

上の例と同様に20万円で購入した減価償却資産をすでに15万円減価償却し、3万円で売却した場合はどうだろう。直接法では、借方に「現金 3万円」「固定資産除去損 2万円」を貸方に「備品 5万円」を記帳。間接法では、借方に「減価償却累計額 15万円」「現金 3万円」「固定資産除去損 2万円」を貸方に「備品 20万円」を記帳する。

減価償却資産の修繕はどうやって計上する?

減価償却資産を修繕した場合には、基本的には「修繕費」として経費を計上する。ただし修繕の内容によっては、「固定資産の資本的支出」として単純に経費計上ができなくなることがあるため注意が必要だ。修繕とみなされるのは、原則として現状を回復するものである。また「20万円未満の費用のもの」「3年以内の周期で行われるもの」については「修繕費」とみなされる。

一方、現状の回復にとどまらず付加的機能を加えるために行ったものは、「固定資産の資本的支出」だ。建物の場合なら耐震補強や防水加工などが資本的支出とみなされることになる。資本的支出の場合は、単純に経費として計上できないため、耐用年数に応じて減価償却をすることが必要だ。

減価償却の税法における取り扱い

減価償却の税法における取り扱いで注意が必要なことは、以下の通りとなる。

法人税法

減価償却費が過大に計上されている場合には、超過部分は損金には算入されないため超過部分相当額が加算調整される。逆に減価償却費が過小に計上されている場合においての減価償却は、会計上損金経理がされていることが、所得計算で損金の額に算入するための要件だ。したがって減価償却を過小に計上しても所得を計算する際には損金には算入されない。

所得税法

個人事業主の場合には、建物が事務所兼自宅などである場合もあるだろう。このような建物は、事業用の部分と家事用の部分とを区分したうえで事業用の部分のみが経費として算入される。

「取引の記録などに基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます」
出典:国税庁No.2210 やさしい必要経費の知識

国税庁では上記のように定められているため注意が必要である。

減価償却の方法は自分にあったものを

減価償却の方法は、定額法と定率法との2つだ。減価償却資産の種類および法人か個人事業主かにより減価償却の方法は決められているものと選択できるものとがある。また減価償却の方法は、選択できる場合、変更することも可能だ。定額法は、毎年決まった減価償却費を計上していくもので額が決まっているために把握しやすいことがメリットといえるだろう。

一方、定率法は毎年決まった割合を減価償却していくものである。取得経費を早期に計上できることがメリットだが計算が複雑になるため、選択する際は注意しておこう。

文・THE OWNER編集部