〈フレーバー納豆カテゴリ伸長、たん白質摂ブームは大豆食品に追い風〉
豆腐・納豆など大豆加工品業界を取り巻く環境は、主原料の大豆、食用油など各種コスト上昇が直撃している。値上げ交渉の動きも見られるが、現状各社の対応状況はまちまちで、業界全体でどこまで価格是正に取り組めるか、今後の課題となっている。
今期の豆腐市場は、コロナ禍の内食需要も一巡し、総務省・家計調査(2人以上の世帯)の豆腐支出金額は2~7月まで一貫して前年を割っている。梅雨明けが早く猛暑となり、7月の購入数量は好調だったが、単価下落が響いた。8月は長雨の影響が懸念された。
消費ニーズはコロナ禍前に戻り、1丁タイプの反動減が大きい。一方、個食タイプが堅調で、単身者の増加、高齢化により今後もこの構図が続くとみられる。トレンドの個食鍋にも合致する。そのほか、充填が好調との声も聞かれ、「食品ロス削減意識の高まりなどで、日持ちする特性が支持されているのではないか」(メーカー)。
新型コロナウイルス変異型拡大で内食が長引き、少し高級なものが選択される傾向にあるとみられる中、国産大豆商品も底堅い。
また、植物性たん白質を打ち出した商品が広がりを見せ、これらは若年層など豆腐のノンユーザー取り込み、豆腐の価値の再認識に繋がる期待がある。アサヒコが製造・販売する「TOFFU PROTEIN(トーフ プロテイン)」シリーズは、お肉やご飯の替わりとして楽しめる主食・主菜系(豆腐・大豆のお肉、豆腐のごはん)から、副菜(豆腐のスープ)、デザート(豆腐のおやつ)までそろえ、毎食の植物性たん白質摂取をサポートする。
相模屋食料は、環境にも人にもやさしい植物性100%のサステナブルフードとして、お肉のような食感と味わいを実現した「肉肉しいがんも」を新発売。さらに、「ひとり鍋」など好評なおとうふ惣菜シリーズを、「たんぱく質のとれる」シリーズにリニューアルし、豊富にたん白質を含んでいることをアピールする。
納豆市場は、2020年の爆発的な需要拡大の反動減が大きく、1~7月累計支出金額は7%減となった。一方で前々年は超える進捗で、納豆需要の底堅さが示されている。
ひきわり納豆が続伸しているほか、ミツカンが2021年2月にリニューアルした「ご飯に合う濃厚焼肉タレで食べる旨~い極小粒納豆」が好調な推移を見せるなど、差別化しやすいフレーバー納豆カテゴリが伸長している。各社の秋冬新商品も、添付たれにこだわった商品が目立つ。ミツカンが新発売した「酢納豆」は、数種類のお酢の入ったたれで楽しむ納豆で、高まる健康志向に合致している。
あづま食品は、国産の大根おろしに唐辛子のピリッとしたうま味をプラスしたおろしだれを添付した、秋冬限定「もみじおろしだれ納豆」を投入。タカノフーズは、からしのかわりに、調味料としてニーズがあり納豆とも相性が良い柚子胡椒を添付した「柚子こしょう納豆」を新発売したほか、ヤマダフーズは、ほんのり甘い「米糀ペースト使用たれ」を添付した新商品「米糀納豆」を展開している。
納豆連がこのほど実施した、2年に1度の納豆に関する消費者調査結果では、納豆の健康効果の認知を聞く設問で、新たに加えた「免疫力を高める」が最も高い結果となるなど、コロナ禍を機に、納豆の健康価値の再認識に繋がったとみられ、今後も成長市場として期待される。