矢野経済研究所
(画像=Monet/stock.adobe.com)

2021年の生化学向け研究用試薬市場は、前年比102.2%の1,183億6,000万円と予測

~国内市場が飽和状態であることから、試薬メーカー各社とも新しい研究領域を探すことに注力~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の生化学向け研究用試薬市場の調査を実施し、市場・各需要分野別の動向や参入企業動向、将来展望を明らかにした。

生化学向け研究用試薬市場規模推移・予測

矢野経済研究所
(画像=矢野経済研究所)

1.市場概況

生化学向け研究用試薬は、生化学や免疫学、分子生物学などさまざまな基礎研究から医薬品や診断薬、化学品、農水産品などの産業領域における応用研究などまで、きわめて広い領域で使用される試薬であり、アミノ酸やペプチド、タンパク質、糖、脂質、核酸などの生体成分そのものから、免疫化学研究用、細胞生物研究用、培養研究用などまで、様々な試薬が存在する。近年、特に遺伝子工学や免疫細胞研究の発展は著しく、新規技術に伴う新しい研究用試薬も数多く生まれてきている。

国内の生化学向け研究用試薬市場は、政府(文部科学省、厚生労働省、農林水産省など)の予算規模に左右されるところがあり、試薬ユーザーの約7割を占めるといわれる大学、国公立研究所はその影響を大いに受ける。財政再建のために公的予算の見直しが続いており、大学および国公立研究所の予算も研究分野毎に影響が出ている。また、民間企業でも研究開発投資は堅調ながら、研究分野の絞込みも見られ、生化学向け研究用試薬市場全体としては伸び悩んでおり、研究用試薬業界における競争は激化している状況にある。

こうした中において、政府によるライフサイエンス分野への積極的な取り組みが予算案として示されており、今後の研究需要を把握する上で、研究用試薬市場参入企業にとってこれらは重要な情報となっている。2021年度における医療分野の研究開発関連予算に関する概算要求には、日本医療研究開発機構(AMED)対象経費として1,439億円、インハウス研究関連経費として852億円が盛り込まれた。前年度と比較してAMED関連経費は180億円、インハウス研究関連経費は60億円の増額要求となった。

2.注目トピック

「クリニカルシーケンス」としてのNGS利用

国内において、これまでDNAシーケンサーは主に研究用として利用されてきた。市場がさらに拡大していくには、シーケンサーの特長を活かした診断目的としての利用を普及させていくことが、課題であると見られる。

診断としての利用に関しては、シーケンサーメーカー各社が各種の疾患パネルを開発するなど、診断を見据えた研究用領域や、プレクリニカル領域の製品を上市する動きを見せている。また、臨床検査センター側も、今後の遺伝子検査需要拡大を見据え次世代シーケンシング(NGS)製品の導入を進めている最中であり、今後の伸張領域としてNGSによる解析を設定する企業もあるなど、受託体制が整いつつある。
診断目的で利用するためには、分析結果が治療行為に活かされることが大きな条件となる。そのため、具体的な対象疾患、あるいは遺伝子検査の結果が必要になる治療行為を明確にする必要がある。また、疾患関連遺伝子などのSNP(Single Nucleotide Polymorphism)解析のツールとしての利用の可能性を探るだけではなく、既存の診断方法に対する優位性を示すことも効果的と見られる。たとえば、PCR検査を利用していた既存の診断法に対して、DNAシーケンサーを利用することで、より効率化・低価格化が実現できるなどの視点も、製品の普及を進める上で重要になってくると考える。

3.将来展望

国内の生化学向け研究用試薬市場は、政府による大型プロジェクトの終了や、昨今の経済状況による民間企業の研究開発投資縮小などが影響し、微増から横ばい傾向で推移する見込みである。2021年の生化学向け研究用試薬市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年比102.2%の1,183億6,000万円になると予測する。

国内市場が飽和状態であることから、試薬メーカー各社とも新しい研究領域を探すことに注力している。現状の事業領域だけではなく、その周辺にある応用領域まで視点を広げ、自社の製品がその分野でどう生かせるか、あるいは生かすためには何が足りないかを見極めることが肝要である。あわせて、研究者に向けた情報発信もさらなる充実が求められる。従来からある各種ニュースレターなど紙媒体をはじめ、情報収集はネット検索などを利用して行われることから、ウェブサイトでのデータ提示やその操作性向上なども、試薬売上拡大のためには重要になると考える。

調査要綱

1.調査期間: 2021年3月~5月
2.調査対象: 生化学向け研究用試薬を製造・販売している国内企業
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
<生化学向け研究用試薬とは>
本調査における生化学向け研究用試薬とは、生化学、免疫学、分子生物学などさまざまな基礎研究から医薬品、診断薬、化学品、農水産品などの産業領域における応用研究などに利用されている試薬全般を対象とした。
<市場に含まれる商品・サービス>
遺伝子工学関連試薬、電気泳動用試薬、プロテオーム関連試薬、細胞・組織培養用試薬、免疫・細胞研究用試薬、その他生化学研究用試薬

出典資料について

資料名2021年版 生化学向け研究用試薬に関する市場動向調査
発刊日2021年05月31日
体裁A4 161ページ
定価220,000円 (本体価格 200,000円)

お問い合わせ先

部署マーケティング本部 広報チーム
住所〒164-8620 東京都中野区本町2-46-2
電話番号03-5371-6912
メールアドレスpress@yano.co.jp

©2021 Yano Research Institute Ltd. All Rights Reserved.
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。