6月29日、バルセロナで開催された携帯通信機器の展示会 Mobile World Congressにオンラインで参加したスペースXのイーロン・マスクCEOは宇宙通信プロジェクト “スターリンク” について「8月から世界全域で高速ブロードバンド事業を開始する」と発表した。
スターリンクは既に6万9,000人の予約を受け付けており、これを1年以内に50万人まで増やす。既に打ち上げられた人工衛星は1,500基、将来的には1万5,000基体制とする計画だ。
宇宙通信サービスにはアマゾンも準備を進めている。同社の “プロジェクト・カイパー” は、低軌道に3,236基の周回衛星を配備、北緯56度から南緯56度まで過疎地や山間部を含むあらゆる地域へブロードバンドサービスを提供する、というもの。
投資額は100億ドル、事業の開始時期についての正式な発表はないが、2026年内に計画の半数、2029年までに全基の衛星を配備するとされる。
国内勢ではソフトバンクが先行する。6月9日、ソフトバンクはSkylo Technologiesとの提携を発表、同社の衛星通信サービスを活用し、2022年から漁業や海運など産業向けにIoTサービスを提供する。
ソフトバンクは成層圏の通信サービスを子会社HAPSモバイルが、低軌道衛星をソフトバンクグループの投資先OneWebがカバーする体制を整えてきており、今回の提携によって地上基地局から宇宙までシームレスな通信サービスの実現が可能となる。
通信インフラの主戦場は地上から非地上系へ移りつつある。しかし、壮大なビジネスには膨大な資金が必要となる。ソフトバンクグループが出資したOneWebは2020年3月、先行投資負担に耐えられず経営破綻に追い込まれた。しかし、7月には英国政府を含むコンソーシアムが資金支援を表明、ソフトバンクグループも今年1月に再投資を決断、事業の将来性に賭ける。
リスクの大きさは言うまでもない。しかし、「黒字化には50億から100億ドルの追加投資が必要、総投資額は200億から300億ドルになるだろう」と語るマスク氏は未来への自信に溢れている。いずれスペースXは本社を成層圏外に登記する、などと言い出しかねない勢いだ。未来を思い描くことは誰にでも平等である。彼我の差は「構想した未来を信じる力」に生じるのかもしれない。
今週の“ひらめき”視点 6.27 – 7.1
代表取締役社長 水越 孝