日本国内での高齢化がさらに進行し、シニア関連マーケット市場は拡大基調で推移する見通し
~コロナ禍はシニア関連マーケットにも直撃、ニューノーマルへの対応が進む~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内のシニア関連12市場65サービスを調査し、2019年のシニア世代を主力ターゲットとするサービスやシニア世代の需要を積極的に取り込もうとしている企業の動向、将来展望を明らかにした。
1.調査結果概要
本調査では、シニア世代を主力ターゲットとするマーケット、もしくはシニア世代の需要を積極的に取り込もうとしている企業などに焦点をあて、その市場動向を分析し、参入の取り組み等を広く調査した。介護・リハビリ、老人ホームなど、従来からの高齢者向けマーケットだけでなく、レジャー、スポーツ、趣味、習い事といった新しいカテゴリーや流通事業者の動向も捉えている。ここ数年は、シニア向けの画期的なサービスや大ヒット商品が新たに登場しておらず、全体的に落ち着きを見せるが、国内での高齢化がさらに進行し、市場は拡大を続けている。
カテゴリー別に2019年の市場をみると、高齢者の自立的な生活をサポートする介護・リハビリ市場、宅配市場、食品・外食市場が拡大している。介護・リハビリ市場は、一時期は市場が停滞したが、2018年以降、介護報酬の引き上げなどにより、再び市場が拡大傾向にある。しかしながら、大手企業との競合激化や人手不足、ノウハウ不足などによる参入企業の撤退や廃業、M&Aなど、企業の淘汰も進んでいる。
宅配市場では市場全体でのシェアは低いものの、「出前館」や「Uber Eats」など、食品宅配代行サービスの台頭、持ち帰り時の消費税を8%とする軽減税率の適用などから、外食チェーン宅配が急速に拡大している。
食品・外食市場は、高齢者食が大きく伸び、中でも、アクティブシニア層の低栄養用途でのエネルギー強化食品、たんぱく質強化食品が伸長している。
また、アクティブシニア層の増加により、旅行市場、娯楽市場のほか、若者からも魅力的に見えるフィットネス、登山、音楽会などのサービスも拡大を続けている。参入企業はいずれも新規ファンである若年層の獲得を視野に入れながらも、シニア層を平日や閑散期に集客を担える重要なターゲットと捉え、離反防止と定着化へ向けた様々な施策に注力している。
その他、スマートフォンの普及と連動する様に、シニア向け携帯電話・スマートフォンが大幅に伸長した。
その一方で、趣味・習い事、ボウリング、卓球など、高齢者向けイメージが強いサービスは前年割れした。ただ、これらの習い事やスポーツに対するシニア層の関心は失われておらず、かつてそれらの趣味やスポーツに参加していたシニア層を呼び戻すことで、市場の回復を目指している。
2020年はコロナ禍による活動自粛や停滞で大きな打撃を受けた市場が多く、市場規模の縮小は避けられないものの、日本国内の高齢化はますます進んでおり、シニア関連マーケット全体で捉えた場合、今後も拡大基調で推移する見通しである。
2.注目トピック
コロナ禍はシニア関連マーケットにも直撃、ニューノーマルへの対応が進む
2020年の新型コロナウイルス感染拡大により、シニア関連市場は大きな打撃を受けた。重症化しやすい高齢者は、他の年代と比較しても活動自粛へのマインドを高めていった。その結果、介護・リハビリ施設では利用者の減少が一気に加速した。この様な環境の変化を受け、各介護・リハビリ施設では、非接触型のサービスを新たに導入している。その1つが、IoTやAI(人工知能)などのデジタル技術を活用した施設向けの遠隔見守りサービスである。パナソニックや日立システムズなどが新サービスを投入した。また、コロナ禍では県をまたぐ移動が自粛され、1人暮らしの高齢者の自宅にも見守りサービスの設置が進められている。
その他にも、3密の回避が求められ、スタッフが高齢者に寄り添う従来型の介護やリハビリを実施することが難しくなった。そこで、介護・リハビリ施設に通えなくなった高齢者に向けて、ロボットやオンライン会議システムを活用したリハビリサービスが提供されている。自宅にいながら、効果的なリハビリテーションを受けてもらうことが狙いである。中には、アシストスーツを活用した歩行訓練をリハビリメニューに取り入れた施設もある。
オンラインを活用したサービスは娯楽関連のサービスでも導入されている。旅行市場では、大手旅行会社から地方のバス会社、エンタメ業界など、様々な事業者がオンラインツアーを開始している。さらに、これまで旅行が難しいとされていた要介護者等を対象としたオンラインツアーも登場した。一例として、VR(Virtual Reality)を用いた高齢者・認知症患者向けのオンライン旅行サービス、聴覚障がい者向けに手話ガイドが案内するオンラインバスツアーなどが挙げられる。いずれも介護施設に居ながら、大型スクリーンで旅行気分を味わえる点で好評である。
また、ゲーム市場では、eスポーツをシニア層の新たな娯楽として普及させる動きが見られる。介護施設内にeスポーツを導入すれば、施設同士での対戦、遠く離れた家族の観戦を通じ、非接触のもとで新たなコミュニケーション機会を創出できるためである。
その他、婚活支援サービス市場でも、オンライン会議システムを利用した婚活相談サービスや紹介サービス等、非対面でのサービスが導入されており、シニア関連市場においても様々なニューノーマルへの対応が進行している。
調査要綱
1.調査期間: 2020年11月~2021年3月 2.調査対象: シニア世代を主力ターゲットとするマーケット、もしくはシニア世代の需要を積極的に取り込もうとしている企業など 3.調査方法: 当社専門研究員による文献調査、ならびに直接面談調査併用 |
本調査では、以下のシニア関連12市場65サービスを対象とし、マーケットの動向を調査した。 介護・リハビリ市場(訪問サービス、通所サービス、短期入所サービス、施設サービス、介護福祉用品、介護ロボット)、住宅市場(有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、シニア向け分譲マンション)、宅配市場( 在宅配食サービス・宅配弁当、生協個配、ネットスーパー宅配、外食チェーン宅配)、各種支援サービス市場(見守りサービス、家事代行サービス、シニア人材派遣・シニア向け起業支援、婚活支援・マッチングサービス、終活支援サービス、金融サービス)、 旅行市場(ツアー、介護旅行・バリアフリー旅行、クルーズツアー、鉄道旅行、バスツアー)、スポーツ市場(フィットネスクラブ、ゴルフ、登山・アウトドア、ボウリング、卓球、ダンス)、娯楽市場(音楽、映画、カラオケ、ゲームセンター、テーマパーク・遊園地、温浴施設)、趣味・習い事市場(カルチャーセンター、大学公開講座、日本文化教室、アート教室、資格取得教室、パソコンスクール、音楽教室)、 食品・外食市場(食品、健康食品・サプリメント、介護食・高齢者食、総菜・弁当、飲食店、コーヒー・カフェ)、衣料品・日用品市場(アパレル、化粧品、大人用紙おむつ、毛髪業(かつら・増毛)、杖、眼鏡・コンタクトレンズ、補聴器)、家電・情報機器市場(生活家電、音響機器、シニア向け携帯電話・スマートフォン)、流通(スーパー、コンビニエンスストア、百貨店、ドラッグストア・薬局、通信販売) |
<市場に含まれる商品・サービス> 同上 |
出典資料について
資料名 | 2021年版 シニア関連市場マーケティング年鑑 |
発刊日 | 2021年04月16日 |
体裁 | A4 636ページ |
定価 | 132,000円 (本体価格 120,000円) |
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