矢野経済研究所
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2028年の医療用医薬品生産高を10兆460億円と予測

~DXは新常態のキーワードとなるか、わが国の製薬企業においてもデジタル人材の積極的な確保が進展する見込~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、医療用医薬品の市場を調査し、2028年の医療用医薬品生産高など市場動向を展望する。

1.調査結果概要

 弊社では厚生労働省「薬事工業生産動態統計」などを基に、今後の医療用医薬品の生産金額(輸入品を含む)を予測する。先進諸国においては、今後も医療費の抑制が行われることになると予測され、特にわが国では急速な少子高齢化の進展にいかに対応するかということ、国家財政が逼迫している状況下にあることを考慮すると、「医療制度改革や薬価制度の見直しが医薬品需要に多大な影響を及ぼすことを想定」せざるを得ない。このようなことから、2020年の医療用医薬品の生産金額は11兆790億円、2024年には10兆4,070億円、2028年には10兆460億円になると予測する。

一方、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の需要拡大や、高額医薬品に対する市場拡大再算定の制度導入、薬価の毎年改定が実施されることになり、過去の延長線で予測を行うことは困難になってきている。さらには、ここ10年程度の生産金額推移の傾向を薬効別にみると、抗がん剤や糖尿病治療薬など高齢化社会において多くの患者が必要としているものが堅調に売上を伸ばし、循環器官用薬も厳しい状況にあるが患者数が多く、一定の生産金額を維持することができている。「企業努力によって医療制度改革や薬価制度の見直しを上回る医薬品需要拡大が見込まれることを想定」出来れば、また違った見通しが見えてくる。

2.注目トピック

DXは新常態のキーワードとなるか

 製薬企業においても2020年4月に第一三共がDX推進本部を新設した。名称は異なるものの、早くから同様の取り組みを行っていたのはアステラス製薬、大塚製薬、塩野義製薬、エーザイ、中外製薬、田辺三菱製薬などである。 世界の製薬業界においてもデジタル技術の活用は、デジタル治療や患者支援アプリの開発によって、より現実のものとなってきている。さらには、すべての製薬企業にとって『患者本位』は、外すことができない大きなテーマである。そのことを考慮するのであればDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みを強化することは当然の動きといえる。

一方、今後、わが国の製薬企業においてもデジタル人材の積極的な確保が進展することが予測される。優れたデジタル人材は、内外において取り合うような状況になっており、若手であっても多額の年収が用意される。そのため日本の大企業では子会社を設立し、これまでの給与体系とは異なる仕組みを作って採用するところが増加している。場合によっては、製薬企業においても他の大企業のような仕組みを構築する必要がある。田辺三菱製薬やAGCのように既存の人材をデータサイエンティストなどに養成しようとするところもあるが、容易なことではない。今後、世界的な規模で有能なデジタル人材確保競争が激化し、営業経費を上回る時代が到来する可能性もある。

調査要綱

1.調査期間: 2020年4月~2021年2月
2.調査対象: 行政当局、製薬企業、医薬品卸、医療機関、調剤薬局、学識経験者、業界紙関係者等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(Web含む)、ならびに文献調査併用
<医療用医薬品市場とは>
本調査における医療用医薬品市場とは、日本国内において生産・輸入される医療用医薬品により構成される市場を指す。
<市場に含まれる商品・サービス>
医療用医薬品

出典資料について

資料名2021年版 製薬市場の10年展望
発刊日2021年03月25日
体裁A4 239ページ
定価165,000円 (本体価格 150,000円)

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