サントリースピリッツ 神田社長
(画像=サントリースピリッツ 神田社長)

――改めて今期の方針は

3つの柱がある。まず、近年需要を開拓し、盛り上がってきたウイスキーの火を消さないこと。厳しい環境だからこそ、ハイボールは日本人のソウルドリンクにしていく。活動を継続して、将来につなげていく。

次に、伸長するRTD(レディ・トゥ・ドリンク=ふたを開けてすぐ飲める飲料)市場で、リーディングカンパニーとして市場を上回る成長により、けん引していく。

3つ目に、新需要創造だ。これまで世の中になかった、新しい商品・飲み方を提案していきたい。「翠」で“第3のソーダ割り”としての「ジンソーダ」という新しい飲み方提案、焼酎も「大隅」「鏡月」で、ソーダ割りの提案を行っていく。

――第1四半期の概況は

サントリースピリッツ全体として、家庭用は1〜3月では前年同期比120%だ。大きく成長出来ている。一方で、2020年12月からのコロナ第2波、1月からの緊急事態宣言で、やはり業務用は厳しい。ただし3月に入ってからは業務用も少し戻ってきた。今後、第4波が懸念され、予断を許さないが、年間計画は達成する決意で、第2四半期に入っている。

――RTDは新商品で市場を更に活性化させている

3月30日発売の「-196℃ まるごと」シリーズ(レモン、グレープフルーツ、みかん)は、一斉時出荷で計画比140%となった。想定以上の手応えで、大いに期待している。「レモン」に加えて、「みかん」の味わいが評価されており、競合品がないことからもリピートがついている。

3月16日には「こだわり酒場のレモンサワー」ブランドから新定番〈追い足しレモン〉を発売した。初動の出荷はほぼ計画通りで、リピート率が高く、前出しも安定している。今後も継続的に販促強化して育成していく。コロナ状況下で、健康面を意識する方が増えており、アルコール5%というところが支持されている。女性の新規率も高い。なお、「こだわり酒場」ブランド計では1〜3月、缶容器は112%、瓶を入れて107%だ。

3月2日発売の「鏡月焼酎ハイ」は、2〜3月で計画には届かなかった。しかし、これは当初から「初動でいきなり動くような性格の商品ではない」と想定はしていた。中味評価は高く、息長く、じっくりと育成していく。

同じく3月2日発売の「のんある晩酌 レモンサワー ノンアルコール」は、2〜3月で計画比130%を超えており、非常に手応えを感じている。前出しも好調で、ノンアルRTD市場全体を大きく伸長させている。今までのノンアルRTDの「甘そう」「ジュースっぽい」といったイメージを大きく覆しており、今後もビッグブランドへ育成していく。夏場の需要にもピッタリと考えている。

――RTD市場は高アルコールが大きな市場を占めるが、今後の市場見通しは

2020年は、当社も含めて7%の度数帯の商品の伸びが顕著で、8%以上はやや鈍化した。コロナ禍で家飲み時間が増えたことで、やや低負荷な度数も楽しまれる方が増えたとみている。一方で、8%以上の度数の市場も堅調に伸長しており、今後も一定のボリュームゾーンを占めることは変わらない。「-196℃ストロングゼロ」も全く落ちていない。様々な度数を楽しむお客様に対応して、ノンアルを含めた幅広い提案を行っていく。

――海外でもハードセルツァーなどローアルコールの流れがある

日本でもコロナ禍で健康を意識することなどから、そのニーズは高まるだろう。ハードセルツァーという呼称はともかく、スッキリ・低アルコールといった健康志向の商品はいつでも、開発準備はしている。日本のRTDは味覚的に優れており、世界的に最先端だ。海外でも日本市場をヒントとしている部分があると思う。

――ウイスキー「プレミアムハーフボトル」の販売施策は

3月23日に発売したばかりだが、出荷は好調で、今回新たに発売した「知多」「碧Ao」のハーフも、どちらもスーパーを中心に配荷店が7,000店規模と想定を上回る取扱いを頂いた。これから「ハーフボトる?」というキャッチコピーを店頭で展開していく。「メーカーズマーク」とあわせて「家飲みでプレミアムウイスキーを楽しむ」という新しい需要を喚起していきたい。若者を中心に、新しいウイスキーユーザーをつくっていきたい。

なお、山崎と白州の蒸溜所では、1月21日からオンラインセミナーを開始した。2月、3月の開催では全て満席、アンケートによるお客様満足度調査では、9割超が満足と答え、非常に手応えを感じている。今後も、リアルな蒸溜所見学が見通せないなか、ウイスキーの魅力を伝えていくべく、取り組みを継続していく。

――「ハイボール缶」の概況は

家飲みハイボールユーザーを増やすべく注力する方針だが、大いに好調だ。1〜3月で「角ハイボール缶」は計画比105%(前年同期比106%)、「トリスハイボール缶」同102%(同101%)、「ジムビームハイボール缶」同123%(同117%)。3ブランドとも計画を達成し、前年を上回る実績となった。

業務用の見通しが不透明ななか、今までの“飲食店で体験して家でハイボールを飲むようになる”という方だけでなく、直接ハイボール缶にエントリーする“缶ダイレクト層”を増やすべく、販促を強化していく。

我々が強調する飲用時品質だが、ハイボール缶は、我々が考える最高のおいしい状態を缶容器にしているので、ここは自信を持っている。この2月から「角」「トリス」「ジムビーム」それぞれでTVCMを放映しており、これが奏功しているとの実感だ。

〈ジャパニーズジン・麦焼酎、それぞれ炭酸割りで新需要創造へ〉
――スピリッツでは「翠」が「流行って」きつつある

ジャパニーズジン「翠」(2020年3月10日発売)は、1〜3月の販売実績が前年同期比573%の5.3万箱。本年は前年比211%の20万箱を目指すが、1〜3月は計画通りの進捗だ。これまで“食事とジンの組合せ”という発想はなかった。先に述べた、サントリーが市場創造をしていくという象徴的な活動だ。

“業務用で接点をつくり、家庭用に返していく”という基本スタンスは、業務用の回復は不透明な状況とはいえ、変えない。とはいえ、これまでの業務用向けのTVCMに加えて、2月には家庭での飲用シーンを描いたTVCMも入れた。これにより、販売ピッチがまた一つステージが上がった。今後は、需要期の夏場に「翠ジンソーダ」提案を、業家連動で実施し、年間販売計画を達成していく。

ジンに続いて、本格焼酎でも「ソーダ割り」の市場を開拓していく。4月6日に、炭酸割り専用焼酎「香る大隅〈麦とジャスミン〉」を発売した。タレントのマツコ・デラックスさんを起用して、近畿2府4県限定で新TVCMを集中投入する。近畿から焼酎に新しい風を吹かしたい。理由は、近畿は麦焼酎の一大消費地であることと業務用専用商品の「大隅〈麦〉」も圧倒的に近畿のシェアが高いことによる。大阪で発表会を開いたが、大いに盛り上がった。

――2月に日本洋酒酒造組合の新理事長に就任した

4月1日に「ジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」を施行するという画期的なタイミングで就任させて頂いた。先輩諸氏が長年、苦労して築き上げてきたジャパニーズウイスキーの定義を決めたということで感慨深い。世界に発信できる高い自主基準になったと自負している。冒頭述べたように、日本のウイスキーに勢いが来ているので、これを更に加速させるために、この基準に則って、ボリュームだけではなく質的に世界に賞賛されるウイスキーを、業界挙げてつくり、発信していきたい。

〈酒類飲料日報2021年4月19日付〉