4月6日、国際通貨基金(IMF)は2021年の世界成長率予測を1月発表の+5.5%から+6%に上方修正した。IMFは「コロナ対策関連の大規模な経済対策効果もあり、経済の崩壊は阻止された」と声明、ワクチン接種の進展によってこれまで押さえられてきた累積需要が顕在化すると予測する。また、米バイデン政権による210兆円規模の追加経済対策も米国内のみならず貿易相手国への波及効果が大きいと評価した。
その1週間前、世界貿易機関(WTO)も2021年の世界貿易について「欧州、北米、中国を中心に貿易量は回復、前年比+8%を見込む」と発表、景気回復に自信を見せた。しかし、新型コロナウイルスの変異種の拡大など感染終息の見通しが立たない状況を踏まえ、「財政出動だけでは危機は終わらない」との懸念も表明、「新興国、途上国を含むワクチンの公平な普及が最良の経済策である」と指摘した。この点はIMFも言及しており、低所得国、新興国の感染対策への支援を先進諸国に強く要請する、としている。
一方、IMFは増大した財政支出の圧縮や増税など財政再建に向けての急激な政策転換による景気後退懸念も表明、各国にソフトランディングを求めた。財政問題については、米イエレン財務長官も別の視点から言及した。イエレン氏は危機対応には大型の投資が不可欠であり、そのためには十分な財源が必要であると指摘したうえで、「法人税率の過度な引き下げ競争は止めるべき、国際的な最低税率の導入を」と呼びかける。
多くの国で感染は未だ進行形である。欧州や日本も再拡大の只中にある。一方、世界経済の回復もまた確かなものになりつつある。世界はパンデミックを押さえ込むために更に大きな資金と強い規制を必要としつつ、一方で出口戦略に向けて歩みを速める。
こうしたちぐはぐさとワクチンをめぐる利権と国力差が、新たな不均衡と分断を生み出す。分断は否が応でも大国の対立構造に組み込まれる。アフターコロナの世界にとっての最大リスクがここにある。
今週の“ひらめき”視点 4.4 – 4.8
代表取締役社長 水越 孝